さる9月5日にご逝去された小西行郎先生を偲ぶ会が今日開かれました。小西先生が保育に与えた影響は大きく、赤ちゃんが本来持っている自発性や環境との関係は、いまだに保育や子育てに関わる人がきちんと学ぶ必要がある知見に富んでいると思います。今年の学術集会に参加できなかった小西先生は、メッセージを寄せられました。その音声が今日もご紹介されたのですが、現在の子どもをめぐる環境の悪化について、強い危惧を抱かれておられました。小西先生の意思を受け継いでいこうと、気持ちを新たにいたしました。以下にその最後のメッセージをご紹介します。
<・・・このグループを集めたのが私の一つの役割だったような気がしますけれども、これがおそらく他に類を見ない学会を作ったのではないかと思っています。ですので、日本赤ちゃん学会は、この得意面を強調しつつ伸ばしていっていただきたいという風に考えます。そしてもう一つ重要なものとして考えているのが、基本的は保育、育児、教育の現場とこの研究をどう結ぶかということを理事長になってから考えてきました。おかげさまで様々なところで、赤ちゃん学講座を開かせていただいて、少しずつ赤ちゃん学が広がってきたと思っています。ただ、学会を創設した2001年からこの19年間の間に、できたことはほんのちっぽけなことしかないのかなと思うと同時に、今、あの時期に比べて、子どもたちをめぐる社会の悪化、変化が非常に気になっています。発達しょうがいが増えた理由、あるいはインターネットを含めてですけれども、大人が子どもを悪くしている状況が見られます。私は医者ですから、当然、発達しょうがいとか興味があってやってきましたけれども、この場面は、赤ちゃん学会にとっても生命線ではないのかな、という風に思います。もちろん研究者がしたい研究を自由にするのが学問であるだろうとは思っていますけれども、この時代、子どものこの環境、睡眠もそうですし、栄養もそうですし、インターネットもそうでし、もっと大きな問題は大人が子どもを管理している、という世の中、これは正しいのかどうかというきちんとした論争を外に向かってやっていく時期が来たのかなと、強く強く感じるようになりました。私は赤ちゃん学、あるいは学会の仕事を専らにしてやってきた、とても変わった生活をしてきた人間じゃないかなと思います。それだけ思いの強い学会運営をしてきたのではないかという風に、反省はしています。ですが、この学会をやってよかったのは、研究者だけじゃなくて、保育士さんなり、保健婦さんなり、あるいは赤ちゃん学をつなぐ人たちが、何人もできたことだと思います。すでに赤ちゃん学は社会に認知され、その重要さは、むしろ現場の方に認められているんだと思います。どうか既存の研究者の方に、そこの重要さをお分かりいただければありがたいなという風には思います。・・・>