新年度にあたり、保育園の仕組みを少し説明しておきたいと思います。最近「ノンコンタクトタイム」という言葉が頻繁に言われるようになってきました。これは保育園の職員が「子どもと接しない時間」のことです。どのように使われている言葉かというと、例えば「保育の質を高めるには、保育園において、子どもと関わらない時間、つまりノンコンタクトタイムを確保して、職員だけで話し合ったり、計画を立てたり、保育の準備をしたり、教材研究をしたりする時間を取る必要がある」というように使います。
そもそも保育園は職員が子どもが常にそばにいる生活の中で、色々なことをこなしています。したがってノンコンタクトタイムを作る出すことは、言うは易しで実はそれを作り出すのは至難の技なのです。研修時間をどうやって作り出すのか、保育日誌や保育計画を作り出す時間さえ、あまりないのです。常にそばには子どもがいます。幼稚園のように、子どもが午後降園してから、翌日の準備をするというような時間もありません。
さらに学校のような長期休業期間もありません。春休み、夏休み、冬休みもありません。カレンダーの赤い日以外は毎日保育をしています。唯一の例外は年末年始休み(12月29日から1月3日まで)だけです。先週は水曜日から新年度が始まったこの1週間でしたが、3月31日と4月1日は繋がっているので、新年度の準備期間というものがありません。そこで3月中に保育をしながら、施設設備や遊具の点検、普段やらない場所の掃除、保育室のレイアウト変更、新しいクラスでの生活に向けた移行保育などを進めてきました。そして4月に入って新入園児が徐々に生活に慣れていくようにしながら、新しい保育態勢づくりを並行して進めています。
そしてご存知の通り、新たに新型コロナウイルスです。千代田せいが保育園は、初めての年度末だったのですが、世界はそれどころではなく「人類は第二次世界大戦後、最大の危機」(国連のグテーレス事務総長)として4月を迎えています。東京都の新規感染者は土曜、日曜と続けて100人を超えました。日本も感染者の増加率は幾何級数的な局面に入りました。すでに明らかに感染爆発しています。前例はすでに中国・武漢、イタリア、フランス、韓国、米国・ニューヨークなどがあるので、厚労省が実効再生産数の予想値を東京と大阪、兵庫に示した3月15日〜25日までに、政府は緊急事態宣言に相当する宣言をするべきでした。
日本政府と専門家会議の戦略は、国立感染症研究所(前身は国立予防衛生研究所)が長らく結核対策でやってきた、感染症法による調査的手法にこだわってきました。調査によってクラスター(集団感染)を見つけて、その周辺だけを検査します。いつまでたっても全体の感染状況がつかめません。現代の公衆衛生学では市中感染率を出して対策を臨機応変に変えます。しかし残念なことにわが国には、グローバル時代の現代的な感染予防対策の専門機関がないに等しいことがわかりました。厚労省・感染研・保健所・感染症指定病院をラインとする組織の発想を超える判断と戦略が、政府からは出てきませんでした。私たちはこのことをしっかりと覚えておきましょう、次回の危機までに作り上げなければならない日本の宿題です。
こうなってしまったら、政府も7日あたりに宣言するでしょうが、国民から催促されながら出す宣言も珍しいですね。何が緊急なのかわかりません。こんなに長い瀬戸際は、際ではなくて広い台地のようです。119番の通報で長電話しているようなものです。国民の注意喚起を一気に高めて短期決戦を挑む効果は、もはやありません。学校休校宣言の方がインパクトがありました。
さて保育園は千代田区とともに、週明けから再度、3密の徹底を図ります。就労支援のための児童福祉施設である保育園は、保育を続けます。保育園の役割は、この緊急事態の中でも子どもたちが安心して過ごせる場所を確保することです。ウイルスを持ち込まないように防ぐことが最重要課題です。ご協力のほど、よろしくお願いします。
保護者会でお伝えしたかったことやアンケートでのお尋ねなどは、プリントなどでお知らせします。