新しいことってなんだろう。これまでにないことを「〜になったのはこれが初めて」というフレーズを何度も書いてきた新聞記者だった私は、保育の中で「〜をしたのは初めて」と言えることは何だろうと考えてしまいます。コロナ対策でリモート保育を行ったのは初めだったし、ズームを使ったマムズサロンを開いたのも初めてでした。でも新しいことに意味があるのではなく、その目的を達成させるためにとった手段が初めてだからといって、それ自体に価値があるとは思えません。大事なのは目的が達成できたか、という方です。それなら、こんな目的が達成できたのは初めてです、と紹介できるようになりたいのですが、そういう意味の「初めて」なら毎日、どの子にも起きていると思います。今日23日に私が接し、会話をかわし、気持ちを通じ合わせた子どもたちは、初めての体験や言葉と出合っていることがわかります。
朝Yちゃんは、上履きを履き終えるまで「ちょっと待って」と、おかあさんが先に上へ行かないようにと自分で頼んでいました。Kちゃんは「にこにこ組」の丸テーブルおもちゃを広げてお母さんに「いってらっしゃい」と微笑んでいました。Jくんは折り紙で折った飛行機の翼をセロテープで止めるかどうか迷っていました。Hくんは私と乗り物の図鑑を広げながら新幹線のことを教えてくれました。Uくんは昼食のスイカの皮をミミズにあげたいけど袋がほしいと頼みにきました。屋上で収穫したナスやピーマンやきゅうりを握った子どもたちは1階の事務室まで見せにきてくれました。その野菜は浅漬けにしておやつの時に食べました。Sさんは野菜には長さや匂いや色や形が違うだけではなく「ふくらみ」も違うということを発見してくれました。
これらの体験は大人にとっては何も新しくないでしょうが、この子たち一人ひとりにとっては「ニュース」なのです。だから「みてみて」と「ちょっときて」と、大騒ぎになったり、知らせたくて仕方がなかったりするのでしょう。SさんとJくんにとっても、言葉を通訳してくれる符さんがいてくれて、明らかに笑顔がいっぱいでした。こんなに楽しそうに園生活を過ごしてくれるのですから、自分の気持ちや思いが言葉で通じていくということの大切さを改めて実感しました。そういえば、これが私の今日一番のニュースです。