今日はちっち組の保護者会が夕方あったのですが、それが始まる直前に、にこにこ組のSくんが、階段から降りてきた方を指差して「むちた!」といいます。というより、そのように聞こえました。「?」なんだって?と思ったら、そばにいた担任のY先生が「虫いたよね。蜘蛛がいたね」と言って、応えてくれたので「ああ、そういう意味か」と了解しました。そして、虫が好きなSくんらしい!と納得もしたのでした。にこにこ組の今日のブログ「柳森神社」もご覧ください。
このように「むちた!」という言葉になる前は、きっと「あ!」と指差すだけだったに違いありません。それが「虫いた」という言葉になっていくのは、そうなるまでのどこかに、決定的な発達があったと考えることができます。それはSくんの9ヶ月頃にまで遡ることになります。
ちょうどその頃、子どもは日本語の「ムシガイタ」という音を「虫が居た」という意味で理解できるようになっていく「仕組み」が完成するからです。それは象徴機能の成立です。言葉は表象の1つですが、実物ではなく、その代わりの象徴(シンボル)を用いて意思疎通をすることができるようになるのです。それが言葉の獲得です。
現実の「虫」という実物に対して、日本語の「ムシ」という話し言葉としての「音」が、子どもの頭の中に想起されるイメージ(表象)とつながることによって、物のシンボル(象徴)としての言葉がイメージと一致するわけです。虫という言葉を聞くと、現実の虫を思い浮かべることができるのは、この心理的な仕組みがあるからです。こうして、子どもたちは言葉を獲得することができ、同時に、模倣遊び(見立て遊び、ごっこ遊び、劇遊びなど)ができるように、言葉は発達していきます。
今日は保護者会では、「言葉の発達に大切な『話しかけ』」の資料をお配りしました。どんなときに話しかけるといいのかというと、子どもが注意を向けているときに、その事柄について、言葉にするといいのです。子どもが注意を向けているものに、大人も注意を向けている状態を「共同注意」と言いますが、そのように同じものに注意を向け合っているときに、話しかけることがいいのです。
子どもが注意を向けていないものに、注意を向けさせようとして言葉をかけてもうまくいかないことが多いのです。