園だより7月号 巻頭言より
◆保育で大事にしていること
新しく入園した方もいるので、当園の保育方針の話を少ししましょう。園が大事にしている保育は、大人が子どもに言葉で言ってさせる保育の真反対です。自分でやろうとしてやれるようになる自立を目指します。やれない時は人に頼んだり、どうしたらやりたいことができるかを聞いてくるような子どもになって欲しいと思っています。
◆元園長「自律できる子を育てたかった」
昔、大阪の公立の元保育園長から次のような話を聞いたことがあります。「トイレにいく時間だよ、手を洗いなさい、静かにしなさいと、言って育てた子どもたちが小学校や学童に行ったらお漏らしをしたり、手洗いを忘れたり、人の話を聞けない子になってしまいました。自分で行きたくなったらトイレに行く、気持ち悪いから手を洗う(手を洗うとさっぱりして気持ちいいからやる)、うるさいと大切なことが聞こえないから静かに聞く、そうした自律(反対は他律)を育ててあげないと、困るのは本人なのです」という話です。全くその通りです。目に見える行動面ばかりではなく、子どもの精神面にも同じことが言えます。子どもが自分の考えを持ち、それを人に伝え、決定する力を育むことは、子どもの人権を守ることと等しいと私は考えています。
◆自分で感じて考える体験を
大人が望む行動ばかりを口やかましく言って聞かせることを繰り返していたら、子どもは自分でやるという体験ができなくなってしまいます。自分が自分で心に決めること。やりたいことを自力でやってみて、その結果を正面から見つめ、責任感を感じること。自分が原因で物事が変わる経験をすること。こうしたことには、うまくいかないことや失敗がつきものです。しかし自分で決めてやったことは、人のせいにできないので、自分を知る経験になっていくのです。「だから言ったでしょ」という思考は禁物です。実際に自分で経験して考えることが大事なのですから。この経験が希薄な子どもたちが多くなっているように感じます。可愛さゆえの大人の過干渉です。子どもに感じて、考え、迷い、揺れ動く幅を大きくとってあげてください。そのレンジが大きければ大きいほど、大きな成長を見せてくれます。
◆自分のことは自分で決める
この自由度が少ないと、子どもは自分で決めたいことを求めて、いうことを聞かない、返事をしない、大人が困ることをする、という反応パターンに嵌っていきます。また、それを否定されるともっとやります。これでは悪循環です。子どもが「自分でこうしてみた、そしたらこうなった、だから次はこうしてみたい」という好循環を作り出すには、大人は子どもが自分の力で自ら歩き始めるように、子どもを信じてじっと待つ、という子育ての構えを持つ必要があります。
◆子どもができることを信じましょう
子どもが自分で考えて、自分で行動に移していく過程をこそ、一緒に育てましょう。言って聞かせてできるようになるのは「他律」です。そうではなく、自分のことは自分で判断して適切な行動が選択できる、自律した姿を目指しましょう。そのための第一歩は子どもを丸ごと信じることから始まります。良いこと悪いことの決まりは伝えながらも、自分で決めて判断して行動に移せるように支えていきましょう。