この子らのどもまでも「まっすぐな心」がたまりません。その心との交流がもうすぐ終わるんだと思うと、だめでした。担任が私の目の前で卒園児の名前を呼ぶのですが、その声が震えるたびに、保育証書に書かれた名前を読み上げる私の声までもが震えてしまいました。人は思わぬ時に、自分の中に埋もれていた感情と出くわすものなんだと、改めて身をもってわかりました。そんなことはわかっていたし、気持ちを紛らわすように気をつけていたのに、それは不意にやってきて私を困らせます。それにしても、どうしてこの気持ちはこんなに込み上げてくるんでしょう。この切なさは、この子らが卒園していなくなることの寂しさもありますが、それに加えて、大人はなくしてもしまっている、まっすぐな心に打たれるからです。
誰にでも心を配り、ある状態をもっとよくするには「こうしたら?」と真剣に考えてくれるKくん。友達のことが好きで優しいから、きっとこう感じているにちながいないと話してくれるUくん。楽しそうなことに目がないから、どうやったらそれができるか知りたがる好奇心旺盛なSくん。優しい性格から生まれる優しい言葉と気遣いが、大人にも子どもたちにも魅力的なTくん。いろんなことをよく知ろうとする博識で自分の世界を持っていて、物事のナイーブな感覚を大切にしているTくん。なんでもやってみたいと挑戦して、いろんな工夫をすることを楽しめるTくん。愛嬌たっぷりの人懐っこい性格で体を動かすことと楽しい話が大好きなNくん。いろんなことを知ることが楽しいのでしっかりと考える力で自己主張できるNくん。体を動かして遊ぶことが大好きでものすごくピアノが上手いSさん。キラキラした世界とクスッと笑えるようなユーモアが大好きなYさん。この10人が卒園します。
この子らのことを誰もがよく知っており、とても大事にしている人だけが今日は集まることになりました。気心の知れた仲間だけで作り上げた空間になりました。来賓のいない卒園式は、私は初めてでしたが、実際に子育てをした者だけが集うのはいいものです。それぞれが今の「夢」を語ってくれました。その夢を叶えられるように、職員からは嵐の「カイト」を歌いました。Tくんのお父様、お祝いのお言葉、心に沁みました。ありがとうございました。私たちは何を大事に生きていったらいいのかを、教えてくれるのは子どもたちだなあと思います。子どもたちのまっすぐな心に接するたびに、大人の私たちは「もっと良かれ」を考え続けようと思います。