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園長の日記

第1回保護者アンケートのお礼

2021/09/07

今年度初めての保護者アンケートは7日現在で32家庭からの回答をいただきました。ありがとうございました。今回のアンケートは私たちが目指している保育の目標や考え方についてお尋ねしました。ほとんどの内容について「そう思う」が多かったので、目指している子育てのあり方を共有していることがわかり、大変嬉しく思っています。お忙しいなか、多少多かったかもしれない質問項目にご回答いただきありがとうございました。回答いただいた結果はまた集計してフィードバックさせていただきますのでしばらくお待ちください。なお、これからの集計期間中に回答していただいても構いません、集計に間に合うまで、できるだけ皆さんの声を反映させていただきます。

(ここから先の話は、さらりとは読めない、ちょっと重い話題なので、暇な時にどうぞ。)

ところでアンケートは色々な種類や方法や考え方があって、そのあり方自体に議論があります。

例えば東京都は「福祉サービスの第三者評価」と言って、全ての福祉施設を対象に利用者の満足度を聞きます。介護分野などを含めたすべての福祉サービスは直接契約になっていますから、利用者の選択に資するために、施設の満足度を点数化します。保育園も厚生労働省所管の「児童福祉施設」ですから、この「福祉サービス」に含まれています。しかし保育園は直接契約とは言っても、入園の選考は基礎自治体(千代田区)が行いますから、他の高齢者施設や介護施設とはちょっと異なります。東京都は3年に1回受けるように義務化しています(県によって異なります)。

そこで意見が大きく分かれていることがあって、義務教育である小中学校は学区制度で選べない場合が多く、選択になっていません。すると教育内容は、どの小中学校へ言っても同じでなければいけません。そこで「満足度」は聞きません。それはそうですね。学習指導要領の内容を教育しているので、聞くのはその達成具合がどうか、ということを関係者が自己評価する色合いが濃くなります。関係者には保護者も含まれていて、その学校の教育目標などを教員は周知しているか、保護者はどこまで理解しているか、という質問が入ってきます。保護者は利用者ではなくて当事者なのです。

そうなると、文部科学省所管の幼稚園は学校なので、第三者評価ではなく自己評価と関係者評価が義務化されており、どの園がいいのかな、と選ぶための満足度調査はありません。でも実際には幼稚園は直接契約であって、幼児教育の内容も保育料も各園が決めることができます。保育園とはそこが異なります。ではその二つが一緒になっている内閣府所管の「幼保連携型認定こども園」はどうなるのでしょうか。

このような性格の違いあって、私はそれぞれの評価のあり方に関わってきました。東京都の福祉サービス第三者評価者としてこれまで53の保育園やこども園の評価をしてきました。また学校関係者評価としては八王子市松木中学校のコミュニティスクルールの関係者評価の内容を検討する委員でした。今回実施した保護者アンケートは、質問内容そのものが保育目標と方法の説明になっているのですが、当事者調査の手法を取り入れました。

第三者評価は保育をサービス、つまり商品化します。利用者の選択の参考に役立てるというのが主目的なので、そこで問われる質は、新自由主義経済の中での質になります。

ところが、世界の保育界の議論は、新自由主義経済でのPDCAを回すだけでは、世界が破綻することが目に見えているので、問われるべき質は、何を目指すかという理念やビジョンの質に移ってきています。

これまでの民間の幼稚園や保育園のように、目指すべき保育理念やビジョンを創設者の思想の自由に任せていては、持続可能な社会を実現できるとは思えません。経営が成り立つための幼児教育が、これからの時代にふさわしい内容とは限らない、という課題です。

世界は目指す理念の価値そのものを変えよう、となってきています。そうした議論を経て、保育理念や保育方法の再構築が進んできています。日本は待機児童問題という量の問題からやっと質の問題に移りつつある段階です。しかし最近の世界の議論は、その新自由主義的な質、幼児教育を投資の対象とみなして充実させれば、後で大きなリターンが勝ち取られるという物語からも離れよう、それはウェルビーングとは違うんじゃないか、という考え方が広がってきました。その代表的な保育実践がイタリアのレッジョ・エミリア市の公立で60年以上続いている保育のあり方であり、その考えを政府が取り入れて改革を進めているのがスウェーデンになります。

同じ就学前の0歳から6歳までの子どもたちは、同じはずです。日本は通う施設や学校によって、位置付けや保護者との関係が異なり、同じように見えて異なる制度が動いていて、とってもややこしい。ずっとこのままでいいというのは私には理解できません。この辺りの、縦割り行政、幼保二元化問題が、アンケート一つとっても影響を与えているのです。多くの先進国はこの幼保一元化を進めましたが日本は政治の力では既存の行政組織の岩盤にぶつかって動きません。

その矛盾は他にもいっぱいあって、目につくことだけでも幼児教育は無償化になりましたが、満3歳以上から。でも幼稚園は2歳児就園クラスで満3歳になったら無償化ですが、保育園はにこにこ組で満3歳になっても、わいわい組にならないと無償ではないですよね。それから保育園も幼稚園と同じように教育機関であるとなっています。ちっち・ぐんぐん・にこにこも教育機関なのです。それなら無償化して欲しいものです。

近く子ども庁ができますが、この二元化論は棚上げが決まっています。日本は色々なものを先送りしながら取り繕ってきましたが、日本というシステムは相当にガタがきているんじゃないでしょうか。

 

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