保育園では毎年、年間テーマを設けています。今年度は「風と光と・・・」というもので、生活の中の風や光に少し興味を持って、子どもの体験が深まったり広がったりすることにつながるといいな、と思っています。たとえば、13日(火)の2歳児クラスをのぞいてみると、うちわで風船を扇いだり、牛乳パックで作ったものを扇いで倒したりして遊んでいました。この遊びは実習生が考えた「風遊び」ですが、このアイデアは、10日(土)に開いた「納涼会」で遊んだ風の実験からつながっているものです。
この「風の実験」は、机の下から噴きあげるサーキュレーターの上に、筒を置いて、その上にいろんなものを「浮かべてみる」という遊びです。風船やスカーフやカップラーメンの容器とか、「こんなものが本当に浮かぶかな?」というものまで浮かんでしまうので、大人が見ても面白い実験装置です。でも大人が面白いと思うことと、子どもが思うものとは違うかもしれません。
風は見えないし、手で触ることもできないので、どういうものかというイメージも持ちにくいはずです。直接さわったり持ったりできないものだけに、それを感じる場面をいろいろ体験して、子どもは、そこから「風」に要素を抽出してくるのだろうと思います。その時の表現(言葉など)は、その子の感じたリアルな感覚なので、誰一人として他の人と同じものにはなりません。いろんな感じ方や表現になることでしょう。
納涼会では、風車を扇風機に当てて、クルクルと回すという遊びもしました。これらの遊びは、風を使ったものですが、普段の生活の中の風体験とどこかでつながって、いろんな気づきを生んでいるのだろうと想像します。暑いときに扇子やうちわで扇ぐと涼しく感じたり、蝋燭の火をふっと吹いて消す時も、それは同じものと思うことがあるのかどうかわかりません。
ジェット機に乗っている時、私たち乗客は外の風を感じることはありません。台風の最大瞬間風速が50メートルと言われても、きっとそれを実感することはできません。子どもの世界で感じる「風」の世界を、たくさん探して集めたりすることで、見えてくる「風」というものがあるのかもしれません。それは子どもなりに、新しい風の体験になっていくかもしれません。そうしたいろいろな経験を重ねる中で、きっといろいろなものを気づき、子どもなりの好奇心が躍動していくのだろうと思います。