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園長の日記

ストレスに向かい合う秘訣

2019/11/18

先週は「赤ちゃんの社会性と言葉の発達」を学び、北の丸公園で「秋の紅葉」を楽しみ、和泉小学校校庭で「動物との触れ合い」を楽しんだりしました。赤ちゃんや自然や動物と触れ合っていると、心が癒されるものです。それなのに、社会を見渡すと、いたるところに「ストレス」が人の心を蝕んでいます。街角には「癒し」を売りにしたサービスがいっぱいあるので、ストレスを感じて生活している人が多いのは間違い無いでしょう。

先週のコーヒータイムでは「子育てにおけるストレスの発生源とその仕組み」について考えましたが、その結論は「子どもの夜泣きやイヤイヤは、生理的早産として生まれるヒトの脳が、長い時間をかけて徐々に大きくなる過程で起きる不可解な行動」だと認識することで、決して「お母さんやお父さんのせいでは無い」ことを忘れないようにすることでした。

そうは言ってもやっぱり「理想と現実」ではないですが、現実にストレスはやってきます。子どもは夜に泣きが続き、親の言うことを聞かずに、駄々をこねて、親を困らせているかもしれません。じゃあ、どうするか?

イヤイヤはなんでも「自分が」「自分で」という、自分が原因になって世の中に働きかけたいという主体性の発露です。それは全面的に気が許せる親への「甘え」がそれに拍車をかけている行動です。知らない他人にイヤイヤとわがままを押し通すことはありません。それだけに「母子」の信頼関係がなせるものです。そう考えてみて初めて見えてくる子どもの未熟性が「可愛らしい」と感じませんか?その子が言っている「言葉」を額面通りに受け取らず、その言葉の裏にある、その子が抱え込んでいる気持ちに、ちょっとでも共感できたら、少しだけ微笑ましく思えるかもしれませんよ。

中々寝ないと言う子どものために、ある音楽を聴くと、すぐに寝てくれる。そんな音楽が開発されようとしています。3つのサンプル音源があるから、どれが一番子どもが眠りにつきやすいか、お昼寝で調べてみてほしい。そんな依頼を今日、ソフトバンクのグループ会社のSB書籍から受けました。やってみることにしました。3つの音源から一つを選び、来年4月に書籍+CDで発売されます。さてどんな音源が届くのか楽しみです。

もうひとつ、麹町中学校の工藤校長の最新刊「非常識な教え」が面白いです。共感できる話が多いので、ぜひ多くの人に読んでもらいたい本でした。ストレスへの対応方法の話も出ているのですが、「ストレスを耐え忍ぶ「受け身」の発想ではなく、自ら働きかけてストレスを減らしていく能力の方が大事ではないか」という話が参考になります。積極的コーピングというそうです。このスキルは応用がきくので、このテーマはこれからも続けます。

 

お楽しみ会のお知らせ その1

2019/11/17

 

お楽しみ会・・・この名前を聞くだけで「楽しそう!」「楽しみ〜い!」って感じてもらえたら、嬉しいです。子どもたちは小さなアーティスト! 大人は忘れちゃった初々しい、言葉や表現をいっぱいしてくれます。どうやったら、それを形にできだろう・・・普段の生活の中で楽しんでいる音やリズムや歌やごっこの数々を、楽しく見てもらいたい。そんな思いの行事です。12月7日(土)9時30分 開演です。それこそ、お楽しみに・・・当日にどうしても都合がつかない、という方は第2回目の予行練習12月4日(水)にご覧いただけます。

15日(金)にお知らせを配布しました。ご覧ください。

20191117お楽しみ会のお知らせ その1

 

12月以降のバス遠足について

2019/11/16

当園の幼児たちの現状を踏まえ、好ましい体験の質を高めていくために、姉妹園の新宿せいが子ども園との交流を深め、併せてすぐそばにある公園「おとめ山公園」での遊びや探索活動を深めていくことにしました。基本的にはバス遠足の行き先にします。

年長さんがいないので、その姉妹園との交流を深めることで人間関係の幅を広げること、坂のある芝生広場での運動遊びや、ビオトープや池など木場公園とは違った自然探索や探究活動ができそうなことなどから、そうすることに決めました。比較的近いので、行きやすいということもあります。

20191114 バス遠足のお願い

第2回 園長のコーヒータイム

2019/11/15

◆コービー豆を挽きながら

にこにこ組のお父さんやお母さんが、お迎えにきて「あ、今日はコーヒータイムですね。いい香り!」「そうか、今日だったんですね。15日でしたね」と言葉を交わしながら、「本当はもっとゆっくりできる時間と場所があればなあ。それこそ保育園の中に、喫茶店でもあれば、カウンター越しに、好きな時間に好きなだけ、いろいろ話が出来るのになあ」などと思いながら、ハワイコナを淹れていました。

今日の報告の前に、その部屋の準備をしているときにも、可愛らしいお手伝いがありました。らんらんさんとにこにこさんが、豆を挽くのを手伝ってくれました。こういうことをするのが好きなのかが、好奇心いっぱいの子どもらしい子どもですね。私が好きなキュリアス・ジョージ(好奇心いっぱいのジョージ、おさるのジョージ)です。

◆今回はストレス解消法、でもその本質は?という話

さて、今日はお約束の絵本「にんげんさまへ」を読んだ後で、私が用意した動画を見てもらいました。不覚にも私は声が出ない状態だったので、「マイクを使ったひそひそ話」という、なんとも申し訳ない、不思議な状態での進行となりました。

今回のテーマは「ストレス解消法」です。この動画を選んだのは子育てにおけるストレスがどこからくるのかを、科学的、客観的に知っておくことで、子どもへの接し方が変わるかもしれないし、内容が人類史を踏まえた研究の知見だったからです。

◆科学の知見で「ママのストレスを理解する」

2016年2月放送のNHKスペシャルの「ママたちが緊急事態!?〜最新科学で迫るニッポンの子育て」です。

この番組をコーヒータイムで見てもらおう!と思い立ったのは、今週の研修会でお会いした今福先生の「先生」が明和政子教授だったので、「そういえば明和先生が、今の子育ては人類の危機だと、言っていた番組があった」と、思い出したからです。番組の話を要約すると次のようになります。
◆エストロゲンの激減が孤独感と不安の原因の一つ
<・・・子育て中に母親が「孤立感や困り感」などのストレスを感じるのは、出産を境にエストロゲンというホルモンの分泌が激減することで「孤立や不安を感じる」ことが一因。
「仲間と一緒に子育てしたい」と思うように、出産後はあえて孤立感を感じる体になっている。
◆多産で社会が子育てをする種がホモ・サピエンス
そうなったのは700万年の進化の過程でそうなった。直立二歩行をするようにると骨盤の形が変わり産道が狭くなる。
すると胎児の頭が小さいうちに出産し、その後長い時間をかけて大人に育てる。母親は子どもを毎年産めるようなり、たくさん産んでみんなで育てる共同保育がホモ・サピエンスの子育てだった。
母親だけでは子育てはできない。松沢教授は「人間はそんなことは、できない」という。村中の人が子どもを育てた。そうなるような体に古代からなっている。その特徴の一つがエストロゲンの出産後の激減。
◆夜泣きは胎児の時の夜の目覚めの名残り
一方、長い時間をかけて脳が大きくなる過程では、不可解な現象も起きる。それが夜泣きであり、イヤイヤ期である。夜泣きは、胎児が夜によく起きていた名残り。胎児は起きていると母親の血液から酸素を奪う。だから母親に負担をかけないように夜に目を覚ます。それが夜泣きとなっている。
◆イヤイヤ期の不可解さは長い脳の発達からくる
またイヤイヤ期は古い脳からの欲求を抑制する前頭前野が育つのを待つ必要があり、それは思春期まで続く。
我慢強さを調べるマシュマロテストをしたら、イヤイヤ期の子は4分でお菓子を食べてしまうがイヤイヤ期を過ぎた小学生は5分を待てた。自分から弟におもちゃを貸してあげられるようになるには、そうした自制心が育つことと関係する。
◆思春期以降の育児体験が母性を目覚めさせる経験として必要
子どもを産めは「子育てができ当然」と思うのが、まず誤り。母親になるための準備の経験が実は必要。伝統的は社会では思春期の子どもの周りにはお世話しないといけない子どもがたくさんいた。育児体験は自然とやっていた。しかし今は意図しないと育児の経験がない。大学生の実験では育児体験の前と後では脳に大きな変化が生じている。現代社会は、意図的に青少年に育児体験をさせる必要がある。・・・>
◆オキシトシンのもう一つの働き「攻撃性」
今日はここまででした。
これ以降は、お父さんたちがぜひ、見てぼしいトピックスです。「夫に激イラッ!」。子育てをどうして夫にイライラしてしまうのか。それは愛情ホルモンと言われるオキシトシンは「愛情や絆を邪魔する相手には攻撃性を高める働きもあるから」。
そして、ストレスなく、リラックスできているのは、夫が話を一緒に共感して聞いているとき。
コーヒータイムは、次の目標はこれですね。
私たちは、こんな心や体の仕組みを持っているから、子育てしやすい社会を作りたい。それはやはり、本当の意味で共同保育を社会のものにする必要があるのだと思います。
今回使ったPP資料は次のものです。
今後、園長のミニ講座、保護者懇談会なども開けるといいなあと思っています。

動物との触れ合いを楽しむ

2019/11/14

じっと膝の上に乗っているうさぎやモルモット、手のひらにちょこんと立ってるヒヨコ、手の中に収まる小さなハスカネズミ。今日は「いずみこども園PTA」主催の「ふれあい動物園」(いずみこども園の園庭)に参加させてもらいました。

最初は恐るおそる触っていた子どもたちが、だんだんと慣れてきて、そっと頭を撫でたり、そっと抱きかかえたり、じっと動かずに静かに見つめ続けたりしています。人懐っこく、落ち着いている動物の可愛らしさに、子どもたちも心が優しくなっていることがよくわかりました。

今日参加したのは、わいわい、らんらんの17人。動物アレルギーの有無などを確認させていただき、個別の配慮を踏まえて実施しました。

今日開かれたのは、和泉小学校の開校記念日で、区内の幼稚園、保育園の年長さんを対象とした観劇会もあり、同小の校庭が空いていることから企画されたものだそうです。哺乳類の小動物を保育園で飼育することは色々とハードルがあるので、このような「移動動物園」の企画はとてもありがたいものです。

今回はうさき、ヒヨコ、ハムスター、モルモット、ハツカネズミの5種類と触れ合うことができました。どの動物も人に触られるのが慣れているので、驚かさない限り、噛みついたり、引っ掻いたりすることもありません。

抱っこの仕方はどれも同じで、子どもがまず椅子に座って、膝の上にタオルを広げてもらい、その上に動物が静かに乗ります。動物園の方や、いずみこども園の保護者の方が手伝ってくださいました。

 

動物との触れ合いを楽しんだ後は、隣の「和泉公園」で体を動かして遊んできました。

鬼ごっこしたい!と、広い芝生を駆け回る子が3〜4人。そのほかは、遊具が集まっているところで、上り棒、滑り台、ブランコ、砂場などで遊んでいました。

NKくんは「ブランコがすごく楽しかった!怖かったけど、面白かった!」と満面の笑顔。

普段あまりやっていない遊びへの感度が高いことがわかります。また、もうすでに季節はずれのモンキチョウも姿をみせてくれ、虫好きな子たちの興味に応えてくれました。11時ぐらいから30分ぐらい楽しんでから園に戻りました。

 

 

北の丸公園で「秋」を堪能

2019/11/13

千代田区の保育園ならではの公園へ行ってきました。北の丸公園です。

天皇の即位を祝う式典のために、トイレが封鎖されていて簡易トイレになっていた以外は下見の時と変わらない、美しい公園でした。今日、散策したのは広い芝生の場所と池の周り、そして隣接する雑木林です。

鬼ごっこやりたいという数人の子と原っぱを駆け回ったり、芝生の上を転げて遊んだりしました。

池には大きな鯉が悠々と泳いでいて、近寄ってくると、にこにこさんは珍しそうに「おさかなさんだね」「おっきいね」と興味津々。しばらくその姿を眺めたり、泳いでいく先を追っかけたりしていました。鴨が池に浮かんで水草を食べている様子を見たり、枝を探してきて、池のふちに座ったり寝転んだりして、「おさかな釣りするの」と、魚釣りごっこをずっと楽しんでいる子もいました。

天気予報を見ると、今年は紅葉の時期が少し遅いみたいです。北の丸公園の紅葉も、これからという感じでしたが、すでに赤くなり始めた葉はとても綺麗で、澄んだ空気とともに、気持ちのいい散策ができました。日が照ってくると、らんらんのHくんが「日向ぼっこしようよ」を誘ってくれました。

木々の下で子ども達が夢中になったのは、どんぐり拾いでした。木場公園で拾ったどんぐりの数が20個だとすると、こちらは100個200個の世界。いくら拾っても拾いきれないくらい、たくさんのどんぐりが落ち葉に埋もれているように落ちていました。

名前を書いてもらった個人のビニール袋に、せっせと集めていた子どもたち。見ていて面白いのは、どんぐり以外にも綺麗な石、葉っぱ、枝など、その子なりに「これは!」と思ったものが袋に収まっています。その量も種類も微妙に異なるあたりに、その子の個性が現れているような気がします。

この雑木林には、マテバシイが多いのですが、中にはコナラやスダジイ、シラカシの実がたくさんありました。木場公園で拾ったどんぐりは、まん丸いクヌギが多かったのですが、小ぶりのシラカシの枝につながった帽子が珍しかったようで、集めている子もいました。

10時から11時45分まで、あっという間に過ぎた北の丸公園。お休みの日に、ご家族で遊びに行かれるといいと思います。これからの紅葉はほんとにオススメです。

 

赤ちゃんの社会性とことばの発達

2019/11/12

今日は一日中外にいて、夕方だけ園に戻りました。昨日の午後に続き、研修会の主催者側として日本橋にいたからです。今回の参加者は全員主任か副園長です。その園の保育の「司令塔」であり、要となるリーダーたちです。保育環境研究所ギビングツリー(GT)が主催する年に1度の「リーダー研修」です。この研究団体であるGT園は法人の数では全国に約500になりました。その中から、全国から約90人が集まりました。

今回のゲスト講演は武蔵野大学の今福理博(まさひろ)博士。新進気鋭の若手研究者で、近著に『赤ちゃんの心はどのように育つのか』があり、藤森統括園長のブログで、かなり詳しく解説されています。教育学部こども発達学科の講師をされています。子どもの発達と言葉の獲得過程について研究されています。今日の内容は「これからの幼児教育」「社会性の発達」「向社会行動の発達」「ことばの発達」「実行機能の発達」「自己肯定感」の5項目でした。

園の子どもたちにとって、どんな人的環境(職員や地域の人)が好ましいのか、その再確認になりました。いただいたレジュメを参考までにPDFに載せます。

20191112 赤ちゃんの社会性とことばの発達

この中の「実行機能」の中に「自己抑制」の話がありました(スライド62)。私たちに身近な表現では、躾とか、イヤイヤ期(第一次反抗期)などと関係します。養育者の言うことを聞かない、提案を拒否するといった状態です。この「自分で」と言う強い主張は、私たち保育者は古くから「自我の芽生え」という言い方をしていましたが、それはもう使いません。今は前頭葉の発達と関係することがはっきりしており、早くても10歳以降まで発達を続けます。

「感情のコントロールが苦手な子は、劇を演じるなどのごっこ遊びをすると、感情制御の能力が向上する」(スライド65)「ほめられると自尊感情にプラスにはがらき自発的な意欲が伸びる」(スライド68)など、子育てに役立つ話がいろいろ聞けました。「目を見て話しかける」「一日のスケジュールや活動時間を子どもに示す」など、保育園で実践していることも、いろいろ確認できました。

 

 

 

共にいるという心

2019/11/11

何も言わなくても心が通じる感じがするとき、子どもは「安心」して私のそばにいます。例えば今朝、私が使っていた裁縫道具の中の糸巻きをじっと観察しながら「これ、何?」と私に聞くのは、「紺」という漢字。その一文字が、「こんいろ、っていう字だよ。赤とか青とかの色があるでしょ、それとおんなじね。こんいろ」と話すと、Hくんはその色のものが家にあるといった話をします。私は布を縫っていきます。私がやっていることに興味もあるのですが、それよりも、一緒にいることが意味があるのです。漢字を覚えるとか、色の種類を覚えるといったことが大切なのではないのです。もっと大切なことは、安心していられることです。

わいわいらんらん組が散歩に出かけたあと登園してきたMちゃんは、誰もいない保育室で私といるよりも、お友達がいる散歩先の方を選びます。そっちだったらいいと言います。そこで私と一緒に散歩先へ向かいます。無線を使って、今どこにいるのかを確かめてから出かけました。散歩先で合流してから私は園に戻りました。

昼食のあと、Tくんは昆虫の図鑑を私と一緒に見たいので、私の手を引いて3階へ登ろうと誘います。私は午後から研修会場へ向かう必要があったので「今日はこれから出かけるからできないな」というと、彼は私の足に抱きついて、私を離しません。「Hちゃん、一緒に図鑑を読みたいんだよね、知っているよ。でも今日はできないんだよ、出かけないといけないから。そうする(足に抱きついて離さない)と園長先生は困っているんだけどな」。そんな話をゆっくりと繰り返すと、Tくんは、諦めて私の足から離れました。無理に離させることはぜず、<私が困っていること>を強調しました。彼は彼の判断に基づいて、私から離れることができたので、私は逆に抱っこして、そのことを褒めました。

すると彼は、階段の壁に飾ってある浮世絵の絵の中に、小さな小さな凧を見つけて「あれ、何?」と言います。「あ、そうだね、なんだろうね。Hちゃん、よくみつけたね」とさらに褒めてあげました。

この子たちは、気持ちを重ね合わせたがっています。共にいるという心を、一緒にいることで育てているのです。

 

正統な文化と真性の学びに向けて

2019/11/10

◆姉妹園との交流は「新宿せいが子ども園」を中心に

今週の大きな動きは、姉妹園との交流です。5日、高田馬場にある「新宿せいが子ども園」へ、らんらん組が出かけてきました(詳しくは、11/7付わらすのブログや園長の日記をご覧ください)。

開園する前から何人かの保護者の方からお尋ねのあった活動です。千代田せいが保育園に限らず、新しい開設園は年長組の子が入園して来ないことが多いので、年長さんとの交流の機会があるかどうかを含めた質問がありました。一つの大きなテーマになっていました。

10月には八王子市の「せいがの森こども園」へ行ってきましたが、新宿せいが子ども園へ行ってみると、比較的近いことや、都内でありながら自然も多い「おとめ山公園」で遊べること、その公園で園児との交流もやりやすいことなどから、新宿との交流を今後ふやしていきたいと思います。

◆運動の秋、実りの秋、芸術の秋・・

運動会が終わると、今度はなぜだか精神的ものへの欲求が浮上してきます。芸術の秋です。それを意識させてくれるのがまず自然の景色です。特に戸外へ出かけると、子どもが落ち葉や樹木の変化に気づき、その美しさを教えてくれます(11/5付わらすのブログをご覧ください)。来週13日は「紅葉」を楽しむために2歳児にこにこ組以上で「北の丸公園」へ出かける予定です。

運動会が終わると、と言いましたが、実は千代田せいが保育園が選んでいる運動は、できるだけ「正統的なもの」を選んでいます。鬼ごっこは奈良や平安時代に遡る「子取ろ子取ろ」が原点ですし、五穀豊穣を祈願する儀式でした。全く同様に大相撲も伝説とて有名な「宿禰(すくね)と蹶速(けはや)の天覧相撲」にみられるように、その年の農作物の収穫を占う宮廷の行事でした。いずれも「実りの秋」と深い関係があるのです。(ちなみに大相撲1月場所(両国)の先行抽選申込開始が本日11月10日からです)

こうした「日本」をよく知っておくことが、国際化している現代社会で必要なことであり外国語が「話せる」ようになることと同時に必要な、あるいはもっと大切なことかもしれません。ちなみにラグビーの歴史は、大英帝国の植民地支配の歴史と不可分であることも、同時に頭に入れておきたいことです。天皇陛下に祝意を込めて行う万歳三唱は軍国主義化していく明治時代にできたもので、それ以前にはありません。3歳までは親が育てるという子育て観が「神話」でしかないことも厚生労働省が白書で認めています。私たちが「常識」や「普通」と思っていることが、意外にすごく短い歴史しか持っていなこと、その成立のきっかけを知っておくことはとても大切です。

◆ハロウィンやクリスマスは?

保育園で取り上げる伝統行事は、地域で体験できるものなら、同じ内容を園で取り上げる必要はないだろうと考えています。ただ乳幼児が体験しやすいようにアレンジすることは大いにあります。でも、日本人は海外の動向を敏感に輸入して換骨奪胎して日本風にアレンジしてしまうのが特徴なので(明太子スパゲティのように)、ハロウィンもクリスマスもその宗教的背景は無視して、表面的なブームだけが定着してしまっています。それは否定しませんし、大いに楽しみたいですが、やはり「文化背景は知っておく」ことが、その文化の発祥地へのリスペクトではないでしょうか。

◆お楽しみ会は子どもの言葉や表現の成長を喜ぶ機会に

実りの秋は、子どもの成長を感じる秋でもあります。秋というよりももはや冬ですが、お楽しみ会(12月7日)は、子どもたちが楽しんでいる世界を、もう一度表して味わいたいという衝動に基づくものになるでしょう。

(お客さんに「これ、見て、蝶々になるんだよ」と教えてあげることも、表象行動の1つです。指をさして名前を伝える「言葉」の発達を促します。)

◆表象行為としての「お楽しみ会」の意味

私は5年ほど前に、放送大学で「表象文化研究」を受講しました。ミッシェル・フーコーの『言葉と物』の解説から始まる15回シリーズです。ここからは、それを踏まえた説明になりますので、飛ばして読んで下さって結構です。子どもと大人も、人間は世界から感じたことを表現したがります。文字、書字、文章、本、雑誌、写真、絵本、短歌、和歌、詩、歌、曲、楽器演奏、雅楽、絵、アニメ、映画、劇、演劇、歌舞伎、能、浄瑠璃、ダンス、舞踏、オペラ、料理・・要するにキリがないのですが、これらは人間だけの営みです。文化の一つです。目の前にあらわにする事を人文科学の世界ではRepresentation「リプレゼンテーション」と言います。

語源はラテン語ですが、わかりやすく、その英語で説明してます。英語はプレゼントです。「目の前にあらわになること」「現前する事」という意味です。そこから日本では「贈答品」「人にあげるもの」という意味に転用されて使われています。本来は目の前にあらわにする事です。

それに「リ」がつくので、「もう一度、あらわにすること」つまり「再現」です。英語の「リプレゼンテーション」が大正時代から昭和初期にかけて哲学者たちが「表象」とか「象徴」と訳しました。西尾幹二はショーペンハウエルの書を「意思と表象としての世界」と訳しました。その「表象」です。ドイツ語はvorstellungです。

実は遊びも表象行為なのです。どういうことかというと、何か心動かされることがあると、人はそれをもう一度味わいたいと思うようにできているのです。私は昨日の「国民祭典」の奉祝曲に感動して、うちの職員にすぐにラインしてしまいました。「もう一度聞きたい、一緒にそれを歌いたい、味わいたい」という衝動です。

運動会で我が子をビデオに収めたいという心の中には、何が隠されていますか。それはもう一度、再現して味わいたいからでしょう。その心の動き方がRepresentationの原動力なのです。

楽しかった、面白かった、感動した・・・そうしたものを子どもたちは経験すると、それを再現したいのです。本質は同じ「リプレゼンテーション」です。積み木で「ブッブー」と車を走らせたり、スカイツリーを積み木で作ったり、おもちゃの電車を走らせたり、折り紙でカブトムシやゾウを折ってみたり、RaQで恐竜を作ったり、粘土で蝶を作ったりしているのです。運動会が楽しかったから、またやってみたい。園の給食が美味しかったから、おうちでも作って欲しい。お相撲さんが強かったからまた来てもらいたい。この絵本を読んで、あの図鑑を一緒に見よう、金魚に餌をあげたい・・こうした子どもたちの衝動の源になっているのは、「再現欲求」なのです。

お楽しみ会では、そうした遊びや生活の中で「読んで欲しい、歌ってみたい、演じてみたい、話をしたい」などの再現欲求を汲み取りかがら作り上げていくことになります。大人が「絵本」や「制作」や「積み木」や「ブロック」などと手段を分類して分けておいていますが、その本質においては、いわゆる「模倣」であり「再現」を楽しんでいるという意味では同じことをしていると言えるのです。

そこで大切な事は、それをやりたいと日ごろから本当に楽しんでいることか、と言うことです。それを見てもらったことが楽しい、またやりたい、と思えるようなお楽しみ会にならなければなりません。

 

◆いい絵本、優れた物語、真性の学びへ

さて、長い遠回りの説明をしてきましたが、なぜそれを伝えたかったかというと、先に真性の体験、優れたものの体験、正統な文化体験を味わって欲しいからなのです。例えて言えば、子どもの食べ物には、いろんな添加物が入ったり合成着色料や保存料が多く入ったものは与えたくないでしょう?それと同じです。子どもが接する文化にも、まがい物は与えたくないでしょう?体にいいものがあるように、心にもいいものがあるのです。

私たちは、それをきちんと調べて探さないと、騙されやすい時代の中を生きています。千代田せいが保育園という船は、これからも、きちんとした港に寄港するつもりです。船の乗りごごちについては、アンケートを取らせていただきますが、寄港予定の港の情報もおしらせください、例えば「あの港が子どもにはいいよ」というものがあれば大歓迎です。教えてください。

 

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