MENU CLOSE
TEL

2021年 8月

真夏のダンスの向こうに江戸情緒を感じよう

2021/08/03

今日は7月に続き、今年2回目となるダンスの日。青木さんと芝田さんがいらっしゃって、乳児から幼児まで全クラスで体を動かして遊びました。

いま「ダンスの日」と言いましたが、実は青木さんは「ダンスと言うと、その言葉のイメージに引っ張られてしまって、意味が狭くなってしまうよね」と話されています。青木さんの活動は、ダンスの枠を超えて「身体」そのものの可能性を、いろいろな世界に切り開くような営みを探究されています。園の生活の中では「楽しく体を動かす」としかいいようがありませんが、でも、ただ動かすというのではありません。動き全体をデザインしつつ、子どもから生まれてくる創造力を上手に引き出していきます。

例えば今回もいくつかの新しい試みがあったのですが、その一つは「わらべうた」の導入でした。わらべうたは、日本に昔から伝わる児童文化財です。「い・れ・て」「い・い・よ」もわらべうたなのですが、「い・れ・て」(ソ・ファ・ソ)「い・い・よ」(ソ・ファ・ソ)のように、シンプルな音階と休符からなり、会話と音楽を繋ぐような位置にあるのですが、併せて身体遊びと密接に結びついています。

今日の「にこにこ」(2歳)で見られたのは、「おふねがぎっちらこ」です。大人が膝を伸ばした両足の上に、子どもが向かい合ってまたがって座ります。そして、手を持ち合って「ぎっちらこ、ぎっちらこ、おふねがぎっちらこ」と、前後に体を揺らします。最後にブルブルと膝を揺らして揺さぶってあげると、子どもは大喜びです。

わらべうたは、簡単な音階とリズムなので、子どもは自然と覚えてしまいます。しかも、この種類のわらべうたは、体も一緒に動かすので、記憶に残りやすく、言葉、リズム、メロディ、体の動き、動感などが快感とセットになって、いわば身体に染み込むのです。皆さんも、なべなべそこぬけ、とか、ずいずいずっころばし、とか忘れずに覚えていることでしょう。実際のところ、これを「ダンス」と呼ぶよりも「わらべうた遊び」そのものです。しかし、この「わらべうた」がアートに変わっていく瞬間を目撃しました。それは、らんすい(4歳5歳)で「わらべうた」をやった時です。

今年はダンスにわらべうたを取り入れたい、と青木さんにリクエストしたのですが、早速、オリジナルのわらべうたを用意してくださいました。それが「鬼さん鬼さん、何するの?これするの、これするの」というものです。小学生向けのインプロ・キッズ(インプロビゼーションは即興の意味)を、幼児向けの「わらべうた」にアレンジした青木さんのオリジナルなのですが「これするの」のところで、即興的に体を動かしてみるのです。子どもたちはそれを見て、2回目の「これするの」の時に真似して一緒にやります。

この即興による身体表現の「瞬発力」は、自分の中に引き出しをたくさん用意して、それを再現する場合と、全く何も考えず(用意せず)に、その瞬間に何が飛び出してくるか、自分自身も楽しみなっていく場合があるようです。その表現の生み出し方はまさしくアートですね。そして、問いと答えという言葉の意味、身体で答える表現、語りのようなメロディとリズムと間(ま)。遊びの中で、子どもたちは知らない間に、四分音符と休符からなる日本的リズムという音楽的素養も身につけていきます。

こんなことをプロデュースしながら、幼児教育としての身体活動遊びを繰り返していくことで、子どもたちには「自然の営みとしての身体を取り戻していく表現者」に育っていってほしいと願っています。それは本当の健康や幸せに通じるからです。そして江戸情緒など、日本的な文化へ感覚も身近なものになってほしいと思います。

さて、今日はさらに、保育園に素敵なお客さんがやってきました。カナヘビくんとカマキリくんです。ある保護者の家で飼われていて、夏休み間しばらく保育園で過ごします。カナヘビくんは北の丸公園に棲んでいました。

好物は虫ですが、よく水を飲みます。そんなカナヘビくんのことを、まずよく知ろうと、小林先生が用意した動画を見ながら子どもたちは上手な飼い方を勉強です。観察ゾーンにやってきたカナヘビくん、どうぞよろしくね。

連日暑い日が続いています。夕方にはすいすい(年長)の子たちが玄関前の歩道で「打ち水」もしました。クーラーも冷蔵庫もない江戸時代、この柳原通りの夏は、打ち水や柳ごおりが「夏の涼」を演出していました。

 

和泉小学校で講演

2021/08/02

「困難さは私たちの意識と環境が作り出している? 〜障がいという概念を超えた保育を目指すために、子どもの特性理解を深めよう」。私はこの数年、こんなタイトルの講演を幼稚園や保育園の保育者向けに何度か行ってきたのですが、その話を聞きたいとおっしゃって、私を講師として校内研修会を今日開いたのは和泉小学校の村田悦子校長先生です。

「障がい」の定義の歴史を見ると、国と時代によって大きく変化してきました。しかもその判断をするのは医師ですが、その基準は国際機関や医学会が制定します。その代表格は米国精神医学会(APA)が編成する「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM-5)です。

私はその経緯を詳しく調べたことがあるのですが、純粋な科学的議論だけとは言いがたく、その国の保険制度や医薬業界の意向、当事者の会など関係者による活発なロビー活動を伴う政治力学が強く働いています。日本はDSMに比較的忠実に従うのですが、その扱い方は国によってもかなり違います。一言で言うと、この基準や診断で、その人のありようを決定してしまうかのように社会的な支配力を持つことに、私は強い懐疑を抱いてきたのです。

もう一つ、深い疑念を呼び起こす原因となっているのが「障がいの特性は環境因子によって変わる」という事実です。それは保育実践の中で強く感じてきました。そして私の懐疑が過剰ではなかったことを、今世紀になって世界保健機構(WHO)が証明しました。例えば「国際生活機能分類」です。それによると、健康とは「個人因子」だけで考えるのではなく「環境因子」も加味して、社会参加できれば、障がいとはならないと定義変更されたのです。

私たちは、医学モデルから適切な距離を取るべきなのです。環境への不適応は、個人の特性か、それとも環境の方に原因があるのか、あるいは相互作用なのか。私は食物アレルギーがあっても、それは障がいではなく除去や代替食があれば環境に適応できることを例に挙げ、環境いかんでは、障がいという医学モデルから社会モデルに移行できるものもあります。その可能性を広げるように追究するべきだと考えています。

それぞれの「おとまりのひ」

2021/08/01

2021年の7月の締めくくりは年長さん(すいすい組)のお泊まり会でした。世の中はコロナ禍の中の東京オリンピック2020の中間地点。日本の大活躍に喜んでいる方がたくさんいて、その一方で、感染力の強いデルタ株が感染爆発を引き起こし、政府が緊急事態宣言の対象を広げたり期間を伸ばす決定をしなければならない状況になっています。

そんな中で、たった一つの保育園の行事とはいえ、子どもたちが準備をして、期待に胸を膨らませ、わくわくして待っていた活動をなんとか実現させたいので、換気などの感染対策を怠らないようにしてお泊まり会をやりました。

世の中の不安定な状況を、子どもたちには1ミリだって感じさせたくないので、いつもと変わらない楽しい生活をいっぱい詰め込んだものになりました。「さあ、これからお泊まり会だね。いつもと何が違うのか、にゃん」。11ぴきのねこの「どらねこ大将」と一緒に、始まりの会はスタート。アイス作りがあることや、夕食は自分たちで話し合って決めたメニューであることなど、目をキラキラと輝かせながら説明してくれました。

ベランダでの色水遊びは、ペットボトルや製氷皿、スポイドなどを使って微妙な「色の変化」を試していました。外は曇り時々雨というあいにくの天気でしたが、水着にその後のアイス作りででは、みかん、パイナップル、もも、ぶどうなど好きな果物を選んだオリジナル。園の冷蔵庫でカチカチに凍らせて夕食の時に食べます。その後、ビーズでの制作遊び。いろんな形や色合い、デザインにこだわりを見せてくれます。

おやつの時間の後は、お手紙探し。小林先生が大好きな絵本『きょうはなんのひ?』(作:瀬田貞二・絵:林明子)が、ベースになっています。瀬田・林の絵本といえば『はじめのおつかい』や『おふろだいすき』などでお馴染みですよね。『きょうはなんのひ?』は、小学生の「まみこ」ちゃんが、お父さんとお母さんの結婚記念日にプレゼントを用意して小学校へでかけます。お母さんにそれを探してもらうために、指示やヒントが書かれた何枚もの手紙が家中に隠されています。それを次々と探し当てていくお話です。

ところが、その「まみこちゃん」から、すいすいさんたちにも「手紙」が届いたのです。なんと書かれた手紙でしょう。3つのグループに分かれて「まみこちゃんからの手紙」探しが大興奮のうちに始まりました。「あ、あった!」と見つけると、そこになんと書いてあるのかを3人で読みときます。手紙の中のある文字を組み合わせると、暗号文になっていて、その言葉は・・・?という謎解きになっています。見事に解読してしまう辺りは、さすが年長さんだと感心します。

さて、シャワーを浴びて汗を流し、さっぱりしたところで、夕食です。全部、子どもたちのリクエストメニューです。

まず主食は3種類。るうろうはん、ロールパン、ラーメン。主菜は3種類で、焼きぎょうさ、焼きシュウマイ、唐揚げ。副菜はフライドポテト。スープは中華味で2種類(卵スープと野菜スープ)。デザートは桃、さくらんぼ、メロン。そして飲み物は先日、子どもたちで作った梅エキスによる梅ジュース。いつものダイニングが、まるでバーミヤンになったみたいでした。

配膳カウンターに並んだ、これらの「ご馳走」。3回分ぐらいある、特別メニューです。面白かったのは「調理の先生にお礼を言わないとね」と先生が促すと、子どもたちが本当に嬉しそうな表情で「ありがとうございます」と。本当に心がこもった言葉でした。

食べている時にもそれは表れていて、ニヤニヤしながら「おいしい」と呟いているので、どうしたのかなと見てみたら、お皿に餃子を2個、残していたのです。

好きなものを最後に残しておくという姿に、私も子どもの頃、お弁当に卵焼きを最後まで残していたなあ、と思い出し、子ども心というものを思い起こしたのでした。その後、アイスを食べて、豪華なレストランのようなディナーは終了。

食べ終わったのが7時前でしたが、ふわあ〜、とあくびをしながら「ねむ〜い」という子もいて、じゃあ、早く寝ることにしようと話しながら、屋上で手持ち花火を楽しみました。一人ずつに先生が付いて手持ち花火ができました。「楽し〜い」と言う声が聞こえてきました。

みんなが好きな絵本「おとまりのひ」を読んで笑い転げてから「おやすみなさい」へ。ごろごろ、むにゃむしながら、ぐっすりと夢の中へ入っていきました。

 

翌朝は、6時から6時半ごろに起きて7時から屋上でラジオ体操。

ぱっちりと目覚めて朝ごはん。白ごはんにふりかけ、目玉焼きかスクランブルエッグ、肉団子、お味噌汁、ぶどう。昨晩あんなに食べたのに、みんな朝から食欲旺盛でした。

そして、室内遊びをしながら対面式へ。親御さんには2階に集まっていただき、活動の様子をビデオ編集した動画を見ていただき、3階での終わりの会の様子をZ00M でライブ中継しました。

一年365日の中の、たった1日のお泊まりでしかありませんが、子どもたちにとっては、きっといつまでも記憶に残る思い出の日になったのではないかと思います。

私たちの人生は、振り返ることができることがその人の人生になるのだとしたら、楽しい思い出がその人の人生の一コマになるのかもしれません。

そして繰り返し思い出されて語られるエピソードは、繰り返される経験と同じ力を持つでしょう。いえ、それ以上かもしれません。友達と一緒で楽しかった、という思い出になったらいいなと思っています。

 

 

top