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園長の日記

和泉小学校で講演

2021/08/02

「困難さは私たちの意識と環境が作り出している? 〜障がいという概念を超えた保育を目指すために、子どもの特性理解を深めよう」。私はこの数年、こんなタイトルの講演を幼稚園や保育園の保育者向けに何度か行ってきたのですが、その話を聞きたいとおっしゃって、私を講師として校内研修会を今日開いたのは和泉小学校の村田悦子校長先生です。

「障がい」の定義の歴史を見ると、国と時代によって大きく変化してきました。しかもその判断をするのは医師ですが、その基準は国際機関や医学会が制定します。その代表格は米国精神医学会(APA)が編成する「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM-5)です。

私はその経緯を詳しく調べたことがあるのですが、純粋な科学的議論だけとは言いがたく、その国の保険制度や医薬業界の意向、当事者の会など関係者による活発なロビー活動を伴う政治力学が強く働いています。日本はDSMに比較的忠実に従うのですが、その扱い方は国によってもかなり違います。一言で言うと、この基準や診断で、その人のありようを決定してしまうかのように社会的な支配力を持つことに、私は強い懐疑を抱いてきたのです。

もう一つ、深い疑念を呼び起こす原因となっているのが「障がいの特性は環境因子によって変わる」という事実です。それは保育実践の中で強く感じてきました。そして私の懐疑が過剰ではなかったことを、今世紀になって世界保健機構(WHO)が証明しました。例えば「国際生活機能分類」です。それによると、健康とは「個人因子」だけで考えるのではなく「環境因子」も加味して、社会参加できれば、障がいとはならないと定義変更されたのです。

私たちは、医学モデルから適切な距離を取るべきなのです。環境への不適応は、個人の特性か、それとも環境の方に原因があるのか、あるいは相互作用なのか。私は食物アレルギーがあっても、それは障がいではなく除去や代替食があれば環境に適応できることを例に挙げ、環境いかんでは、障がいという医学モデルから社会モデルに移行できるものもあります。その可能性を広げるように追究するべきだと考えています。

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