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保育アーカイブ

ミミズが作る土がバケツ2杯にも

2020/09/08

子どもたちに自然を体験させたいのですが、森や林や里山が近くにあるわけではないので、どうしても自然の一部を断片的に体験するしかない、という限界があります。でも、その一部分であっても、子どもたちが、好奇心や探究心を持って関わっていくことができるようにすることができれば、ただ自然の中で遊ばせるだけよりも、もっと素晴らしい保育になります。

その1つに「ミミズによる土づくり」があります。幼児クラスの子どもたちの中には「ミミズの餌やり」をやったりみたりしている子がかなりいます。ミミズが野菜クズなどを食べてせっせと作り出している土が、バケツ2杯になりました。実はミミズが土をつくていることを最初に研究したのは、チャールズ・ダーウィンです。その話はまた次回。

 

コスモスとスズムシが届ける秋

2020/09/07

関東にも警戒と俄雨をもたらした台風10号が去った今日7日、玄関の花壇に子どもと一緒にコスモスを植えました。各フロアでも楽しみます。

そして今日は、スズムシを各フロアで飼いはじめました。にこにこの子どもたち、わらすの子どもたちに、それぞれ目の前で「飼育箱」を作るところから見せました。

どんな都会でも少しの草むらがあれば、スズムシやコオロギの鳴き声が聞こえてきます。街路樹の下や小さな植え込みなどにも、しっかりと秋が届いているようです。

夕方、東京港に虹がかかりました。

 

 

保育園を支えてくださる地域の方々

2020/09/06

9月は上半期最後の月ですが、その第1週目は秋にむけた地域挨拶回りをしました。園の前の「柳原通り」は、江戸時代からある由緒ある通りでです。神田川沿いに蔵が並んでいた時もあるので、当園の風貌が蔵のイメージなっています。この通りの歴史に詳しいのは「岡昌ボタン裏地店」三代目店主の岡昌さん。散歩の時は必ず寄らせてもらっているので、子どもたちもよく知っています。時々マスコミにも取り上げられる有名人です。

そこから数件手前の海老原さんは、歴史的建造物として見学者が絶えない海老原商店の所有者ですが、保育園の活動を支援してくださるパートナーです。鍼灸整骨院TAIUを経営しています。ダンサーの青木さんとも、この海老原商店で知り合いました。また昨年のお楽しみ会で「お囃子」を演奏してくださった「神田柳囃」代表の和田さんは山崎パンの和田商店の方ですが、海老原さんに紹介していただきました。

毎週、絵本を読み聞かせに来てくださる福田さんもその近所にお住まいです。ボタン屋さんの先には株式会社アップルのビルがありますが、その社長さんが隅田町2丁目町会の会長である斉藤さん。今年の納涼会「スダッツ2」はコロナのために中止になりました。斉藤会長にお願いして、近くビルの上を散歩コースに入れていただき、新幹線が走る姿を高架の「上から」見せてもらう予定です。

そして神田川を挟んだ向かいの和泉橋出張所の所長さん。昭和通り側のビルにお住まいの石渡さん、そして昭和通りを超えて続く柳原通り沿いに岩三町会長。今週はこれらの方々に、10月以降もこれまでと同様に、保育園の活動を支えていただくように挨拶して回りました。

 

絵本の読み聞かせ

2020/09/02

静と動、集中と発散。絵本は静と集中にもってこいの贅沢なひと時です。今日2日(水)は先週に続き福田さんによる絵本の読み聞かせの会が開かれました。

毎日繰り返される園生活の中には、絵本を読んでもらうのにふさわしい時間帯というものがあります。例えば午前中のお集まりの前後、ひと遊びした後のお昼ご飯の前、あるいは食後の一時、お昼寝に入る前の一時、夕方のお集まりの前・・・。そうしたいくつかの絵本タイムにふさわしい時間の中で、今日は午後のおやつの後の時間になりました。

2歳児はおやつが済んだ後にクラスの丸いテーブルのあたりで、3歳以上の子どもたちは3階の運動ゾーンで行いました。子どもたちが選んだ絵本は・・

2歳にこにこ組 「おばけなんてないさ」「せんろはつづく まだつづく」

3歳わいわい組 「ねずみさんのながいパン」「じゃがいもポテトくん」

4歳らんらん組 5歳すいすい組 「おとうさんはウルトラマン」「アリババと40人のとうぞく」

そのほか、2歳では子どもから「パンやさん」のリクエストもありました。

 

能は飛び出す絵本だった?!

2020/08/31

能や狂言は、大人の絵本だと思って見てごらん、と学生に語ったことがあります。物語の内容にそれほどの差異はなく、舞台芸術か紙媒体かという違いはあっても、能は飛び出す絵本のようなものだよ、そう思って見たら、とても面白いよ、と。

能の物語の中で、この世のものではない幻想性を背負って登場するのがシテであり、その物語を可視化してくれるものがワキの役割ですから、絵本はその製本と編集の中にワキと同じ役割があるのかもしれません。

そんなことを考えてしまったきっかけは、物語の中に潜む「日本らしさ」を調べていた時です。子どもに読んであげたい絵本を紹介しているものの中に、必ずといっていいほど登場する「さんびきのやぎのがらがらどん」と、柳田国男が日本のオリジナルな物語だと思い込んでしまった「大工と鬼六」が、実はどちらも同じ北欧の伝説に起源を持ちます。

論文「大工と鬼六」

子どもたちがお話の中に引き込まれていくのは、「次はどうなるんだろう」というワクワク感、ドキドキ感があるのが大きいのですが、大人になると「子ども騙し」では本気になれないので、大義や正義や手の込んだミステリーや圧倒的な力の張り合いなどを必要とします。

横浜で今、展覧会が開かれていますが、私はバンクシーの絵が、良質な絵本の物語のあり方に最も近いものを感じます。「あ、絵本を紙じゃなくてストリートにしたのか!と」。ちゃんと時間が止まっていて、絵を(言葉じゃなくて)読むことができて、その気づきまでの間が楽しい。

きっと印象派が登場した時のセンセーショナルな新鮮さは、こんな感じで当時のタブーに触れていたのかもしれないとさえ、感じます。そして、この新鮮さに似た面白さを子どもたちは絵本の昔話に感じてほしい。子どもは本来的に、そんな風刺的センスをもっていて、それを楽しんでいるなと感じるからでもあります。また、狂言のようなおかしみのセンスも持ち合わせています。そんな言葉と表現の感性をくすぐるような、絵本との出会いの時間があったらステキだなと、最近考え始めています。

いい絵本やお話が想像力を豊かに

2020/08/29

私たちは、この子どもの想像力が作り出している物語に気づくことができるといいのですが、そばにいてもそれがわからないことが多いものです。そばにいる子どものことでさえ、紡ぎ出している「物語」の内容を知ることが難しかったりするのですが、さらに知ることが難しいかもしれないのは、私たち自身が、知らない間に、大きな物語の中の「役者」になっていることです。

◆ライフサイクルの物語

たとえばーー。自分や家族のために努力して生きてきた人たちが、我が子の子育てを終えて、自分の仕事もリタイアしたとき、次世代を担う後継者の育成に力を入れたり、あるいは孫や他人の子どもの教育に「人生最後の情熱」を傾けようとする姿に出会います。

この世代間のバトンタッチもまた、人間だけが見せる「文化」の一つかもしれません。しかも世代から世代へと後戻りしない前進です。それまでの功績や遺産を後世に受け渡していくので「文化の累進的進化」といわれています。

紐を締める工具に「ラチェット」というのがあります。カチャカチャとハンドルを回すと紐がピーンと締まるのですが、手を離しても歯車は戻りません。そこから、後戻りしない前進を「ラチェット効果」といいます。これが人類の文明の前進力になっています。

現役の時は同世代と熾烈な競争を演じるのに、その戦場から退くと、次世代には今の世代を乗り越えていってほしいと願うようになるのは、面白いですね。

ところで、競い合いの舞台から降りて初めて、自分を客席から眺めてみて気づくことがあるのです。「あのガムシャに勉強し、競い合わざるを得なかった市場原理とは、いったい何だったんだろう?」と、今になって冷静さを取り戻すわけです。ただ、もっと早く、その市場から撤退して生きている人も増えている気がします。私たちは経済成長という物語から逃れられる方法を発明しなければなりません。

◆いい絵本やお話が子どもの想像力を豊かにする

文字がまだない時代。旧石器時代から伝わる口承文化には、人生とはなんたるものか、ということを物語で語り明かしてくれます。人生の大先輩が子どもに語り聞かせておきたいと願ったものが、綿々と受け継がれてきたもの。それが昔話でした。人生の最後の情熱が昔話を語ることだったと考えると、その内容に目を凝らしたくなります。

そうだったからこそ、言葉を聞いて意味が分かり始めるころ、昔話を聞かせてもらうことは、再現衝動の中で生きる子どもにとって、紡ぎ出す遊びも豊かにしていたはずです。絵本を読んであげたい理由はこの辺にもあります。

昨日、2歳の子どもたちが取り合ったウサギの話をしましたが、それに投影された子どものイメージがあるはずで、そのイメージは、良質な物語に接することで、また違ったストーリーになっていくのでしょう。子どもたちのウサギが必要になった物語を想像しながら、どんなお話で彼らが生きる世界を用意してあげたらいいのか。それを考えることも「環境を通した保育」に違いないのです。彼らにふさわしい昔話というものがあるかもしれません。

物語の中で「気」が躍動する

2020/08/28

園だより9月号「巻頭言」の続きです。

このところ、絵本や昔話に関する話を語ってきましたが、次のような物語に、似ているものを見つけました。2歳の子ども同士の「人形の取り合い」を生じさせる物語と、ライフサイクルの最終段階になって気づく人生の物語です。

◆2歳の子どもの物語

25日(火)のことでした。午後2時過ぎから30分ほど、午睡中の2歳児クラス「にこにこ組」で担任とミーティングをしていました。そのとき、子ども2人が、私たちのそばで、パズルをして遊んでいました。傍らで見ていると、仲良く遊んでいた2人ですが、突然、お気に入りのウサギの人形を独り占めしたくて、取り合いになります。

なぜ、ついさっきまでは誰も気にとめてもいないその人形が、突然、2人にとっては、一歩も譲れない「わたしのもの」になるのでしょうか。

それは一重に「想像力」の力なんだと思えます。

想像力とは、目に見えないものを思い浮かべることができる力のことですが、そのウサギの人形が、それまでの人形ではなくなり、それぞれの子どもにとって、何か特別な、魅力的な、といってもいい、それじゃなくちゃダメな、何かに変貌したのです。その「何か」は、それぞれの子どもの想像力によって生まれたものです。

◆「気」が変幻自在に物語を動き回る

これを興味や関心が「向いた」という言葉で語りたく「ない」のは、自我と対象を律儀に遠ざけてしまうような言葉遣いに感じるからです。そこで日本語は、「気」という言葉を上手に使い分けます。2人はウサギが「気に入った」のだと説明します。この「気」は子どもからウサギに入ったのか、それともウサギから子どもへ入ったのか、どっちなんでしょうか?

子どもと物との関係を「気」で表す日本語。このテーマに深入りするのは避けますが、ここでは、その気にさせたものはなんだったでしょう? 私はそれは「物語」だと考えています。ウサギが二人に想起させたもの、それは二人が何かをストーリーの中を生きている時に、そのウサギと出逢ってしまったのでしょう。

こんなことができるのは、人間だけなのですが、そばで見ていて、それは一瞬で終わってしまったショートストーリーでした。そして、2人がどんな「物語」の中を生きていたのかわかりませんが、それぞれの遊び始めたストーリーの中で、どうしてもそのウサギには登場してもらわないとならない主役に変わったのです。だから「取り合いになった」のでしょう。

人は物語の中で生きている

2020/08/27

園だより 9月号 巻頭言より

子どもが物語の中で生きるようになるのはいつ頃からなのでしょう。

この数カ月間、子どもがどのように言葉を獲得していくのか、そのプロセスをいろいろ調べてみて分かったことは「多くの謎はまだ解明されていない」ということです。人間はなぜ言葉を操れるのか? どうやって言葉を使いこなすようになったのか? このことは、まだ分からないことがたくさんあるということがよくわかりました。私たちは、子どもが話せるようになることなんて、当たり前のことだと思っていますが、「どうして」とか「どのように」を解明しようとすると、今なお謎だらけなのです。

その上で、さらに当たり前のように見えて、子どもたちが「絵本」や「お話」に目を輝かせて見入る、聞き入る姿を見ていると、「物語」というものが持っている力の凄さを感じます。子どもたちが、こんなに物語の世界に没頭できるのは、どうしてなのだろうか、と。言葉の獲得と同時に「ものがたる」ということができるようになって、さらに絵本などのお話の世界が面白くてしょうがないといった子どもの姿に接していると「物語のある生活」というものが、保育の大きなテーマとして浮上してくるのです。

ところで、人生という言葉は、すでにそれが物語であると宣言しているように聞こえませんか。人生は旅であり、生きること自体が物語です。人はそれぞれ、どんな物語を生きるのでしょうか。その長い人生航路の船出が幼少期だとしたら、彼らはこれから青年になり、大人になり、大海原で荒波に遭遇し、幾多の試練やドラマの果てに、年老いてまた港に戻ってくるのでしょうか。保育園の子どもたちは、まだ港に泊まっている状態でしょう。出航を夢見るようになるまで、先人の経験談をたくさん聞いたり見たりして、憧れている時期なのかもしれません。こんなに物語を好むのは、これから起きる出来事を先取りして楽しんでいるかのようです。

児童文学者によると、昔話もそうですが、児童文学の物語には2つの基本形があります。1つは主人公が出発して帰ってくる「出発・帰還型」(たとえば「うらしまたろう」や「スターウォーズ」)と、もう1つは見知らぬものがやって来て、しばらく滞在して最後に消えていく「来訪・退去型」(たとえば「かぐやひめ」や「未知との遭遇」)です。大抵の物語はこの2パターンを踏襲しています。このパターンは人生そのものです。私たちは生まれ、冒険し、成長して帰ってくる(行く)のです。どこから、どこへ?それだけは永遠に謎のままです。もしかすると、物語はその謎の答えを、例示してくれているようにも見えます。いろいろな絵本があるように見えて、実は人生の縮図が物語なのかもしれません。

そうだとしたら、冒頭の問いは、質問の仕方を間違っていました。私たちは生まれる前から物語の中を生きており、始まりと思えた地点は、実は別の物語の終わりだったのかもしれません。ネバーエンディングストリーはファンタジーではなく、ノンフィクションなのかもしれませんよ。

福田さんによる絵本の読みきかせ

2020/08/26

絵本の読み聞かせのボランティア活動を長らくされている福田旺子(あきこ)さんが、園児のために絵本を読んでくださいました。今日読んでくださった絵本は、4〜5歳には『くらやみこわいよ』と『まっくろネリノ』。2〜3歳には『まっくろネリノ』と『しゅっぱつしんこう』。子どもたちは、初めてお会いした福田さんのお話に、ちょっと改まった面持ちで見入っていました。そして「面白かった」「また読んで」と大好評でした。

福田さんは、25年にわたり、保育園や幼稚園、小学校の他、図書館やブックセンターなどで絵本の読み聞かせをなさってこられました。保育園のお近くにお住まいなので、今後も定期的に来ていただき「読み聞かせの会」を開いてくださることになりました。さらにお持ちの絵本を「千代田せいが文庫」に寄贈していただきました。いい絵本ばかりです。保護者の皆さんとも分かち合いたいと思います。

 

再現遊びとしてのダンス

2020/08/24

今年の運動会は「コンテンポラリーダンス」のテイストを含んだ「親子運動遊びの会」になります。10月24日(土)の午前中に、和泉小学校体育館(昨年度と同じ)をお借りして、完全入れ替えの2部制で実施します。親子運動遊びにダンスを取り入れることになった経緯は8月8日付のこの「園長の日記」でご紹介しましたが、今日24日(月)は、青木尚哉さんを含むダンサー4人に来園していただき、2歳児にこにこ組、3歳わいわい組、45歳らんすい組に分かれて、体を動かして遊びました。三密を避けるために、それぞれ30分、40分、50分ずつ、2階と3階を使っての運動です。ずっと録画しながら見ていて、次のような感想を持ちました。

私たちは「ダンス」というと、音楽やリズムに合わせて、予め決まっている振り付けに合わせて体を動かすというイメージがあります。型があって、それを真似して身につけ、正確に再現できると「上手」となるようなダンスです。体がその振り付けやリズムに合わないとダンスが「下手」ということになってしまいます。これでは、それが「できる」子どもでないと楽しくありません。

青木さんのグループが目指しているダンスは、その真逆です。例えば、身体をマネキンのような素材として動かしてみるという「ポイントワーク」は、10 カウントの間に「10回だけ動かしてみる」型はあっても、その制限の中で、その子なりの自由な発想や想像力が引き出されていくような楽しさがあります。紙が丸められたり、くしゃくしゃになっていくのに合わせて、体を小さく縮めてみたり捻じらしてみたりするのです。先にイメージが動いて、そのあとで体が動き出すという順番です。そのイメージの想起力がこのダンスの決め手です。この心の動きは「再現遊び」と同じですから、ごっこ運動といってもいいかもしれません。

これを「お絵かき」に例えると、描く対象物にそっくりで写実的なら「上手」と評価されるような絵ではなく、それぞれの心に思い描かれた像(イメージ)を形と色で自由に表現してみるような絵です。その描きたいという意欲を大切にしながら、思い浮かべたイメージの通りに描きたいというモチベーションが結果的に表現スキルも高めていくようなアプローチです。

このように、保育の原理と同じだなと感じたのは、子どもの身体の動きは心の動きと連動しているが故に、まず子どもの意欲や動機に働きかけることから始まることです。動物の絵を見たり、録音された動物の鳴き声を聞いて、動物の動きを真似してみることが「ダンス」になっていきます。NHKの「おかあさんといっしょ」の「ブンバ・ボーン!」や「からだ☆ダンダン」などの「体操」と何が違うのでしょう。きっと、それは「振り付け」をみてただ真似するよりも、個々が思い浮かべる「イメージ」の想起が、動きの起点(スタート地点)になっていることです。つまり表象としてダンスなのです。再現欲求に働きかけるようなダンスと言っていいでしょう。

運動会では親子でこれを楽しみましょう。練習は全く不要。必要なのは柔らかい頭の方かもしれませんね。ところで今日は全国各地で2学期が始まりました。短い夏休みを惜しむように、今夜、東京でも花火が上がりました。

 

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