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園長の日記

月見で「見ているもの」「感じるもの」

2020/10/26

「お月様はお顔みたいだね」とその子は言いました。やっぱり、こんな感想を持つ子が可愛いと思ってしまいます。科学の視点でお月様を見るよりも、私たちはファンタジーに包まれたままでいたい。お月様にはウサギがお餅をついているねと、そんな絵本の世界のままにしておきたいと思う自分がいます。

数分もすると、望遠鏡の○の中から月は見えなくなります。大人はその事実を理解するために「地球が自転している」ことを思う浮かべます。子どもは月が東から南へ昇っていく(移動している)ことに、どのように気づくのでしょうか。月の形が変わっているのは、大抵の子どもは気づいているのですが、時と共に東から西へ夜空も動いていることを、子どもはどのように知るのでしょう?

紛れもなく見えているものは、かなり遠くの風景です。地球から月までの距離は38万キロもあります。時速200キロの新幹線だったら80日もかかります。秒速30万キロの光なら1秒とちょっとです。つまり、目に見えるお月様は1秒前の姿を見ているのですが、そんな遠くの景色を地球上で見ることができるでしょうか? 地上でいくら遠くを見ても、地球は丸いので、その先は見えません。私たちは、こんなに遠くのものを見ることは「月」ぐらいしかないのです。そのことに私たちはあまり気付いてもいません。

見ているその光は太陽光の反射なので、太陽まで遡ると8分以上前に発せられた光が私たちの目に届いていることになります。月は地球との引力で引っ張られながら、1秒間に1キロの猛スピードで地球を回っています。こんなに早く動いているものを眺めていることにも、気付いていません。そんなに早く動いているのに、それでも地球を一周するのに一月もかかるのですから、その宇宙フィールドのなんと大きいことでしょう。

大人になると、こんな話に「ユリイカ!」を感じるのですが、3歳や5歳の子どもが望遠鏡の中のお月様を見ることで何を思うのだろうと、そっちの方に興味があって、どんな感想を漏らすんだろうと、そばでピントを合わせてあげていました。科学的に何かを知ることが、いつだって何よりも大事だと主張するつもりはありません。私たちは生理的な感覚(五感)をさえ超えて、第六感や第七感を夢見る想像力も失いたくもないからです。

望遠鏡で月を眺めながら、何を見るかは自由でありながら、その自由であることの難しさもありますねと、月が物語っているようでもありました。

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