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2022年 6月

保育園に期待されていること

2022/06/03

園生活の中にあって、家庭生活の中にないものがたくさんあります。特に私たちが意識しているのは子ども同士の関わり、子ども文化の継承ということです。会話だけではなく、言葉にならないものも含めて、あるいは言葉以前のことばを含めて、コミュニケーションの力を育てることを大事にしています。歌や音楽、運動、ダンスなど体を使う表現活動は、自分と世界、自分と他者を繋いでいく大切な自己表現です。考えや気持ちを伝え合う、伝わりあっているという体験が喜びになっていくように、子ども同士の文化を豊かにしたいと思っています。

また人と人が力を合わせること、協力することは人の人たるゆえんとも言われていることです。ホモ・サピエンスが氷河期を乗り越えることができたのは、その何かの目的に向かって協働することや考えること(集団思考)が長けていたからだそうです。子どもの育ちというのは、人類の系統発生的なプロセス(進化の過程)を再現している面もあります。ですから、人との関わりという、そうした体験を積み重ねることで、子どもたちは自分らしい自己決定ができるようになっていきます。やりたいことと期待されていることのジレンマを乗り越えていきながら、実行機能を育むようにしています。

今日は久しぶりに夕方2時間、4時から6時まで3階の運動ゾーンで「園長ライオン」を3セット行いました。3歳のわいわいから始まって、4歳のらんらん、5歳のすいすいと20〜30分ずつやったのですが、発達の段階がよくわかると同時に、この3年間の変化を比べると、明らかに今の方が身体能力が全体的に向上しています。ネットに登っている子どもたちは700万年以上前から使ってきた身体を使っています。脳幹の部分を刺激しています。またライオンから食べられないように逃げる動物を演じているごっこ遊びですから、そこに蘇る感情は恐れと安堵という、とても原初的な情動です。かくれんぼのドキドキ感、スリル感が楽しそうです。そしてこの遊びの中には、ライオンを騙して仲間を助けようとする姿が見られます。こんな群れ遊びは家庭や地域にはありません。

現代は子育てが家庭だけでは難しい時代になりました。第一次産業から第二次産業へ移行する過程で「職住の分離」と「都市化」「核家族化」が進み、住んでいる家の近くで働きながら子育てができる環境がなくなりました。それは現代では当たり前の姿かもしれませんが、実は人間は何百万年もの間続いた狩猟採集社会にできた「脳」と「身体」のままであり、現代のような急激な環境変化に適応できていません。その悪条件の中で、子どもたちに取り戻さなければならない体験を、保育園は創り出していく必要に迫られています。

保育参観について

2022/06/02

6月には保育参観があります。そこで、少し見学や参観や保育体験について考えてみたいと思います。まず、この時期の保育参観は、新年度から2ヶ月が経ち、入園や進級した子どもたちが園生活をどのように過ごしているのか、どのように慣れてきているか、などが見てみてください。秋にももう一度あります。とは言っても、保育参観はこの時期に限らず、いつでもできますので、ご希望があれば担任にご相談ください。

保育参観はベランダなど、ちょっと離れた場所から見てもらうので、だいたいこんな様子なんだなあ、という程度しかわからないかもしれません。遠くからの印象という感じになるかもしれません。それでも、楽しく遊んでいるな、とか、おやつやお昼ご飯も美味しそうに食べているな、とかがわかると思います。時間帯を選んでご覧になってみてください。

保育園では、家ではあまりやらないことがたくさんがあります。園だより6月号の巻頭言では、その活動が色々あることをお伝えしました(5月30日)。これは毎日のルーティーンのことなので、クラスのブログや日誌でも、取り上げることさえあまりないのですが、その一つ一つに、とっても大事な体験がギューっと詰まっています。

例えば、今日6月2日(木)のちっち・ぐんぐんの生活を覗いてみます。すると子どもたちが毎日の生活の時間の流れの中で、それぞれが「自分」というものを発揮していく姿があります。先生に「あれ!」と求めたり、先生が「これな〜に?」と聞いたり、「今日は、どの絵本にしようかな。これにしたいと思うけど、どう?やる?」と話しかけたり、じゃあ、お歌うたおうか・・・♪でんでんむしむし かたつむり〜 と歌をうたったり、先生がつくった電車の写真が「ガタン ゴトン ガタン ゴトン」と、子どもたちの周りをぐる〜っと回ったり・・なにげないように見える生活のシーンなのですが、そこには計画された体験のつらなりがあります。

参観の日に、外遊びとして散歩に行ったり、公園で遊んだりする日になることもありますが、一緒について行ってみてください。小さいうちは見つからないように、少しあとを追っていくといいでしょう。

もっと詳しく知りたいときは、ぜひ「保育体験」をなさってみてください。パパ先生、ママ先生になっていただき、半日子どものいるクラスで保育補助を体験しながら、お子さんの生活の様子をご覧いただけます。この2年間はコロナ禍でできませんでしたが、令和元年度に参加された方は「とてもよかった、どんなふうに過ごしているのか、よくわかりました」という感想をいただいています。「今日はママじゃなくて先生だよ」ということを理解して、子どもなりに先生なんだ、という感覚で接するので、それが理解できるぐんぐん組後半くらいからなら保育体験もありだと思いますので、お勧めします。

今日のクラス日誌から・・

2022/06/01

今日から6月です。新しい月が始まりました。そこで今日は先生たちが毎日書いているクラス日誌を紹介します。そこには、子どもたちの成長の様子が記録されているのですが、その成長を喜んでいる先生たちの書き振りを見て、私は嬉しくなってしまいます。例えば・・

ちっち組

・・・身体測定後、高月の2名は屋上へ。◯ちゃんは、朝から機嫌があまり良くなかったのでもあったので、ゆっくり関わってから屋上へ行って気分転換した。低月は、友だちへの興味が出てきたのか、近づいていってお互いに顔を触ってみるような姿が増えてきた。・・

ぐんぐん

・・・身体測定では自ら洋服を脱ぎ始め測定しようと意欲的な子どもが多くいた。以前まで拒む子もいたが、今日は友達の姿を見たり大人と話をすることで、自ら測定器に乗り測っていた。子どもたちが自分からやろうとする気持ちになることで楽しく行動できていたので、遊びだけでなく身体測定など自ら行動できるような工夫をしていきたい。・・

にこにこ

・・・ぐんぐん組と一緒に屋上で遊ぶ。わらすさんが育てているスイカにアリが沢山集まっているのを見つけて、観察していた。他の野菜よりもスイカの方にたくさん集まって来ていたので、「甘い匂いがするのかな?」と葉っぱの匂いを嗅いでみる。◯◯ちゃんが「何もにおわな~い。葉っぱの匂いだけする~」と話していた。それからしばらくアリの観察が続いていた。・・・

わいらんすい

・・・浜町公園で、鬼ごっこや自然物での遊びを広げていた。ひと遊びの後、すいすい組が集まってミーティングをする。テーマは「この公園をより楽しく遊ぶために必要な物」という内容。 子どもからは虫網が提案され意見が一致。 具体的にどれくらい用意するかを話し合うと「5,10、15・・・」と意見が出て「5本か15本」で割れる。最後は5本用意して遊んでみようと決まった。・・

こんな子どもたちの様子の描写が続き、それに基づくその日の反省・振り返りが記載れていくのですが、そうした計画、実施、評価・反省の保育サイクルを推進していく原動力は何かというと、先生たちの子どもたちへの愛情です。一人ひとりの子どもたちに「こうしてあげたいな」「こうしたらもっと◯◯になっていくかな」という、先生たちの願いが、計画に変わっていくということが、よくわかります。

そして愛情に裏付けられた保育に、その実質を与えるものが、子どもや保育を見ていく力、多面的な視点や重要と思えることを選び出せる判断力です。特に子どもの姿から、心の動きや心情、学んでいる内容、身につけていることは何かなど、発達の意味を理解するには、専門的な知識を得ることが不可欠です。日誌に記録されることは保育全体のほんの一部でしかありませんが、それでも部分の質は全体の質と相関があるのです。

 

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