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園長の日記

保育園の「構造的な質」について

2022/12/26

年内最後の週、と言ってもあと3日。今月は保育園のことが毎日のように報道されて、なんだか肩みの狭い思いを感じる年末になってしまいました。このテーマは法律違反の犯罪レベルから保育の不適切な対応まで、問題をちゃんと整理して対策が講じられるべきでしょう。行政からは「通報制度」が確立されているか、また職員のメンタルヘルスへのケア体制がとられているかという調査が来たので、確立していると答えました。また職員の休憩やノンコンタクトタイムの実施状況などの視察も受けました。さて、これからどんな保育園へ支援制度ができてくるのか、期待しています。

これらの問題をもう少し大局的に眺めてみると、長い間放置されてきた制度の歪みが吹き出しているようにも感じます。乳幼児の保育が長時間になっても、それに見合った保育士の配置基準は何も変わっていません。すぐにでも改善してほしいのは、最低基準では保育ができないので、実際に多く配置している職員分の補助金を正規職員換算で出してほしいことです。それを上回っている保育士を配置する園に対しては、それに見合った運営費を出してもらいたいものです。細かい話かもしれませんが、運営費(補助金)の計算は、小数点以下が四捨五入です。小学校の30人学級の基準は切り上げです。この差はとても大きいのです。

保育園では4歳5歳は合わせて30対1です。幼児30人を一人の保育者(教諭・保育士・保育教諭)でみます。ですから、もし4歳児クラス15人、5歳児クラスが15人いても、それぞれ一人をつけますよね。でも補助金は、2クラス合わせて30対1で計算、しかも、小数点以下を四捨五入ですから、ピッタリ一人分しか来ません。二人いる先生に対して運営費は一人分しか来ないのです。

(当園の場合は、4歳10人、5歳10人に一人ずつ担任がいますよね。でも合わせて20人なのに、最低基準は合わせて30対1ですから、運営費は07人分しか来ないのです。)

さらに、もう一人増えた場合を小学校と比較してみましょうか。すると、その格差がもっとはっきりします。

4歳と5歳を合わせて31人ですから 、これを30で割ると「1.0333・・」となりますね。保育園の場合、補助金はほぼ1人分しか来ません。私たち保育園は、4〜5歳が30対1です、と言うと「ああ、小学校1年生の30人学級と同じですね」と言われることがあります。とんでもありません。学校の場合はいわば「切り上げ」ですから、31人になったら15人のクラスと16人のクラスの2クラス、つまり教諭は2人になります。そして、公立ならその職員2人は公務員ですから、そのような運営費の計算などしなくても済むのです。そもそも経費(人件費)の出どころが違うからです。

こういうのが些細なこと、トリビアなことと言えるでしょうか? 保育園では人件費が経常支出の8割近くになります。公立はそのような計算そのものがありません。もし計算したら、ほとんどが人件費でしょう。公設民営にした流れを作った要因は、自治体の経費削減でしたから、民間に任せた方が、保育運営費が安く済むからです。根本的な国と自治体の姿勢が生み出している構造の質にもっと目を向けてもらいたいものです。

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