仕事と子育ての両立という言い方があります。それができる環境を作るのが私の仕事でもあるのですが、福祉先進国と思われているスウェーデンでさえ前世紀の前半は、それが両立できない時代だったことやその時代の社会の空気が、今日みた映画でわかりました。と同時にこうした女性の生き方の延長線に今の福祉国家ができていったのかもしれません。主人公の女性は名著『児童の世紀』を現した晩年のエレン・ケイに10代で会っているそうです。
あえて映画のタイトルは伏せますが、観終わってこんなことを考えました。人は誰かを好きになり、結婚して子どもを授かるかもしれません。その好きになる相手と時代によっては、波乱に満ちた人生を送ることになります。例えば、それは予期せぬ妊娠がわかり、それは隠さなければならない祝福されない状況だったら。さらに相手の夫も信用できなくなり、自分一人で生き始めなければならなくなる。さらに産んだ子どもを遠い里親に預けざるを得なくなり・・。
辛い選択の連続なのですが、人は何かを失い、でも何かを得ます。その選択は一種の賭けなのですが、その「選択の仕方」にその人の価値観や生き方が現れるのかもしれません。しかし人生は選ぼうとして選んだわけでもなかったり、どうしようもなく選ばされることもありますし、また選ぶ猶予が与えられずに突然やってくることもありますね。人生を山道に例えるなら、分かれ道が頻繁に現れて、しかも日が暮れ始めていて早くたどり着かないといけない。時間は待ってくれないのです。
そこで問われる真価って何だろう。それは、この女性が示しているような直感的な真実です。彼女にとっての真実に誠実に生きている力強さが、胸を打ちます。その美しさを伝えてくれる映画でした。内容は辛い物語ですが、でも救われるのは、主人公が世界的に有名な児童作家となり、その後94歳まで幸せに過ごしているのです。ただ若き青春時代にこんな波乱万丈の人生があったとは、ほとんどの人が知らなかったことです。
黒柳徹子の映画評を紹介します。「私の大好きな作者の若い頃の話。こんな経験があの作品を作らせたの?「子どもの本の女王」と呼ばれた陰に、こんなことがあったの?才能って、こんな風に花開くんですね。すごい!!」黒柳徹子がこの物語が好きなのはすごく納得できます。親子でいる風景がたまらなく素敵でした。