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絵本(保育アーカイブ)

よい絵本ってなんだろう?

2020/08/12

◆「ちよだせいがぶんこ」の蔵書方針

今年はこの7月ぐらいの間、ずっと保育における「言葉」について考えてきました。大学生にそのテーマで15回分の資料を作ったからです。その中には、絵本などの児童文化も含まれるのですが、保育園で使う絵本の他に、お貸しする「ちよだせいがぶんこ」もあるので、絵本についての考え方を少しお話しします。絵本に関して「別冊太陽」の特集など、いろいろなものがあるので参考にしてきましたが、毎年、幼児向けの図書は3000点も出版されているので、星の数ほどある絵本の中から、何を選ぶのかは大変です。そこである程度、ロングセラーとなっているものや有名なものから選ぶことになるのですが・・・。

◆よい絵本の3条件

まず、よい絵本とはなんでしょうか? 長らく保育の世界で仕事をしてきた私としては、この質問については、次のように答えてきました。良質な絵本と言われているものは、大抵は大人が良かれと思って選んだものであり、子どもに聞いて決めたことはほとんどありません。そうなってしまっているのは、もちろん子どもに聞いてもわからないから、という事情もあります。そこで私が「よい」絵本だと思うものは、次のような特徴があります。

その1つは、まずは子どもがそれを「好む」ということです。2つ目は良質な物語(ストーリー)があり、絵本の絵や言葉が「アート」である、ことです。3つ目は大人にとっても魅力的であることです。大人が魅了されていないと子どもに伝えようと思えないからです。いい絵本というものについては、細かな条件がいろいろありますが、大きく分類すると、この3つの要素が重なり合っているように思えます。子どもにとってという視点、それから中身、内容のよさ、そして大人にとっても「これはいい」と思えること、この3要素があってほしいのです。

◆全国学校図書館協議会(SLA)

実際にどんな絵本があるのか、どうやって選べばいいか、いろいろなものを紹介していきたいと思いますが、まずは安全パイになりそうなのサイトであり、困ったときには、このサイトをお勧めしています。全国学校図書館協議会(SLA)のホームページです。ここには「よい絵本」の選定基準と絵本リストの解説が出ていて、とても便利です。

https://www.j-sla.or.jp/recommend/yoiehon-top.html

 

むかし話に学ぶシンプルな価値観

2019/12/30

テレビやマスコミがなかった頃、それぞれの村には「ただの毎日」が続いていただけでした。昔の日本人にとって、日々の時間は、太陽の動きを拠り所として、生活を営み、ただ今日が何日だろうとあまりにきしていません。その時代の生活は「安全」で「食べ物」があれば、幸せだったのです。現代のように、テレビやSNSによる情報社会では、世界中の出来事をあっという間に共有してしまいます。先ほど今年の日本レコード大賞が、フーリンの「パプリカ」に決まりました。それを観ていて、園の子どもたちも大好きな歌だということに併せて、これだけ同じ人間が同じ歌を短期間に共有してしまうことに、改めて現代の情報社会は「すごいことかも」と思ったのでした。

せわしなく過ぎていく現代社会の時間。私のように物心ついたときにテレビがない時代を知っている者は、テレビやラジオが常に何かの情報を流している場所は苦手です。静かに瞑想しながら、自分の思いと向かい合う時間が好きです。常にイヤホンで何かを聞いている若者たちの生活スタイルを見ると、全く別の人たちのように思えてきます。情報が多すぎると、なんでも受け身の頭になってしまい、自分で考えることができなくなってしまうのではないかと心配になります。多過ぎる情報を処理しなければならない時、生きていく上で「本当に大事なこと」だけに専念できたら幸せだろうなあと思う時があります。その大事なことを思い出させてくれるのが「むかし話」です。

「むかし話」には、ある種の物語のパターンがあリます。正直者が幸せになり、欲深い者は幸せになれません。その典型が「ねずみ浄土」でしょう。おじいさんが山でおむすびを落として転がって落ちた穴には、ねずみが住んでいて、おむすびのお礼におじいさんを歓待して、歌を歌ったり、餅をついてご馳走を振舞ったりします。帰りにはねずみの宝の打ち出の小槌まで贈ります。それを知った欲深い隣のじいさんも穴に入っていきますが、にゃーお、と猫の鳴き声で驚かしたりするので、ねずみはいなくなり、真っ暗な中を土を掘って外に出ようとして、欲深い爺さんはモグラになってしまうのです。

これと似た話はたくさんあって、どれも幸せは「身の安全」と「富」。それに「結婚」して幸せに暮らしましたとさ、といった話が共通しています。昔の人たちが大切にしていた生活の中の幸せです。そうしたことを思い出しながら、年の瀬の情報に触れていると、色々なことが多すぎて疲れてしまいます。

もっとシンプルに、自分で感じ、自分で考え、自分で想像する時間を持つこと。資本主義社会である限り、消費行動を誘引する情報に満ち溢れています。それに受動的に巻き込まれるままにするのではなく、どこかで「線引きする力」がどうしても必要です。そのためも、自分一人になって、染み付いてしまっている、無意識に働いている行動や考え方に気づくことも大事です。自分にどんな傾向があるのかを自己認識することにもつながります。精神性を開発する時間を意識的に作り出しましょう。それが除夜の鐘の意義に通じるはずだからです。

サンタという物語

2019/12/24

クリスマスの本来の意義から遠く離れて、日本のクリスマスは独自の文化的な道を歩んできました。キリスト教徒にとっての今夜は静かに祈る時間です。子どもへの文化的継承をその仕事にしている幼児教育関係者の多くは、このクリスマスをサンタクロースと結びつけて迎えることに、ほとんど違和感すら持たずに、それが当たり前のことのように習慣づけられているように思えます。この子たちが、幾つになるまでサンタクロースという存在を信じるのでしょうか。この時期になると毎年そう思います。そして子どもたちは、サンタクロースがもって来てくれるプレゼントを本当に楽しみにしています。

今日は「あわてんぼうのサンタクロース」からのお手紙も最後でした。それによると、明日のクリスマス会に来ると書いてありました。そこでエントランスの金魚がいるあたりに、クリスマスツリーに見立てた手形ページェントを飾りました。みんなで成長をお祝いしたい、みんなでサンタをお迎えしよう。そんな意味を込めた装飾です。

私たちはこの時期に、毎年新しいおもちゃを加えるのですが、それはサンタクロースがもって来てくれます。またご家庭へもって帰って家族で遊んでもらいたいプレゼントもあります。今年はお楽しみ会で「神田囃子」に触れたので、獅子舞をモチーフにした制作キットです。親子遊びのひと時に使ってみてください。

 

絵本ゾーンが1階に

2019/12/16

お待たせしました!やっと絵本コーナーができました。カーペットは1階のテーマカラーである赤に合わせ、本棚は壁と同じ白にしました。早速、利用していただき嬉しいです。これから絵本を充実させていきます。もし、ご家庭で寄付してくださる絵本があったら大歓迎です。絵本が増えてきたら、貸し出しも始めます。藤森平司ライブラリーもどこかに設ける予定です。もうしばらくお待ちください。

ラグビーは究極の鬼ごっこか?間中ムーチョさんと会う

2019/10/22

◆運動会は「鬼ごっこのある町ちよだ」事業のスタート日

今週末26日の運動会は、ラグビー日本代表が準決勝を戦う前日になるので、ラグビーを取り入れようと思っていたのですが、残念ながら南アフリカに負けたのでどうしようかなと思っています。でも子どもたちにも、私のような大人の「にわかラグビーファン」熱が伝わってきており、それらしい遊びをする姿が見られます。先日、いずみこども園の運動会で、千代田区の山内係長と話していたら、「そうか!」と思いました。今後の運動会は、Let’s2020「鬼ごっこのある町ちよだ」事業のスタートアップ行事になるのですが、その話の中で、係長がこうおっしゃたのです。

「ラグビーは究極の、鬼ごっこですよ」

確かにそうですよね。トライを目指してタッチラインめがけて、猛烈に走っていく姿。フェイントをかけてタックルをかわしながらステップを踏むラガーの走りは、鬼からのタッチをくぐり抜けて逃げる子ども、さながらです。もちろんボールやスクラムがあったりと、鬼ごっこにはない要素がかなりありますが、どうも基本となる運動は「鬼ごっこ」なんだなと、納得します。

山内係長には、運動会当日に来てくださいすが、私が「千代田区の公園に行くと、子どもたちが陣取り合戦などの鬼ごっこがいつも見られますね、といわれる町にしたいんです」と伝えると、「サッカーにしても何にしても、鬼ごっこは運動の基本ですからね」と応えてくださりました。

◆即位礼正殿の儀「世界の平和を常に願い、国民に寄り添う」

今日22日は、天皇が「即位礼正殿の儀」で内外に即位を宣言されました。ニュースでは「国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら」という「ことば」に注目が集まりました。今ちょうど海外の来賓を迎えた晩餐会が開かれています。明日のバラエティ番組では、どんな料理だったのか想像たくましく伝えられるでしょう。私も非常に興味があって、何を日本の代表的な味として提供するのか、日本人として知りたいからです。多分、どこで取れた食材かは秘密にされるのでしょうね。海幸、山幸の日本では、もったいない情報なのですが。

◆日本の文化を支えている土について

日本の文化は、あまり言われないのですが、私は「土」が色々なことの決め手になっていると考えています。土があるから生態系も成立します。微生物が生きているからこそ、泥ではなく土になります。腐葉土が積み重なった豊かな土が美味しい野菜や果物を育てます。樹木が根を張る土が山を守り、その土が雨水を貯めて天然の貯水湖となり水害を防ぎます。土の質が土器や陶器の質を決め、表土が気温の調節も担ってきました。山の土に含まれる養分が河川を通じて河口に流れ出て魚介類の生態を育みます。これらのどれもが、今、危機に瀕しているのが日本の国土です。どうしましょうか。放射能の汚染までが土に新しい課題をもたらしています。その土が叫んでいる絵本と昨日、出会いました。

◆海老原商店の原画展から

タイトルは『にんげんさまへ』

絵と文は、女性絵本作家の、間中(まなか)ムーチョさん。初めての絵本作品で、今年2019年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展に入選している傑作です。絵本の帯には「おれたち山はにげらんねえぞ どうしたらいいんだべか?」とあります。茨城弁の絵本です。昨日から園のすぐぞばの海老原商店ギャラリーで、この絵本の原画展が開かれています。昨日の夕方、海老原さんが、この絵本を持ってやってこられたので読んだのですが、素晴らしい! 慟哭の絵本! 山の叫びに心が揺さぶられました。

そこで今日の夕方、海老原ギャラリーへ足を運ぶと、なんと間中さんご本人が、読み聞かせてくださいました。なんとも、やさしい口調でした。昨日黙読した時は、男性の叫び声のように想像したのですが、違いました。今度、皆さんに園長解釈の読み聞かせを、コーヒータイムにやってみたいと思います。

「にげられないのは、山だけではねえんだども・・」

織姫と彦星のはなし

2019/07/06

■七夕会

5日金曜日には、七夕会がありました。彦星と織姫の話を、子どもたちにどうやって伝えようかと考えた末、プロジェクターで紙芝居をすることにしました。子どもたちが作った七夕飾りをクラスごとに紹介しました。ファンタジーを好む幼少期には、彦星と織姫の話は、大好きなお家の人と出会う喜び、離ればなれになる寂しさといった気持ちを感じる物語になります。現在にまで、この物語が残っているのは、どこかに普遍性があるからでしょう。行事の様子は、詳しくはブログ「行事」で。
昼食は「天の川」に見立てたカレーライスです。3時のおやつもファンタスティックな冷たいゼリー。調理スタッフの愛情を感じました。

パン種とタマゴ姫

2019/07/01

6月30日

■好奇心旺盛な子どもはお出かけが好き

アウトドア派か、それともインドア派か。皆さんはどうですか。アウトドア派にとっては登山や海水浴、キャンプなどの季節が来ますね。私は積極的なアウトドア派ではありませんが、子育てには「アウトドア派」が向いているかも?と思うことがあります。どうも子どもがやりたがるとこは、外の方が多い気がするからです。生まれつき好奇心が旺盛な子どもは「お出かけ」が大好きですよね。
■パン種とタマゴ姫
昨日の日曜日は、私も「園児」と一緒に「お出かけ」しました。5月に出かけた三鷹の森ジブリ美術館ツアー第2回目でした。保護者のみなさんと出かけたバスツアーです。前回の映画は「くじらつり」でしたが、今回は「パン種とタマゴ姫」。この美術館でしか見られないジブリオリジナルの短編映画は現在10作品になりましたが、最初にみた「ちゅうずもう」以来、このアニメ・シリーズが大好きです。
■アニメーションとの新たな出会い
何がいいかというと、一枚一枚の綺麗な絵(それだけでも素晴らしい作品です)が「動き」「音が出る」とこんなにも「すごいことになる」というマジックのような不思議なアニメーションの面白さの原点を味わえるからです。
もともと美術館全体のコンセプトがそれなので、1階の展示でアニメーションの仕組みの不思議さを体験してから、映画アニメを観ると、その内容や物語の面白さもさることながら、「それを表現しようとして、そう描いて、そう動かすんだ!」というのが見えてきて、新たなアニメーションとの「出会い」が起きたのです。
■「あ、そうだったんだ」が面白い
その「気づき方」が、保育で子どもと接する時の「気づき方」になれたらいいなぁ、と思います。「◯◯ちゃん、すごいよね」って気づく発見。「あっ、そうだったんだ」っていう気づき。その面白さ。それが保育の面白さの原点じゃないかなぁ。そんな子どもとの新しい出会いがある毎日にしたいです。

タンポポの綿毛

2019/04/23

4月23日その2

【たんぽぽ】
先週、歩道橋を渡って柳原通りを散歩していた時、街路樹の根元にタンポポを見つけた話は、先週お伝えしました。その時、Aくんが、しゃがみ込んでにっこり微笑んで、綿毛を見つめていました。私はその食い入るように見ている姿から、それを保育園でもじっくり観察できるようにしてあげたい、そう強く思ったのです。 この私のモチベーションは、目の前の子どもの姿から動き出すものであり、指導案から動き出すものではありません。どの子にも体験させたいカリキュラムが先にあるのではなく、一人ひとりのその子にとって、切実な課題やテーマから動き出すものです。私が考えていることに誘導するのではなく、子どもが見つめているその先に、私の興味も向けるのです。具体的には、たんぽぽの綿毛です。
【選択】
朝早く、近所の公園から、花の状態のものや、これから綿毛になろうとしているものなどを採取してきました。本来なら、散歩先から保育園に持ち帰ってくればいいだけのことですが、それがままならない環境にあるから、ちょっと工夫が必要です。たんぽぽの綿毛をドライフラワーにして、透明な瓶の中に入れれば、いつまでもじっくりと観察できます。今日はそのやり方を見てもらいました。ゾーン遊びの一つとして、私の絵本による説明と綿毛観察を、やってみたい子だけが選択しました。
【綿毛が開いた!そして・・・?】
お昼寝から目覚めた頃、ビンの中で綿毛が大きく開いていました。それを発見したAくんの喜び様といったらありません。絵本と見比べながら、この綿毛がどうやったらまた黄色いタンポポの花になるのか、彼の興味は今日、そこにたどり着きました。綿毛はたんぽぽの種の集まりです。そこからどのように根が出て芽が出るのでしょうか。私もそれを見てみたいと思います。(ひらがなのたんぽぽ、カタカナのタンポポ、どちらも捨てがたいので両方使わせてもらいます)

「令和」元年の入園式

2019/04/01

【地域に根ざした保育園をめざして】

(園だより「巻頭言」 2019年4月1日発行)
ご入園おめでとうございます。いよいよ園生活のスタートです。4月から仕事を始めるにあたって初めて子どもを保育園に入園させる方、仕事は継続中だが他の保育園などから転園される方、いろいろなライフストーリーの中で、入園は皆さんのご家庭にとって、一つの大きな節目になることでしょう。私たち職員にとっても、できたばかり園舎での生活ですから、正直なところ、どんな生活が始まるのか、楽しみであると同時に、まだまだ見通せない面もあります。ただ昨年11月の開園説明会や2月の入園説明会でお伝えしてきたように、子どもたちが保育園生活の主人公です。この町が故郷になっていく子どもたちにとって、何がふさわしい経験や環境になるか、皆さんと一緒に楽しい生活を作り上げていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

ところで、千代田せいが保育園の住所は、神田岩本町15番地7です。神田須田町二丁目がすぐ隣です。保育園は4月から岩本町三丁目町会に入会します。皆さんはご存知なのだと思いますが、昭和通りができる前までは、保育園のある場所と、通りを挟んだ東側とは、同じ町会だったそうです。現在は昭和通りによって園のある場所が飛び地のようになってしまいましたが、柳が昔並んでいた柳原通りは東西に長く繋がっています。保育園が所属する町会は岩本町三丁目町会なのです。訳して「岩三」と呼ばれるこの町会は「既製服問屋街発祥の地」で、高度経済成長期には、ここから全国のデパートへ既製服がどんどん出荷されていたそうです。さらに歴史を遡ると、江戸時代には古着市が開かれていました。今風に言えば「メルカリ発祥の地」でもあるのです。

こうした専門問屋街が江戸城下町にまで遡る下町文化だとすると、その風情を少しでも感じてもらえたら、と園舎を「蔵」のイメージにしたのが、私の上司にあたる統括園長の藤森平司です。藤森は今川中学校出身で、幼少期を鳥越神社のそばで過ごしました。この地に私たちが縁をいただいたのも、それが決め手です。江戸っ子は「喧嘩っ早いが涙に脆い人情家」「いきでいなせで、細かいことにはこだわらない」と言われます。藤森も「話はぶっきら棒に聞こえるが、本当は優しい人が多い」とよく言います。

4月6日(土)には、藤森統括園長が保護者の皆さんに講演をします。アフリカのことわざに「一人の子どもが育つには村中の人が必要」というのがあります。私が好きな言葉です。いろいろな視点で保育を語っていきたいと思います。この巻頭言の他に、ホームページの園長の日記も併せて読んでみてください。

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