当法人の理事長が代表をつとめる保育環境研究所ギビングツリー(GT)が主催する職域別セミナーが昨日と今日、新宿高田馬場で開かれました。このセミナーは保育園ならではの「チーム保育」をテーマにしたものです。参加者は全国各地から50人が集いました。オンラインはなしの対面のみです。ただし保育士はいません。保育士以外の職種が集うのです。こういう研修会は珍しいでしょう。なぜ、こんな研修会と申しますと・・・
ご存じのように保育園には保育士だけではなく、看護師、栄養士、調理員、用務員、事務員などいろいろな専門家がいて、それぞれが広い意味で「保育者」として保育を支えています。さらに園医さんや療育機関などの専門機関との連携、子育て支援のパートナーや地域の民生児童委員、保育ボランティアの方々など、裾野の広いネットワークが子どもの育ちを支えることになります。
医療に例えると、医師や看護師のほかに保健師、管理栄養士、理学療法士・作業療法士・言語療法士、臨床検査技師、臨床工学士、ケアマネージャー、 臨床心理士、医療事務などが支えている<チーム医療>に似ています。
そうした広い意味での<チーム保育>を展開していくために、どんなことが大切なのかを二日間にわたって学び合いました。まずは、その保育園が、組織としてその実現を目指している理念や目的、ビジョンなどの共有することが欠かせないのですが、GTの場合は、国の法令である要領や指針が基盤になります。子ども同士の関係を大切にしながら、子どもが主体的に環境に関わって、その関わり方と意味に気づき、探究を深めていくような生活をどのようにチーム保育のなかで作り出していくか? やりたいことや発達にあったことを選んで活動でき、あるいはその活動内容そのものを子どもと一緒に作り出していくような生活にしていきたい・・。
しかし、それを具体的に実現しようとすると、それぞれの園の置かれている条件によって、内容が変わってきます。そこで、要領や指針が求めている保育の姿を、具体的にこういうことになるのではないかと、そのレベルで具体化する事例を持ち寄って学び合う場がギビングツリーの特徴といっていいでしょう。具体的な実践事例から、大切な「実践理念」を導き出し、その具体化を図るというアプローチといっていいかもしれません。
そこで、まず大切なのは各園の職員が大切にしている子ども観や保育観を理解し合うことです。その中で、いわば目指していることの接点を増やしていく。それぞれ役割を明確にしながら、相互に理解して支え合うという関係づくりを目指すことになります。ここに一つの組織論が展開されるのですが、それは実践理念と離れるわけにはいきません。セミナーでは、調理や食育、保健の立場、ICTの活用、子育て支援、そして用務の立場から、それぞれ事例に基づく提案を各1時間ずつ報告してもらいました。
事例は実に多岐に渡り、それぞれの立場から見えている景色が違っているように感じるのですが、大切にしたい部分を丁寧に重ね合わせていくと、陥りやすい分岐点が見えてきたりします。同じような保育に見えても大事なことが違っていたり、一見別の方法に見えても、そこに至る経緯や置かれている条件や優先順位が異なるだけで、目指しているものがおなじであったりします。子どもの姿から考えるようにするとか、子どもから見たら大人はみんな先生ではないか、など、なるほどと思える実践的な視点をたくさん共有することができました。