最近、乳児期の「コミュニケーション」の大切さについて話を聞く機会がありました。日々の子どもたちとのやりとりを思い返しながら、とても、心に響く内容でした。
「コミュニケーション」は、”ひとりひとりの違っている部分をわかり合うためのもの。自分の意見と相手の意見を尊重して調整していく力” 。
この力を身につけていくために、赤ちゃんのころからの心の通った「対話」が重要なものだというお話でした。
赤ちゃんはまだ言葉がありません。でも、色々な形で大人に訴えかけています。それに大人が応え、お互いの意志や思いをやりとりしていきます。(いまのちっちさんはもう、色々なおしゃべりをするようになってきていますが…!)
そうしたやりとりをくり返す中で、赤ちゃんは(自分の思いを尊重してくれる人がいるんだな)という感覚を持ち、さらには(相手にも相手の思いがあるんだな)ということを知っていきます。
乳児期は、この「対話」を通して、コミュニケーション力の土台を作っていく時期ということになります。
(↑こんな時期もありました。お友だちとも色々なやりとりがありましたね。)
さて、最近のちっちさんは、自分の思いがはっきり出てきて、思い通りにいかない〜!という姿が増えてきました。
(↑石を取り合って怒っているふたり。。)
これからさらに、お友だちと思いが行き違って悲しくなったり、思うようにならずイライラしたり、気持ちがぶつかり合って悔しい思いをしたりする場面が増えてくると思います。ひとりひとり違う人間だから、当たり前のことです。
そんなトラブルをどう乗り越えていくか、がコミュニケーション力の育ちのチャンスになります。
例えば、おもちゃの取り合いの場面で、
「これは◯◯ちゃんが先使っていたでしょ!返してあげなさい」と大人が決着をつけてしまうのか、それとも、「取られちゃったのね…返してって聞いてみようか」とその子の気持ちに寄り添いつつ、「取られたお友だちが悲しんでるよー返してほしいんだよー」と取ってしまった子に一緒に語りかけてみるのか。
もちろん、大人の感覚的には最初に使っていた子の手に玩具が戻ることが”正しい結果”だと思いますし、そういう方向へ働きかけると思います。
でも、子どもたちの経験や育ちを考えるとき、子どもたちの心が動くのは、どんな関わりでしょうか。
こどもたちに望むものは、トラブルをすばやく解決する力ではありません。思いがぶつかったとき、どうやって分かり合っていこうか、と相手と共に解決へ向かう力です。「こうでしょ!」と大人が押しつけて終わらせてしまうと、子どもたちは考えなくなってしまいます。
保育で大切にしたいところは、そのときの「結果」よりも、その「プロセス」となる、心の動きや経験です。
ぐんぐんさんのトラブルなどを見ていると、取り合いになった結果、玩具が手元に戻らないこともあります。返してもらえない悲しみやくやしさを、泣きながら大人に受けとめてもらっていることもあります。でも、ふと「まぁいっか」と次に気持ちを切り替えたり、そのうちに取ってしまった子がすっと返しにきてくれたりすることもあるのです。
そのときに「ずっと待ってたんだよね。返してもらえてよかったねぇ」と共感したり、取ってしまった子に「返してあげたのね。〇〇ちゃん嬉しそうだね」と伝えたりすることもあります。表情でやりとりしたり、あえて大人が関わらないというときもあります。大切なのは、最後までしっかりそれぞれの子の気持ちに寄り添って見守る ということだと思います。
そうやって大人の力も借りながら、友だちと気持ちのこもったやりとりを何度も何度もくり返し、相手とのコミュニケーションで乗り越えていく術を学んでいくことができます。
「こうなのよ!」「〇〇でしょ!」…大人はつい、「こうあるべき」と思うことを目の前の子どもの姿に求めてしまいそうになりますが、ちょっと立ち止まって、それぞれの子どもの気持ちに目を向けてみる。一緒に感じて考えてみる。そのプロセスにこそ、コミュニケーション力の育ちがあります。
手が出てしまうような危ないシーンはすぐに止めますが、子どもの気持ち自体を否定することはせず、そっと受け止め、「こっちだよ」と、みちしるべになってあげることが大切なのではないかと思っています。
大人の(こうなってほしいな…)と思い描く姿がいますぐにできなくても、いまはその練習の期間だと思って、ゆっくりゆっくり大きな気持ちと長い目で見守ってあげたいですね。
土台作りの時期は、結果がすぐ目に見えるものでもありません。だから、不安になって、目の前の子どもに、大人が思い描く姿や結果を、無意識にも求めてしまいたくなってしまうことがあります。
それでも、その目に見えない時期を、根気強く、そして丁寧に過ごした分、やがて芽が出て、大きく花を咲かせてくれるのだと思います。
大人だって子どもだって、その日そのときの気分やコンディションはそれぞれなので、そうやって根気強く関わっていくのは、なかなか難しいなぁ…と思うこともあります。しかし、そういうときこそ、子どもとの”コミュニケーション”が必要なのかもしれませんね。私たちが、身をもって、対話しようとする姿を示していくことが、大事なのだなと感じています。
「コミュニケーションの練習」がたっぷりできた分、大きくなったとき、色々なことを自分たちの力で乗り越えていける力がつくのだと信じています。