■歴史のある地域と歴史のない地域
この東京・神田と多摩ニュータウン。どちらが住みやすいんだろう?保育園の役割はどう違ってくるのだろうか?そんなことをよく考えます。
今日、隣の喫茶店アカシヤ(明石家)さんが閉店しました。最後の営業日でした。その店が入っている建物と、その後の山上ビルが、6月から解体されます。明石家さんと40年の付き合いになると言う岡昌裏地ボタン店のご主人が今日「あの店がなくなるのは本当に寂しい」と話されていました。
「まぁ、人生には出会いがあれば別れもあるもの。この地域で子どもの声を聞くなんて、想像もしていなかった。出張所の跡地がまさか保育園になるなんてね。この前は散歩に来た子たちが、ボタンを見て『お金だ!』って言ってたよ。丸くて似てるからだろう。アッハハ」
写真【『散歩の達人』5月号 交通新聞社】より
住みやすさと言うのは、その人が何に価値を置いているかで変わるでしょう。子どもにとって相応しいと思える環境、好きな景観や生活の利便性、ライフスタイルや家族の中の助け合いなど、そこが住みやすいだろうと選んだ方にとっては、その理由はいろいろな要素が絡み合っているはずです。
一方で、代々そこに住んでいる方は、住む場所を選ぶという意識は無いのかもしれません。岡昌ボタン店の店主や、町会の方と話していると、この地域への強い愛着を感じます。
(写真:せいがの森こども園の園庭)
■人とのつながり作りが街づくりだった!
私が22年間勤めた多摩ニュータウンでも、地域への愛着が育っていました。当時引っ越してくる方は、すでにバブルがはじけた後で、DINKS(ダブル・インカム・ノー・キッズ)以降の、そこを終の棲家と考えている方が大半でした。「子どもが生まれたから、両親と3世代で少し広いところに住みたい。周りは自然が豊かな方が子育てにはいいだろう」。そういう方がとても多かった気がします。
たとえば、一緒に自主学童クラブを立ち上げた方とは、「街づくりは人と人が繋がっていくことだ」と、いつも語り合っていました。保育園はそのネットワークづくりの場を提供してきました。その実践がグッドデザイン賞の受賞になっていきました。
■居心地のいい人間関係の中で生きよう
人はどこに住んでいようと、人間関係の中で生きていて、人間関係の中で幸せを感じ、反対に疲れたり傷ついたりもします。家庭も職場も人間関係が最も大きなテーマになるのは、当たり前と言えば当たり前です。その付き合い方がフレキシブルで、自分らしさが発揮できれば、どんなところで生活しても、幸せであるための3条件の一つは満たされることになるでしょう。他の2つはまた別の機会に。
人との距離感、重層的な人付き合い、自分にとっての心地よい仲間。そのような人的ネットワークを、人は無意識に望み作り上げようとします。
そう考えると、家族や地域や学校で、人とは付き合わないと言う関係も含めて、その人らしい人間関係が構築できればいいのでしょう。乳幼児のころから、これからのAI時代にふさわしい人間関係をデザインしていく必要があるのだと思います。