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見守る保育(保育アーカイブ)

2歳と3歳の同型的行動に見られる親密さ

2024/05/29

こんなブログが29日の1歳児クラスに載りました。私が今関心のある「同型的行動」の事例として、紹介したくなりました。内容は1歳児クラスでこの5月に満2歳になったHくんと、3歳児クラスのAくん(3歳5か月)との仲良しぶりを描いたエピソードで、28日(火)の夕方のことです。す。クラスが違っても自由な交流が発生しやすい生活にしてあるので、こんな光景が生まれたようです。

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きのうの夕方、わいわい組のAくんが、ぐんぐんのお部屋に遊びにきてくれました。

Aくんとニコッと笑い合うと、Hくん、なんだかそこから心を掴まれたようす…。気が付けば、Aくんと一緒に遊び始めていました。笑顔のパワーは、すごいものです。

真似っこして、ごろ〜ん。ふたりで顔を見合わせてケラケラ笑っています

↑Aくんが、ジャンプして、壁に貼ってあった食べ物のイラストをゲットする遊びを始めました。Hくんも、一緒にジャンプ!でも、届かないので、Aくんが取ってくれます。どれが欲しいのか、ちゃんと聞き取りながら、取って渡してくれる、Aくんです。

バナナとオレンジも取れたよ〜

 

たくさんの食べものが取れたから、お皿にのせて、運びたいようです。

Aくんが、Hくんに「Hくん、これとこれ、持ってきて〜」とお願いしています。Hくんが、どれのことか分からなかった様子で迷っていると、戻ってきて、一つひとつ丁寧に教えてくれるAくん。

(これのことか!)と分かったHくん、一緒にお皿を運びます

Rちゃん や Lちゃんにもおすそ分け

「いただきますをします、用意はいいですか〜」とAくんの掛け声で、みんなでごはんの時間のようです。

それから、こんな遊びも・・・

Aくんが持っている太鼓に届くかな?とジャンプしてタッチする遊びのようです。

「こんどはHくん」と役割交代です。Hくんも、Aくんの真似っこをして、太鼓を掲げます。

Aくん「もっと高くして〜」

Hくん (・・・こうかなぁ…)

と、一生懸命な姿がかわいかったです^^

ぐんぐん(1歳児)の子どもたちの中に、ふわりと溶け込んで一緒に過ごしてくれたAくん。その自然な空気感が、ぐんぐんさんにとっても、心地よかったみたいです。

 

今朝、ふたたびAくんがお部屋に遊びにきてくれました。すっかりAくんに懐いていたHくん、さっそくAくんの元へ行って、一瞬に遊んでいました。

↑きのうの続きで、食べもののイラストをゲット。そして、キッチン台でお料理していました。

思えば、普段、わらす組(3~5歳児)のお兄さんお姉さんと関わる時間がまだ少なかったぐんぐんの子どもたちでした。
ときどき、「ダメ〜!」と言い合って涙したりぶつかったりもあったけれど(笑)、それでも、こんなふうにやさしく接してもらったり一緒に楽しい時間を過ごして、年上のお兄さんに、憧れの眼差しを向けながら信頼を寄せていく姿が印象的でした。

Aくんもまた、(わらす組内ではいちばん年少のクラスであるけれど、)ぐんぐんの子どもたちと過ごしているときは 頼れるお兄さんらしい姿を見せてくれて、成長を感じました。
こうして、いつもクラスの子どもだけで過ごしているとなかなか見られない姿を、お互いに引き出し合っていく関係性が、なんとも微笑ましくて、そんな出会いをたくさん作っていけたら良いなあと、改めて思ったのでした。

保育の中の「同じことをする」意味を考え始めました

2024/05/27

大谷選手がヒットなどで塁に出ると、片足を上げて万歳の両手を傾ける、あの仕草、ご存知ですよね。選手とベンチと同じポーズを取ります。やったね!イェーイ!の喜びが倍増します。昔はギブミー・ファイブでしたが、今は塁に帰ってくるとグータッチで結束を確認しているかのようです。同じポーズを共有するのはメンバーシップを高めるのでしょうね。制服も同じ発想でしょうか?仲間意識を強化するのでしょうね。

大谷選手が大好きな4歳のYくんは、いつも野球帽をかぶっています。好きな人と同じものを身につけたがるのは子どもだけではありません。お気に入りのフィギュアを下げている人もよく見かけます。昨日の日曜日の朝の番組で「推しビジネス」特集をやっていましたが、アイドルやキャラクターのアクスタ(アクリル・スタンド)を何枚もバックに入れて持ち歩いている人も多いそうです。プラスタは全身なので、まるで生活を常に共に一緒にしている感覚だそうです。

親しさは、そばにいて欲しいという気持ちを強めますが、同じことをすること自体が親密さを表すというのは、挨拶を見てもわかります。お辞儀も握手もハグも同時に同じことをしているのですね。当園の朝の挨拶の歌は「握手をしよう、おはよう」です。そういえば、どこかの大統領が握手を拒んだことがありました。

子どもの同士の仲間関係でも、ごっこ遊びや物のやり取りや、円陣を組んで遊ぶわらべうたや、鬼ごっこやかくれんぼでも、おんなじ行動を示す瞬間がたくさんあります。身体的に触れ合ったりすることだけではなく、同じものを見たり、同じ声や所作を見せてくれることもあります。子どもの置かれている状況と身体の関係から保育を見つめ直してみるといことに、今とても興味があります。子どもたちは遊びの中でバリエーション豊かな同型的行動を見せてくれているようです。

先生がある状況で判断していること

2024/05/25

今日はお迎えの時に、屋上で育った思想をお店屋さんのようにお迎えに来ている保護者に販売していました。昨日のダンゴムシの話もそうですか、次のようなことをお伝えしたくなりました。保育者の専門性のようなことです。

「あの辺のことがどこから来ているのか、見ていきたいんですよね」「〜ちゃんがほんとに〜になって。次にどうするか楽しみなんんですよね」。こんな会話をしながら、子どもたちの様子を語り合うことが毎日のようにあります。

当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私にしてみると、この先生たちが体験していることは、何がどうしてどうなった、式の、ある出来事を取り出しても収まらない、その状況までの経緯やら、親御さんとの長い対話の積み重ねなども含み込んだ中での、実感です。その継続的な流れの中で出て来る、いわば身体的な感覚に近いものを拠り所とした子どもの理解の仕方であって、また見通しを語っています。

保育でやっていることは非常に多岐わたることを想定しており、どのようになっても困らないろうに、こうなったら、こうしようというアイデアをリソースとして用意しておきます。その想定の範囲内に収まるようにあらかじめひろ〜く構えています。目の前の子どものことも周りにいる子どもたちのことも、同時に見ているので、一緒に連携して動いている先生たちがそれぞれ何をどう考えてやっているのかも、お互いにわかり合いながら、連携をとっている感じです。

先生たちの動きはまるで、その担当の幅の中で、子どもの思いつきが、いつ同時多発的に起きてくるかわからないような中から、子どものやりたがっていること、やろうとしていることが出てくると、先生たちが「よーし、来た来た!」とばかりに、そこに向いあうようなことをやっています。お店屋さんごっこから屋上で育った本物のシソ葉の販売屋さんになりました。

きのう紹介した、だんごむしのお家づくりですが、その先生が子どものやりたいことに込められていそうな「願い」を感じ取ったからこそ、その活動に先生の注意向いたのでしょうから、子どもと一緒に動き、子どもと一緒に「何を食べるんだろうね」と共感していくことができたのでしょう。

それまでの経緯の変化の連続している中で、新たに見せてくれる姿を楽しそうに親しみを持って接しています。その中で、冒頭のような会話が先生たちの中で交わされているのです。

雨になった月曜の子どもの姿から思うこと

2024/05/20

週明けに雨、というパターンが続いていますね。今日は午前中は室内で過ごしました。と言っても、運動はしっかりやって体を動かしました。

(晴れてる日はこんな様子)

当園の場合は園庭もないので、室内と園庭を結ぶ縁側のような空間はないのですが、それに似たような雰囲気があるのは北側のベランダでしょうか。3階では、部屋とベランダが繋がって、砂場とアトリエが普段とは違った印象をもたらしていました。

どの階もベランダはちょうど北側なので、これから暑くなる季節、直射日光が当たらずに済むのは都合がよく、風が入ってくると気持ち良い季節です。でも今日は雨なので、それぞれの部屋で、それぞれの体の動かし方を子どもが選んでやっていました。

その様子はアプリの方でご覧いただくとして、最近の子どもの様子で印象的なのは遊びがとても面白そうだということです。

2階は真ん中のダイニングのところが、多目的に使う場所なのですが、夕方の保護者会や誕生会のような行事もここでやります。今日のように雨の日は、ここが2歳児クラスの運動スペースになります。今日は吊るしたものにジャンプしてタッチするという遊びをやっていました。

遊びの面白さというのは、やっぱり程度の差というか、はまり具合の差のようなものがあって、それは具体的に感じてもらわないとわかりづらいかもしれないのですが、親御さんからすると、早く保育園に行きたい!とか、あれをやりたいとウズウズしているとか、お迎えに行っても「まだ帰りたくない!」と言った姿で感じることがあるかもしれません。

1階の新入園児の赤ちゃんたちも、すっかり環境や先生やお友達に慣れてきたようで、物への探索や気持ちの交流が盛んに起きていますね。家庭にはない環境、特に小さな子ども同士でも気持ちの寄せ合い、通い合いというものが起きていたり、家庭ではできない遊びもいろいろでしょう。

ちょうど今、春の個人面談が始まっていますが、そこでは家庭での様子と園での様子を伝え合いながら、お互いに子どもの全体像を共有していきたいと思っています。うちの先生たちは子どもたちが抱いているいろんな「思い」をできるだけ汲み取りながら、その子の思いを想像しながら「あれをやりたい」「それをこうしたい」「きっとこうすればやれそうだ」と意欲満々な気持ちでいっぱいにしてあげたいと思っています。

今日も早くも8月3日の納涼会の第1回の打ち合わせを昼間にやったのですが、子どもたちがやりたいことをそのまま発展させるというラインを大切にしていました。日々の中に現れるちょっとした姿も受け取りながら、子どもの言葉にならない思いも想像しながら日々を送りたいと思います。

今日も商売繁盛のラーメン屋さん<3協同性>

2024/05/16

「すいすいさん(年長さん)たちが、作ったラーメンも、本格的になってきたんですよ」と先生も目がキラキラ状態がずっと続いています。

午前中は散歩に行ったり屋上で遊んだりしていた子どもたちが、園に戻ってくるとベランダの砂場と隣のアトリエ空間に入り浸りで、わいわいと活気あふれる空気がずっと流れています。

先生に「ずっとやってるねえ」というと、子どもが私に当たり前でしょ!というような勢いで、「もう、ずっとず〜っと、あしたも、ず〜っとやるんだから!」と口を挟んできました。遊びが面白くてゾーンに入っている状態です。そこからうちの法人は従来のコーナーをゾーンという名前に変えた経緯があるのですが、その集中度は子どもが作っているものにも現れていますね。

<3協同性>友達とかかわる中で、お互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的に実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。

ラーメン屋さんとある家族の物語<3協同性>

2024/05/15

東京・岩本町に、新しいラーメン店ができたそうです。行列ができると言うので行ってみました。メニューを渡されて「お勧めはこれです」。「決まったらピンポンをしてください」。ラーメンと餃子と天津丼を食べました。飲み物も勧められたので、ビールにしました。食べ終わったら「50円です」。お金は持ってないんですと言ってみたら、しょうがないですねといわれて、1000円貰いました。そして、そばには幸せな家族が住んでいました。この不思議なラーメン屋さんは、こんなふうにできたそうです。

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砂場ではラーメン屋さんごっこが始まりました!一生懸命ラーメン作りに励む3人(笑)

「醤油ラーメンとごはんです、どうぞ~」と大人にラーメンを作ってくれたYくん!

「いらっしゃいませ~」「ホットケーキください!」やってきたのは、Rちゃん。(ラーメン屋さんだけど、色々注文できるみたいです!笑 )

「ラーメンとビールください~」

「ここのラーメンはやっぱ1ばん美味しい!」と呟きながらラーメンを食べるMちゃん(笑)とてもリアルで面白かったです!

テラスでは家族ごっこ!

お父さん役のMちゃんはピザづくりをしていました!


お母さん役はYちゃん。Hちゃんは赤ちゃん役。泣くあかちゃんのお世話をするRお母さん。

Iちゃんは子ども役。

Yちゃんも赤ちゃん。Rちゃんはお姉さん役で、Yくんはお兄さん役。スタイをつけて甘えるすいすいさんと、お世話をするお姉さん・お兄さん役のらんらんさん(笑)普段とは反対になっていて面白いです。

R兄さんは2人の赤ちゃんが大泣きなので、お世話が大変そうです..(笑)「ああぁ~もう~どうしよう~」と一生懸命お世話をしている姿がたまらなく可愛かったです。その頃、お父さんとお母さんは・・・

!?

出産中だったようです(笑)もう1人、家族が増えました~!

「うまれたよ~!」久しぶりの家族時間..♡

一方ラーメン屋さんは・・・

”看板が必要だ!”と看板づくりをしていました。

「Sちゃんもつくる~!」

2人で、看板づくりに励んでいました(笑)本格的ですね!ちなみに、開店中と閉店の2つの看板が出来上がっていました!

ごっこあそびとお砂場あそび。別々に遊び始めた2つのあそびですが、最終的には合体して、みんなで遊んでいた仲良し9人組でした^^♪

・・・・

今日は、室内と戸外の選択でした。室内を選択したのは9人!砂場とごっこの2つのゾーンをあけ、遊び始めました。砂場ではラーメン屋さんごっこ。ごっこゾーンでは家族あそびが始まったのですが、最終的には9人全員での大家族に!昼食は「9人で外食だ~!」と、机をくっつけ、みんなで外食を楽しんでいました♪ とっても仲良しな大家族にほっこりなひと時でした..♡

(5月14日の3〜5歳の「保育ドキュメンテーション」より)

<3協同性>友達とかかわる中で、お互いの思いや考えなどを共有し、共通の目的に実現に向けて、考えたり、工夫したり、協力したりし、充実感をもってやり遂げるようになる。

 

子どもの姿に自らを映し出す瞬間

2024/05/13

「いえいえ、そんな。それほどのことはありません」。

私たちはよく、感心されたり、参考になります、みたいなことを言われると、かえって恥ずかしくなって、それほどの事はないと謙遜することがあります。相手や状況にもよりますが、持ち上げられると居心地が悪いという感覚、ありますよね。もしかすると日本独特のものなのでしょうか? いいことなら素直にありがとうと、受け止めてしまえばいいのかもしれませんが、謙(へりくだ)るという人との関係のとり方が、お互いを尊重しあっている関係を表しているように思えます。世代の違いをずいぶん感じるようにもなりましたが笑。

自分のやっていることを真似されても、同じように、ちょっと我を振り返るという気持ちになることもありますよね。そういうことなら、ちゃんとしなくちゃ、と大袈裟にいうと「身が引き締まるような思い」といったことです。そういう風に感じることって、どんな相手とどのように出会うことなのでしょうか?

昨日の1歳児クラスのエピソードをご紹介します。

Sくんが絵本を持っていると、Hくんが足を伸ばして”とんとん”と自分の足を叩いて『おいで』と誘っていました。

Sくんもちょこんと座って、絵本を差し出します。 Hくんの気持ちを汲み取って、絵本をわたしてくれました。
山手線をゆびさして手拍子! 『ま〜るいみどりのやまのてせん♪』とまるで歌っているようですね^^
互いに気になる電車を指差して、なにやらお話ししています。
おわると2冊目『がたんごとん』を持ってきました。再び『どうぞ〜』と膝を叩いて誘うHくん。
またちょこんとおじゃまして、最後までページをめくりながら2人で読んでいました^^ 最後のページでは「いただきま〜す」を覚えていたのか『あむあむ…』と食べるまねっこまで。かわいいですね♪
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そして、最後に次のような先生のコメントが書かれていました。
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子どもが絵本を持ってきた時、「読む?おいで〜」と膝を叩いて誘う大人の姿を覚えていたのか、自分でさっと足を伸ばして、上手にSくんを誘っていたはるきくんでした。そんなHくんの誘いを快く受け入れ、”いっしょによもう”と絵本を渡してくれるSくん。お互いを信頼しているのだな〜と感じられる場面で、とても癒されました。 大人との関わりが子どもに伝わって行く様子をみて身が引き締まる思いです。笑
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当園のエピソードは、子どもと大人の関係を大人が描いたものよりも、子ども同士のかかわりを取り上げるものが圧倒的に多いのですが、そこでも大人の影響を感じ、このように受け止めているということがよくわかります。
こう言うと、とても当たり前かもしれませんが、いかに大人がプロセスに織り込まれているのかを意識していくことになります。自分の影響を子どもに気づくこと。子どもが大人の鏡になっていることに気づくこと。
別に一般化したいのではなくて、個々の姿の中にその具体例を見つけて、それを分かち合い味わいたいし、一方で主観的であってもその個人的な意味をとりあえず言葉にしておきたい。そこを足がかりにして、共有して広げたり深めたりしたい。そういう役割がありそうだと思うからです。

多様な動きと体験が生じるような生活へ

2024/05/13

今日は朝から雨。雨でも傘や雨カッパを着て散歩することも可能なのですが、今日は全園児が保育園で過ごします。私はぐるぐると園内を動き回って、遊びをみたり一部参加して子どもと過ごしました。

どの部屋でも運動をよくしていました。いろんな運動遊びが展開しているのですが、例えば幼児では運動ゾーンで野球をやっていました。

バットも手作り、Yくんが好きな巨人軍の応援団のBGMも流れて、本格的な雰囲気です^_^。(写真の手前には、女子の応援団がずらり!だったそうです笑顔)

2階に降りて、今ちょうど、2歳児クラスで午前中の「運動遊び」が終わったところです。組み立て式のソフトブロックをマジックテープで繋いで階段や凸凹道を作り、テーブルにマットを掛けて安全にして、不意の怪我が起きないように周囲も保護します。

すると、K先生のお見本を見せると、すぐにそこに引き寄せられるかのように子どもたちは登って歩き始めます。子どもはあっちからも、こっちからもそこへ登りたがるので、先生が方向づけをします。「こっちから、向こうへ回ろうか」というように。そこに本人たちはそうじゃダメ、という子もおらず、すんなりと集団の動きの流れができるのですが、それは今日が初めてではなくて、過去何度もやってきた経験も影響しているでしょう。

子どもたちはブロックの上を落ちないように歩く、バランスをとって歩く、よじ登る、飛び降りる、両足と両手をつく(時々尻もちもつく)・・・。全体的に見ると、そういう体を動かす流れができていくのですが、全部を満遍なくやっていくというより、よりやりたいところに集中する姿が見られます。それは今日は机から飛び降りるという動きでした。

一度に同じ場所に集中すると危ないので、「人気の遊び」を分散させるためにもの、ちょうどその反対側に蛇腹のトンネルをおくと、今度はそちらにも集まります。しばらくするとバランスが取れていきます。そしてどれもある程度「やり尽くす」と少し飽きてきて、動きがそれぞれバラバラにほぐれていくという感じになっていきます。そこでもそれぞれの子どもの「思いつき」が発生しているようで、マットの上を寝転がったり、蛇腹のトンネルを逆走し出したり、そこで二人だけの鬼ごっこが始まったり。

中には組み立て式のマットをもう一つ長く繋ごうとする子もいたり、蛇腹のトンネルから出てくるときに「ばあ」と出てくることが面白くて、そこを保育者に期待している子もいたり。ジャンプの着地点に四角の枠ができると、そこを目掛けて跳び降りて「立つ」というわかりやすい目標ができてきたりするのです。

確かに子どもはいろんなことをしています。その「いろんなこと」は、こうありたいと本人が察知していることもあれば、本人もよくわかっていないことも多く、遊びの中で楽しい!面白い!ということが、どんどん変化しながら現れては消え、また別の場で生じて、ということが発生しています。

そんな発生の繰り返しの運動遊びが、たくさん起きる生活と、そういうことが起きない生活とどっちがいいか?と考えると、やっぱりいろんな動きを楽しめる方がいい、ということになりますよね。その時に、限られた運動でしかないにしても、その中でさえ、子どもによって生じている、いろんな方向の思いや動きが失われないようにしたいと思います。

大谷翔平の<主体~他人・もの>の関係

2024/05/09

大谷選手が週間MVPに!というニュースを聞いて、保育に関係することで2つのことを思い出しました。一つは自尊感情に関することです。日本の青少年は国際比較調査で他の国にくらべて自己肯定感が低いとよく言われてきのです。それについてNHK白熱教室で有名になったマイケル・サンデル教授が、こんなことを言っているのです。

「よく『日本人は自己肯定感が低い」と指摘する意見がありますが、それは日本人には『自分の成功は自分自身の力ではなく、周りの人々の支えがあったおかげだ』とという認識があるからです。そして、成功者であっても常に謙虚な気持ちを忘れることはありません。こうした考えから、彼の能力が数年で衰えるとは考えられず、ますます活躍できると確信しています」

この中の「彼」とは、大谷翔平のことです。

この説明をきいて、そういう見方をしたことがなかったなあ、なるほど、と思ったのです。確かに高校野球でもプロスポーツの選手でも、監督やスタッフやファンやチームメートへの感謝を口にすることが多いですよね。このことと力の発揮が関係するとしたら、共主体(co-agency)の見方に通じるんじゃないだろうか、と思ったのです。

そしてもう一つ思い出すのは、あるスポーツ番組で大谷選手がインタビューに答えて、なぜそんなにホームランを打てるのかという質問に「バントでボールに当てる感覚でバットを振っている」といったような説明をしていたのです。これはアフォーダンスの感覚を説明していることになっているんじゃないかと思ったのです。「ボールが止まってみえる」とか「サッカーボールぐらい大きく見える」といった話も聞きますが、この知覚と行為の結びつきを説明することばには、このように感じている主観の世界が垣間見える気がします。

 

他者を受け入れていく、いく通りもの姿

2024/05/03

20240503 巻頭言5月号(印刷用)

園だより5月号「巻頭言」より

ある署名な人類学者が、こんな言葉で第1章を書き始めていました。「私たちはどのように生きるべきか?間違いなく、人間はその問いを考え続けてきた。おそらく、その問いを考えることこそが、私たちを人間にする」(ティム・インゴルド『人類学とは何か』)。

この4月1ヶ月の様子をクラスの記録から拾ってみると、先生たちは子ども同士の関わり方の育ちに着目しています。それぞれの保育ドキュメンテーションやクラスブログをぜひお読みください。赤ちゃんから幼児まで、それぞれの発達に相応しく「他者を受け入れている姿」が共通していました。

1歳児のぐんぐん組(5月3日のブログより)では、「ちっちさん(0歳児)という後輩が入ってきて、新しい先生との生活も始まって、はじめはまだ、状況がまだ分からないような様子もありましたが、今では、その後輩たちを”いいこいいこ”となでたり、ミルクをあげるお手伝いをしたり、同じ目線で顔をのぞきこんだり…すこしお兄さんやお姉さんらしい、頼もしい様子が見られるようになりました。」と、心温まる事例がいくつも紹介されています。

2歳児のにこにこ組は、連日の日誌で微笑ましいやりとりの報告が続いていますね。例えば4月30日の振り返り。「いずみこどもプラザからの帰り道、Rくんの「かくれんぼしよう」をきっかけにK先生やS先生と一緒に隠れることを楽しんでいる子ども達。そんな風に楽しいことを積み重ねていく中で、「おはよう」と挨拶のようにぎゅ~っと先生の所へ駆けてきたり、絵本読んでほしいと持ってきたり、少しずつ先生やお友達との距離が近づいてきています。」

3歳以上のわいらんすい組では、5月1日のブログにあるように、3歳の子の「やりたい」を大目に見てあげる4歳児のさりげない気配りや優しさを紹介しています。「このクラスで過ごし始めて1ヶ月がたち、子どもたち自身も互いにそれぞれを理解し始めてきているようで、初めの頃は「それはずるだよ〜」「つまんないよ〜」となる場面もありましたが、それぞれの個性を受け入れ、フォローしあうそんな姿に感心、感動した瞬間でした」。本当にそうですね。

このような子どもたちの姿をたくさん見ていると、私たち大人が見習った方がいいと思うようなことがいろいろありますね。他人と一緒にいることが嬉しいという感情。やりたいことを提案して受け入れてもらえ、一緒に楽しめる体験。自分だけではなくてお友達のできた!やった!を喜んでいる様子。このような心情が生活空間に広がり、子どもも大人もそれを共に心地よく感じる時間が増えるといいですね。

冒頭の本でインゴルドは「世界は戦争、貧富の格差、環境問題など多難を抱え、すでに臨界点に達している」といいます。それでも「私たちは皆で一緒に世界を築いていきたい」と思います。他者とともに学び、それを伝え合いながら。子育てはその長い道のりの第一歩です。

 

 

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