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2019年 6月

園での栽培/収穫第一号はきゅうり

2019/06/22

(収穫したきゅうりを、1階の先生たちにも見せに来てくれた、にこにこ組の子どもたち)

自然とのふれあいを少しでも増やそうと、保育園ではベランダで野菜や果物を育てていますが、その収穫が昨日21日初めてありました。にこにこ組のベランダで育てていたきゅうりが、園収穫の一番乗りでした。(にこにこ組のクラスブログをご覧ください。IDとパスワードは、園だより4月号をご覧ください)

梅ジュース(シロップ)作り

2019/06/11

園生活にはいろいろな活動があるなかで、子どもクッキングは、いろんな経験がギュッと盛り込まれていて面白い。昨日10日は朝9時30分から10時まで「梅ジュース作り」を楽しみました。

エプロン、三角巾、マスクの準備ありがとうございました。
テーブルにラップを敷き、手を洗ってマスクをつけ、ポリエチレンの子ども用手袋をつけて準備完了。衛生面に気をつけて、食べ物を扱う時は「きれいに」と言うことを徹底します。
まず、青い梅の蔕(ヘタ)を、竹串でとります。尖った先端は、使い方を誤ると手を刺して怪我をしかねないのですが、この使い方なら、その心配はあまり、いりません。また、子どもたちの関係も気持ちも安定しています。このくらい人間関係も成長してくると安心です。子どもたちは上手に「ほじくって」、ポロリと取っていきます。刺すという動きではないから力はいりません。だから誤って手を刺すこともありません。
私は「竹串のどこを、どう持つだろう?」「 鉛筆を筆握り(人差し指に中指も添える)のようにすると、使いやすいと気づくだろうか?」などと思って、その様子を見ていました。
それと近い持ち方の子もいます。鉛筆のように持った方が、竹串の先をうまく操作できるということに気づいているようです。また串を鉄棒の順手のように握っている子もいますが、それでもうまく加減して動かしています。なかには、添えている手から梅がこぼれ落ちてしまう子もいました。
これは、手指の巧緻性や、手首の柔らかさが求められる活動と言えます。普段から、色鉛筆で塗り絵をしたり、クレヨンでぐるぐると手首を回してを描いたり、綱やロープにぶら下がったり、砂や水をコップにいれたりこぼしたり、そんな遊びをいっぱいやっているかどうかと、きっと関係しています。
 
蔕が取れた青梅は、氷砂糖と一緒にビンの中に収まれば、終わりです。ここでもまた、ちょっとした人と人とが支え合って生活する、という場面が出てきます。「僕もやりたい」「わたしもやりたい」の気持ちをコントロールしながら、順番を待ち、梅と氷を交互に入れていきます。
この梅と氷砂糖を「まばらに」混ぜるということは、小学校後学年になると「一様(いちよう)に」混ぜると言う言葉が出てくるのですが、このような感覚を体験しておくことが、算数や理科の学習を支えていくことにつながっています。
古川先生が「夏には梅シロップになると思います。冷やして飲むと美味しいよ。楽しみに待っていようね」というと、子どもたちは「早くできないかなぁ」。
最後は、氷砂糖の小さいかけらを、一粒ずつ舐めて「あま〜い!」と、笑顔で終わりました。子どもたちは、砂糖と梅が混ざって、どんな味を想像しているのでしょうか?簡単なので、お家でも、ぜひやってみてください。小さいボトルで、できますよ。

当園の食育の全体像(1)

2019/06/09

6月9日

■好き嫌いは味覚の発達でとらえる
「子どもの食べ物の好き嫌いをなくすたには、子どもの味覚の発達の筋道を理解すると、その秘訣がわかりますよ」。
入園先を探しているご夫婦に昨日土曜日、いろんな保育の話をしました。中でも昨日は食事や運動について、1時間半ぐらい時間をかけて、ゆっくりと説明しました。昨年11月18日の保育園説明会で私の話を聞いて、興味を持たれたそうです。その時はまだ生まれたばかり、今はもう7ヶ月です。昨日の話をもとに「食」について、改めて当園の考えをお伝えしておきます。
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昨日の入園案内では、1階のちっちの部屋で母乳の栄養の意味、離乳の時期と離乳食のあり方、幼児食の料理方法などを説明しましたが、2階のダイニングでは食べ物の好き嫌いがどうしたら少なくなるかについて要点だけを話ました。以下は、当園の食育の全体像の概要です。
■胎児のときから「味わっている」
もともと人の味覚と言うのは、栄養になるものをおいしいと思うようにできています。旨味や甘味は栄養になることを体が知っていて、赤ちゃんの頃から、もっと言うと、生まれる前の胎内にいるときから、味覚器官が味を判断しています。
生まれてからは、もっぱらお母さんのおっぱいを飲んで育っていきますが、その味はさっぱりとした甘みのある薄味です。赤ちゃんにとってはおいしい味です。水分だけで栄養や抗体をえるために、程よい糖分濃度になっています。
■生まれながらに好きな味
甘いものは糖分ですが、エネルギー源としての栄養があるので、子どもはこれが好きです。これは人間に限りません、昆虫も甘いものが好きなので、花の蜜は甘く、カブトムシやクワガタが好きな樹液も甘いのです。動物も甘い糖分は好きです。ゴリラやオランウータン、チンパンジーなどの霊長類も好きです。赤ちゃんも同じです。甘いものは栄養になるから好きなのです。
(UMAMIの発見者の池田菊苗)
それから子どもも大人もおいしいと思うものは、旨味です。アミノ酸の1つであるグルタミン酸を旨味の元だと発見したのは日本の池田菊苗さんです。こんぶや鰹節のアミノ酸は旨味のもとで、それを合わせると特に美味しく感じます。アミノ酸はタンパク質(ペプチドやプロテイン)の素材です。私は大学で生物化学が専攻でしたので、アミノ酸20種類の化学記号がわかります。アミノ酸の配列を決めるのはDNAです。DNAは蛋白質をつくるアミノ酸の配列を決めています。
塩分も体に必須なので、程良い量はおいしさと結びつきます。汗をかいたりして塩分を喪失すると、体はしょっぱいものを欲しくなるものです。
■生まれながらに嫌いな味
(子供は薄味でもお寿司は苦手です)
生まれながらにして好きな味があるのとは反対に、生まれながらにして嫌いな味というものがあります。それは長い生物進化のなかで、食べると体に悪いと覚えているものです。酸っぱい味は腐敗の味、苦い味は毒があるという意味です。これらの味は教えなくても、赤ちゃんは嫌いです。もともと人間には好き嫌いがあるのです。と言うより好き嫌いがなければ私たちは毒を食べてしまうか、腐敗したものを食べてしまって、すでに絶滅しています。動物もそうです。好き嫌いがあったからこそ、こうして私たちがいるのです。このような現象は生物としての味覚の原理なので変えようがありません。
■防衛機構つとしての「この味きらい」
甘味、旨味、酸味、苦味、塩味の5つはそれを感じる味覚器官(味蕾など)が対応しています。このような味を感じる味覚器官は、舌や口内、食道や胃にも分布しています。身体がそうできているのです。無理して飲み込んでも、栄養にならないこともあります。身体がおいしいと受け付けていることが大事なのです。反対に味覚がおいしいと思って食べても、体の防衛機構が毒素を感知すれば、嘔吐や下痢という形で体外に出そうとします。この防衛機構の第一ゲートが「不味さ」(まずさ)です。美味しくないと感じる感覚は大切な機能です。何でも食べてしまえることが、無条件に良いとは限りません。
子どもがすっぱいトマトが苦手なのは好ましいことです。苦いピーマンが嫌いなのも好ましいことなのです。匂いの強いニンジンがいやなのは正常な反応てます。まず親がこの認識を持つことが大事です。子どもの頃から、生のニンジンやピーマンやナスやトマトを、おいしい、おいしいと言って食べることは、まず、ありません。あるとしたら、後天的に好きになっていったプロセスが必ずあるはずです。では、その話をしましょう。
■料理することの意味
(トマトもミートソースなら大好き)
火を使う料理の意味は、ここにあります。食べ物を柔らかくするだけではなく、熱を上手に加えることで、素材の甘みを引き出し、美味しくしているのです。野菜を煮込むと旨くなります。アミノ酸などが溶け出すからです。生では酸っぱいトマトも、ケチャップになれば子どもも好みます。甘みやうまみを引き出す料理方法を重視してください。子どものための料理とは、このような役割を意識したほうがいいのです。例えば、加熱しすぎた卵は塩や醤油が欲しくなりますが、ポーチドエッグにすれば、卵が持つミネラルなどの素材の味が引き出されます。
(事務室カウンターの展示食)
実はそのような調理方法の結晶が、本来の和食です。素材の持つ甘みと旨みを生かした熱の加え方、熟成のさせ方、発酵のさせ方があります。小さく刻んで味がしないように混ぜて食べさせるということをやっても、その素材を生かした料理とは言えないのです。そこには「味覚の経験」がないので、学習がなく味覚は発達しようがありません。
■美味しいと思うから意欲も育つ
(「見て!ピカピカ!」が「美味しかった。ごちそう様」の表現に育っていきます。それが「心のこもった挨拶」になっていくのです)
食べたものがおいしい。その心情体験があってはじめて、また食べたい、もっと食べたいと言う意欲が湧き出てきます。最初の「美味しいなぁ」という、心情体験が大切です。食への意欲が育つのは、先に「美味しい」と感じることが大事なことなんです。これが偏食予防のセオリーです。気持ちも乗らず、無理をして食べても食への意欲は育ちません。訓練や鍛錬で、本当の意欲は芽生えません。訓練や鍛錬が効果を上げるのは、本人が望んで始めるときに限ります。いやいややらせても嫌いになるだけです。よく間違うのは、成功体験が好きにさせるという幻想です。人はもともと好きだから努力できるのです。達成感や成功体験で好きになったように見えるのは、もともとそれが好きな場合に限ります。これはスポーツ科学の常識でもあります。意欲の科学は、あらゆる分野に普遍的な見方をもたらしました。好奇心や探究心が育つのも、本人が意欲的であることに限ります。偏食予防の科学は、意欲的な食のあり方を見つけているのです。
■自分に合った適量を食べる人権
私は毎日、子どもたちと一緒に食べているので、どの子がどんなものが苦手かが大体わかるようになりました。生まれてら3年〜5年の間の食の経験の積み重ねが、今の子どもたちの身体を作っています。それと同時に、先天的に好き嫌いがあることとは別に、後天的に好き嫌いを作ってしまっている要素があります。無事に食べさせた子どもほど、嫌いなものが増えてしまいます。味覚に関する脳のシナプスも、2歳位までに出来上がります。その頃までに「おいしい」と感じて食べたものが、「おふくろの味」「生まれ故郷の味」として、何をおいしいと感じるかという個人差をつくりあげます。これは、文化的な個人差です。後天的な「文化的学習」です。カタツムリの高級料理、カエルの姿焼き、イナゴの佃煮、納豆などの味について、考えてみてください。味覚は文化的なものでもあります。
■食べる量には個人差がある
これまでの話が大前提になって、セミ・バイキングと言う配膳の仕組みが有効になります。私たちの法人は、バイキング方式には反対です。自分が好きなものだけ好きな量を食べると言う事は推奨していません。「おいしいと思うから食べてみて」と言う料理を出すのが大前提ですが、それをどの程度食べるかを決定することは、本人の人権だと考えています。自分で自分が食べる量を決める人権。自分がどのくらい食べきれるかを自覚できる人権。日本は「子どもの人権に関する条約」の批准国です。子どもの意見表明権を守ることに批准している民主主義国家です。
■都知事賞をもらった配膳方式
このセミ・バイキングを東京都の管理栄養士さんが視察に来て「このセミ・バイキングは、偏食予防のために効果的な方法なので、東京都に推薦させて欲しい」と言われました。意欲的な楽しい食事が、偏食を予防するのに役立つと、おっしゃるのです。そしてこの方法が、集団給食の都知事賞を受賞しました。 好きな量を食べると、苦手なものは食べなくなるのではないか、好きなものだけを食べて偏食を生むのではないか。このような疑問に、根拠ある形で答えるために、大学の栄養学研究室に調査を依頼し栄養摂取状況を調べてもらいました。そうすると、日々の凹凸はあっても1週間の栄養摂取の平均を見ると期待されている栄養摂取量の水準を悠々と超えていたのです。しかも、子どもたちの食に向かう姿勢は積極的で、給食を楽しみにしている子どもたちが多かったのです。
■子どもクッキング
食への意欲は、野菜の栽培や世話によっても育まれます。「ここは子ども用キッチンです。ここでは、子どもたちがお米を研いだりジャムを作ったり、後で火を加える簡単な料理をする場所です」と、見学者には説明しています。
ちょうど明日10日月曜日に、子どもクッキングをします。梅シロップを作ります。栽培して、収穫して、料理して、分け合って食べる。動物は決してやらない、ホモ・サピエンスだけが行う文化です。以上のように、子どもたちの食を営む力を育んでいきたいと思います。(続く)
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