MENU CLOSE
TEL

2022年 5月

社会情動的スキル15  心の知能指数(EQ)

2022/05/08

「あのね、ママの歯はね、いっこもないと思うよ」。先日、こんな冗談めいた話を私にしてくれたのは、今年4月に3歳クラスに進級した女の子N Mさんです。にこにこ笑いながら、上手にいろんな話をしてくれます。「ママに歯がないなんて、そんなことないよ。ママには歯があるでしょう」と答えると(エヘ、と首を傾げて)「そうだったあ」と、照れ笑いを見せてくれます。子どもには伝えてみたいことや話したい相手がいることが大事で、言っている内容が正しいかどうかなどは、二の次三の次の問題です。コニュニケーションにおけることばとは、そうやって、いろんなボールを投げ合ってみる、遊びのようなキャッチボールが大事なのです。そこには、イキイキとした心の躍動があり、感情の交流があります。

昨日までの「園長の日記」で人間の「感情の進化」を大急ぎで眺めてみましたが、古い感情と新しい感情があることがわかりました。そして人間らしい感情は、集団社会の中で身につけてきた感情であることがわかりました。私たち人間が有している認知や価値観や感情、やっている行動などは、爬虫類時代からのホモ・サピエンスに至る脳の進化と相関関係があって、赤ちゃんの脳は胎内にいるときから発達していくプロセスが、脳の進化とそっくりであることもわかっています。

快と不快の原始的な感情は周囲の人と関わりながら、どんどん分化して複雑な感情を発達させていきます。しかも、そのスピードのなんと早いことでしょう。千代田せいが保育園が開園して丸3年が経ちましたが、開園当初、ちっち組(0歳)の赤ちゃんだった子が、わいわい組(3歳)になり、私に冗談を言いながら、いろんな話をしてくれます。

心の知能指数という訳が良かったのか、日本でもE Q(Emotional Intelligence Quotient)つまり情動知能が大事であることが、ずいぶん前から話題になって、いろんな本や話題が出ています。とくに売れている本は情動知能と学業成績と関連することを述べているものです。学業成績にもっとも影響が大きいのはIQ(Intelligence Quotient知能指数)ですが、2番目はパーソナリティ特性の「誠実性」で、3番目がこの「情動知能」なのです。例えば、こんな解説が出ていました。「情動知能が高い人ほど、学業成績と関連するネガティブな情動(不安、退屈、落胆など)をうまく調整できることや、学習環境として重要な教師や他の生徒そして家族と良好な関係を築けるためであると考察されています」(『非認知能力』8章「情動知能」―情報を賢く活用する力)。

非認知能力は、人との関係の中で機能する力と、主に個人の中で機能する力がありますが、いずれも社会的であることに注意しておくといいでしょう。色々な能力を個人の中だけのもののように考えない方がいいからです。実際のところ子どもたちと生活していると、子どもや大人の関係の中で、知性や感性が育っていくからです。情動知能もまた、その相互作用の中で獲得されているものなのです。

カブトムシ

2022/05/07

昨年カブトムシの幼虫をたくさんいただき、そのカブトムシたちが生んでくれた卵から育てています。 今日、土の入れ替えをしようと上部のウンチを取り除いているとモソモソと動く土が表れて、そこから「さなぎ」のカブトムシを見つけられた。  蛹室が壊れてしまわないように少し様子を見た後、また土をかぶせ成虫になるのを楽しみに待ちつ事にしました。

 

5月7日 昼食

2022/05/07

ご飯

鶏肉の香味焼き

かぼちゃサラダ

わかめの味噌汁

社会情動的スキル14  社会的知性

2022/05/07

今の人間の脳を大まかに分けると爬虫類と同じ部分、古い哺乳類と同じ部分、そしてホモ・サピエンスらしい脳の部分に分かれます。これは脳の三位一体モデルです。それぞれに「原始情動」「基本情動」「社会的感情・知性感情」が相当するという仮説があります。

脳神経科学によると、情動(感情)というものは、体の外や内部からのいろいろな刺激(信号)が、脳の中枢を通って運動系につながっていく過程で生まれるそうです。その脳内で生まれるいろんな感情の種類を、動物の進化の過程でどう変わってきたのかを見てみようというわけです。

私たちが持っている脳の中で、最も古い部分、原始爬虫類と同じ部分は、脳幹と視床下部が含まれます。この頃の動物は、最適な環境を求めての移動、食料を求めての移動が主です。それに関連した感覚情報から、必要と判断される運動を引き起こす際に生まれる感情で、それは主に快と不快です。お腹が減ったから不快、食欲が満たされて満足で快。食欲、睡眠欲、暑い寒い、運動、性欲、そのほか生理的欲求が満たされないと不快、満たされたら快、です。心地よさの大半は、このような生命維持装置である身体の反応からくる感情です。こんなに古くからある感情なんですね。

それが「古い哺乳類」になってくると、大脳辺縁系が加わります。人間に近い感情が出てきます。それは「基本感情」と呼ばれるもので、喜び、嫌悪、恐怖、愛情、怒りの5つです。どうして進化の過程でこの感情が生まれたのでしょう。その最大のきっかけになったのは、捕食者〜被捕食者の関係が生まれたからだというのです。動物がエネルギー源として肉食を選択した時から、自分も食べられるかも、襲われるかも、という警戒する運動機能が求められるようになり、その時に生まれる情緒が恐れ、恐怖感情です。ビクビクして臆病なものが、ちょっとした刺激に対して逃避行動を選択でき、弱肉強食の生存競争を勝ち抜いてきたのかもしれません。恐竜の影に隠れてひっそりと暮らしてきた哺乳類が選んだ行動が持っている感情なのでしょうか。一方で、相手を襲って食べるということも行うために、攻撃性も必要でした。そして常にお腹を減らして、空腹状態が常だった生き物にとって、食べ物にありつけるというのは、最も大きな喜びだったのでしょう。原始感情の快から喜びが生まれ、不快から嫌悪と恐れが生まれたという仮説です。

この説では、5つの基本感情のうち、3つの喜び、恐怖、嫌悪が自分の生存のために常に動いている情動だったと想像されています。単体の生物が、捕食―被捕の関係から発達していった感情です。全ての生物に共有する感情だと言われています。(本当かなあ? 金魚に餌をあげていると、その動きからは確かにそう見えますが、どの程度の感情なのか、金魚に聞いてみないとわからないですね)

ところが後の2つは、ちょっと種類が違うというのです。残りの愛情と怒りは、ペアでないと生存できないような生き方をする生物にしか生まれない感情です。相手がいるときに生じる感情で、社会性な感情に近づくのです。確かに子育てを協力して行う哺乳類は、子どもへの愛情を持っているように見えますね。ネズミも溺れている仲間を助けたりするそうです。保育園で犬や猫を飼ってみたいのは、この5大感情を感じるからです。ただ、アニメや漫画で恐竜が豊かな感情を持っているかのように描くのは、ちょっとミスリードかもしれないですね。

さて、いよいよ人間の感情です。5つの基本感情に加えて何が増えていったのでしょうか。その知見は、霊長類の行動研究からもたらされました。猿から進化したホモ・サピエンスが、高度な社会生活を営むに至るまでの段階で「社会的知性」という能力を身につけていったことが明らかになってきました。群れを作る集団生活は、複雑な問題を解決していくために、いろいろな人間関係のスキルが必要でした。それが社会的知性です。

感情心理学の研究者である福田正治さんによると、社会的知性には「欺き、裏切り、注意の操作、協同、同盟、連合、援助、支持、好ましさ、模倣、遊びにおけるふり、共感などが報告されている」と言います。「これらを実行するためには言葉はいりません。推論、予想、問題解決、関係性の認知、長期間の記憶保持、読心などの機能が脳の中にあればよい」のです。そして、このような集団生活の中で、愛情、嫉妬、罪、恥といった「社会的感情」が生まれていったと想像されています。集団や群れを維持するために、ボスを支持したり、仲間を共感したり、反目を宥めたり、共通の敵のために協力したり、分け前を配分したりする「社会的知性」が必要とされました。

どうでしょうか? このように感情の進化を辿ってくると、社会的な感情がいかに私たちの基本行動と分けられないかがわかります。さらに、私たちの感情は進化しています。神を想像し、歴史を綴り、文学とアートと科学技術をうみ、地球規模の連帯が必要な時代を迎えました。勇気、献身、思いやり、寛容、慎み、自己犠牲・・・どんな情動が必要なのでしょうか。

そこを考えて出されてきた提案の一つが、社会情動的スキル、IQ(知能指数)に代わる「心の知能指数」と日本語で訳されて広まったE Q(Emotional Intelligence Quotient)だったり、してきたのでした。何年も前から、藤森先生が取り上げてきたテーマになります。

5月9日 昼食

2022/05/06

ご飯

ぶたのねぎ塩焼き

とうがんのそぼろあんかけ

ほうれん草の味噌汁

デコポン

麦茶

社会情動的スキル13  感情の進化

2022/05/06

(福田正治 富山大学医学部行動科学 「感情心理学研究」感情の階層性と脳の進化 より)

ここで何回か紹介してきた経済協力開発機構(OECD)の2015年の報告書は、子どもたちが「望ましい結果」(心身の健康や学業の成績など)をもたらすために「社会情動的スキル」を身につけることが必要だと主張しています。また、日本の国立教育政策研究所も「非認知的(社会情緒的)能力の発達」について大規模な研究を続けています。幼少期の経験が大きくなってからの「望ましい結果」に影響するというわけですから、私たちの子育てや保育も無関心ではいられません。実際のところ、縦断研究などによるエビデンス(根拠や証拠)に基づいて、保育所保育指針は改定され、乳幼児保育の充実や「非認知的側面」が強調されるようになってきたのでした。

そこで、私は「そもそも」のところから話を整理しながら先に進めますが、何度か話してきたように、社会情動的なものは、人と人の関係の中で発生する情動(感情や心情、感性、フィーリングなども含まれます)ですから、それはとてもたくさんあるわけで、赤ちゃんや乳幼児と一緒に生活していればわかりますが、大人のように繊細な感情はまだ発達していません。そもそも、感情はどのように進化発達してきたのでしょうか。動物も持っている感情と私たち人間だけが持っている感情とは、何がどのように違うのでしょうか。その上で、これからの未来社会に向かう時に、社会性を伴う情動について、どんなことが大事だというのでしょうか。

私たちの持っている感情には進化の歴史があります。それをざっと簡単に振り返っておきましょう。宇宙は137億年の歴史がありますが、太陽系が45億年まえにできて地球も生まれました。シアノバクテリアのような原始生命が発生したのは35億年まえ、その頃、植物も誕生し、アメーバやゾウリムシのような原生動物は7億年前に登場します。4億年前には魚類が、3億年前には蛇やトカゲやワニなどの爬虫類が出てきます。子どもたちが大好きな恐竜もその頃です。その後にネズミのような哺乳類が2億年前ごろから細々と今に至るまで続くのです。その哺乳類のうち700万年前にチンパンジーから類人猿が枝分かれして私たち人間と進化してきたことになるわけですが、さて、私たちが感じている、この「感情」は、いつ頃生まれて進化してきたのでしょうか。

感情をもっていそうな動物に対して、子どもたちは優しくなります。そもそも生き物への関心や共感は子どもはもともと持っているように感じます。自分の感情を対象に投影しているように見えます。最近のブログでよく見かけるアゲハの卵やダンゴムシ、スズムシの赤ちゃんの話です。これらの昆虫も動物ですが、金魚になると、わざわざ浅草の金魚屋さんに「金魚が病気になった、大変だ」と相談したくらいですから、どこかにカブトムシやスズムシとは異なる生き物の次元があるらしいのです。そんなことを思い浮かべながら、感情の進化の話を考えてみましょう。

 

社会情動的スキル12 教育基本法とエージェンシー

2022/05/05

「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」。

(内閣府のホームページより)

内閣府のホームページによると「国民の祝日に関する法律」には、今日5月5日の「こどもの日」に、その趣旨がこう書かれています。「国民の祝日」が制定されたのは昭和23年で、「母に感謝する」だけでいいのかな?と思ったりしますが、この部分の法律の趣旨は改正されたことはなく令和4年の今も、この趣旨はそのままです。それはともかく、こどもの日には「こどもの幸福をはかる」だけではなく「こどもの人格を重んじ」ることが明記されていたことを、ご存じでしょうか?

 

私たち省我会がもっている「見守る保育の三省」(職員の心得・クレド)ににも、子どもは「立派な人格をもった存在」とされています。

1 子どもの存在を丸ごと信じただろうか。

子どもは自ら育とうとする力をもっています。その力を信じ、子どもといえども立派な人格をもった存在として受けいれることによって、見守ることができるのです。

2 子どもに真心をもって接しただろうか。

子どもと接するときは、保育者の人格が子どもたちに伝わっていきます。偽りのない心で、子どもを主体として接することが見守るということです。

3 子どもを見守ることができただろうか。

子どもを信じ、真心をもつことで、はじめて子どもを見守ることができるのです。

 

さて、普段はあまり意識しないかもしれませんが、私たちは子育てをしながら、こどもの人格、パーソナリティを視野に入れています。日本政府も子どもの人格を尊び、教育でその完成をめざすのだ、と宣言しているのでした。そして世界は、OECDの考えではあるにしても、望ましい未来からの代理人として主体性をもった子どもの育成に英知を集めよう、と呼びかけているのでした。

そう考えると、人格を大切にしたり、人格の育成をめざしたり、国によっては人格の陶冶を図ったりするために、その方法として社会情動的な側面に光が当たり始めていることになります。たとえば、一昨日紹介した日本の教育基本法の第二条には、昨日紹介したエージェンシーを読み取ることができます。

第2条 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んじるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

 

昨日に引き続き、白井俊さんの解説です。

「ここで注目したいのが、特に後段の表現である。公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、と書かれているが、これはエージェンシーの理念に重なるものである。すなわち、エージェンシーは、主体的に社会の形成に参画していくことを意味するが、それは単に自分が希望するから、ということではなく、それぞれが属する社会における自らの役割や責任を意識したうえで、一人ひとりが主体的に行動していくことが含意されているからである」(『OECDEducation2030 プロジェクトが描く教育の未来』〜白井俊著・ミネルヴァ書房〜)

 

子どもが参画することを当園の保育の中に探すなら、「お手伝い保育」がわかりやすいでしょう。子どもの社会は家庭であり、保育園であり、それぞれが属するクラスです。子どもたちなりに、その小さな社会の中で役割を果たし、貢献しています。他にもグループ単位での活動も色々ありますが、そのグループという小さな社会の中で自分が何を期待され、自分の行動をどのように制御し、どうしたらいいのかを考えたり工夫したりしています。そして「お手伝い保育」の自己評価の項目には「小さな子どもの気持ちや考えに気づいたか」というものもあり、社会情動的スキルの育成メソッドが生かされているのです。そしてお集まりなどで振り返ってみて「楽しかった」などの感想が出ることがあるのですが、それが「楽しかった」「面白かった」という個人の希望が達成された感想にとどまらず、「よかった」という言葉が出てくるようになるとしめたものです。「よい」という気づきの中には、自分のことを客観視できるメタ認知が育ち、内容によっては自分のことだけを超えた、社会的な何かが含まれているからです。

鈴虫の越冬!

2022/05/04

わらす組より

 

昨年の秋。 保育園の中を鈴虫が鳴き声で秋の演奏をしてくれました。その鈴虫が卵を産み越冬をしていたのですが、5月2日に虫かごを確認すると赤ちゃんが産まれてきていました。

越冬に大成功。この子たちが今年の秋の主役になるのか、引き続きお世話を子どもたちと進めていきます! なかなか見れないので、もし良かったら3階まで足を伸ばしてみてください!

 

top