君はまた世間を騒がす、厄介者にらなってるよ。もうちょっと、静かにできないのかな?
「別に広げたいわけじゃなくて、ぼくだって、仲良くやっていきたいんだけどなあ」
じゃあ、もう少し人に移すの、やめてくれないか。陽性者が増えて、みんな困ってるんだよ。
「ぼくに、どうしろって言うんだよ。ただの粒々だよ。足もないし、手もない。空も飛べないし、自動車だって、飛行機にだって乗れやしないんだから。2〜3日ほっとかれたら、干からびてしまう、か弱き存在さ。君たちが僕にいろいろ、ちょっかい出すから、良くないんだよ」
なんだよ、そりじゃ、こっちが悪いみたいしゃないか。こんな暑いさなか、マスクなんかされられて、テレビのドラマは再放送ばかりだし、ノンフィクションは災害か大自然ものか料理番組だし、ニュースは明けても暮れても、君のことばっかり。この夏の帰省だって・・
「まぁまぁ、冷静に冷静に。そうやって、ペラペラ喋るのがよくない。ぼくのこともう、結構わかっているでしょ。僕らは細胞の中にいたいんだけど、水分がないと生きていられないから、僕らの仲間は唾液腺に溜まっているんだよ。哺乳類の中で、いや霊長類の中でも、飛び抜けて君たちは、よくしゃべる動物だし、食事をするときも分け合って、喋って食べたりするでしょ、しかもアルコールなんか発明しちゃって、ペラペラ、ガヤガヤ、大声出したり、叫んだりして騒ぐもんだから、僕たちが撒き散らされてしまうんだよ。もう少し、静かにして欲しいと言いたいのは、こっちなんだけどな」
そんなこと言ったって、言葉を獲得したり、食べ物を分けあったり、一緒に協力して子育てしたりするのが人間の人間たる所以なんだから、君にとやかく言われたくないんだがな。
「僕らだって、自分でこうなってしまったんじゃないよ。自分をコピーするときに、どうしてもちょっと差異が出てしまうんだ。それは君たちだって一緒さ。同じ地球の生命体から枝分かれしてきた兄弟だからな」
冗談じゃないよ、君と兄弟だなんて思いたくないな。
「でもしょうがない。事実はそうなんだよ。君たちも僕たちも、45億年前に同じ先祖にまでつながっているだ。まあ、君たちは僕たちの子孫だけどね」
まいったね、兄弟じゃなくて、今度は上から目線かい。でも言葉と共食は失いたいくないね。君を飛沫に紛れ込ませない方法を考えてみるよ。
「マスクもいいけど、テレパシーでも発達させたらどうだい。発話をしない意思疎通技術は、結構進んでいるはずだよ、君たちはイノベーションが好きなんだろ」
・・・・コロナくんとの付き合い方は、いろいろ考えてみる必要があるかもね。