幼児の夕方のお集まりで、大切な話し合いが開かれました。テーマは「どうやったら決まりを守れるか」です。やっていいことと悪いことがわかり、望ましいことができるようになることは、まさに教育の柱の一つです。自分がやりたいことであっても、それが認められない場合、「やりたくてもやらない」という態度を身につける必要があります。
遊んだおもちゃは元にしまう、お友達のものを取らない、ものを独り占めしない、並んだ順番は守る、室内では走らない、お昼寝の時間は静かに過ごす・・どれもこれも「自分だけ良ければいいや」では済まない事ばかりです。「自分勝手にやってしまうと、どうなるかな?」「勝手にやっていいのかな?」こんな問いかけに、子どもたちは「ダメ〜」とわかってはいるのです。先生も「そうだよね。ダメだよね。じゃあ、どうしたらいいのかな?どうやったら気持ち良く楽しく遊べるかな?」と聞くと、「ハイハイ」と手が挙がります。そして、たくさんの「こうしたら、いいんじゃない」が提案されました。
そんな話し合いの様子をみていると、子どもも「わかっていることと、やることは別なんだなあ」と思います。こうしちゃダメということは知っているのです。でも、なかなかできない。「ただ、したいからしているだけ」で、別に悪いことをしているとは思いもしない、という心理状態です。やっていることは、物の取り合い、自分が決めたことが優先されて相手の提案は受け入れない、衝動性もあって「今じゃなくて、後で」はできない。この子たちにとって、そう簡単には決まりを守ったり、他者に「ゆずる」といったことは難しいようです。これを幼児の「自己中心性」と呼んだのが、ピアジェです。まだ、発達段階として「できない」段階なのです。
それを、理屈で諭してできるようになることはありません。発達には順序性があって、然るべき体験の積み重ねの中で徐々に獲得されていくのです。ここは根気よく、子どもたちからの芽生えを待つしかないのです。この発達を長い目で見据えながら、子どもの育ちをとらえることが、私たちの専門性になります。