自分から何かを始めようとする気になるには、気持ちが落ち着き、それに向かうスタート地点、つまり起点が必要です。その気になる不動点のようなものは、リズムの中で何度も何度も生じているようです。
昨日のYちゃんの姿から振り返ります。
すぽん!と靴下がぬげたときに私に見せてくれた笑顔からは、いくつもの物語を紡ぎ出すことができます。お散歩から帰ってきてまだ頬がほっていて呼吸も少し荒く感じます。暑い日差しから涼しい室内に入って、ほっとするようなタイミングです。ここでなにをするのかというと靴と靴下を脱いで部屋へ入っていきましょうね、というのがこの状況で流れている空気感です。しばらくここに座って涼もうか、というような空気ではなくて、大人がつくり出している期待という名前の気が流れているのです。子どもは大人の使う言葉や雰囲気からその「圧」を感じていて、おそらく子どもの中には自分がいまここでやってみたいことと違う感触に対して違和感や抵抗感のようなものを感じている子どもいるでしょう。
私はまずはほっと一息、どの子どもにも自分の不動点を見つけてみることから支えてあげたくて「ここに座ってみようか」と誘ってみるのでした。するとその子はそこに座り、隣の子どもが先に脱いでいった靴下を手に取って「これ」と私に差し出します。「Sちゃんの靴下だね。ありがとう」と私は受け取ってから、「Yちゃん、おくつぬいでみようか」と誘ってみます。この子たちは大人になにを期待されているのか、ちゃんとわかっているので、自分でそれを始めます。靴の上側を覆っているマジックテープをビリっとはがして、自分の足から靴を外します。靴はそのあたりに無造作に転がり、それは気にも留めずに、今度は靴下をとり始めます。それが前回の写真のときの様子です。
(明日に続く)