「これからの社会、子ども大人も、どうやって生きていったらいいんだろうって、探りやっていったらいいんじゃない」ーー。
映画『こどもかいぎ』の公開に合わせて、小学館が緊急出版した本『子どもが対話する保育「サークルタイム」のすすめ』の中で、汐見稔幸さんが、こんなことを語っています。私もこの本の中でインタビューを受けて、映画のことについて語りました。
サークルタイムと言うのは、輪なって話し合う時間の事ですが、今日の午後1時過ぎ、『お泊まり会』の始まりの会で、私は〈園長からのお話〉の時間をもらったので、そこでちょっとだけ、サークルタイムをしました。テーマはお泊まり会の前日の「昨日はどんなだったか?」です。それを聞いていると、この日をいかに心待ちにしているのかが、よく伝わってきました。
まず思うのは、生まれてまだ5年ぐらいしか経っていないのに、よくも、こんなに自分の気持ちや考えや出来事をしっかり伝えられるようになったなあ、ということです。さらに、気持ちの昂まりが大きくて、楽しいお泊まり会にしたいという意欲に溢れていることに、こちらの胸も熱くなりました。このようは気持ちで過ごす一泊二日は、この子たちにとって濃密な体験になることは間違いないでしょう。
さらに汐見さんではありませんが、どうやって生きていったらいいんだろう、というテーマを実は大人も携えて生きていることを、子どもよりも大人の方が、子どもに教えてもらっている気がしてきます。この子たちが、こうやって自ら育とうとしてくれているからこそ、わたしたちも生かされているという感覚を強くするものです。
また、このお泊まり会では、きっと年長同士の絆も強まることでしょう。色水遊びをしたり、アイロンビースで好きなものを作ったり、好きな絵本を先生に読んでもらったり、アイスを作って凍らせてもらったり、ピーラーや包丁を使ったクッキングを楽しんだり、手で捏ねて自分の好きな形のハンバーグを焼いてもらったり、お風呂に入ってさっぱり汗を流し、手持ち花火も楽しみました。それぞれの活動のたびに、いろんな関わりが起きています。そして夜9時10分にはみんなぐっすりと夢の中でした。
その間に、何度か話し合いも自然と生まれました。私が立ち会った場面では、どのグループが先にクッキングを始めるかで、意見が食い違いました。まとめ役のTKさんがみんなの意見を聞きに回ってくれたのですが、それだけではまとまらないで困った様子だったのです。ところが、どういうわけか、最初がいい、と言っていた子が最後でいいといい、すんなりの先生提案の案と同じ順番に決まったりしていました。
同じ結果であっても、この話し合いの時間があるのとないのでは、全く異なるものだということがわかります。自分の考えや相手の考えを並べて考えるという力が、少しずつ育っていることを感じました。一旦意見を出し合って、全体の状況を理解して、自分の考えを修正する、ということができるようになってきているのです。なんと素晴らしいことでしょう。相手の自分の考えが違うことに気づく、ということは、自分と他者と世界が串刺しになっていく(汐見)ことであり、それが発達だということだからです。
今日のお泊まり会は、雨になって午前中に予定していた神田川の乗船探検は取りやめ、スカッと晴れた日にやることにしました。毎日の生活リズムが整ってきているのか、8時過ぎから眠そうな雰囲気になっていて、9時ごろにはみんな寝ています。明日は、朝から買い物散歩に出掛ける予定です。