ちっち組
【健康】
遊び・食事・睡眠。一人ひとりの発達の差が大きいちっち組では、一人ひとりの生活リズムに合わせて、という部分も大切にして過ごしてきました。そのリズムがだんだん作られていくためにも、心と体の健康が必要です。晴れた日には戸外でたっぷり遊んで、お腹が空いたらミルクやごはん。そして、お腹いっぱいになって眠る。大人だって、日によってコンディションが様々であるように、赤ちゃんたちも、日によってそれぞれです。今日はあんまり食べたくないなぁという日もあれば、お腹がぺこぺこでもっともっと食べたい!という日もあります。眠くて眠くて仕方ない日もあれば、まだもうちょっと遊んでいたい…という日もあります。小さな赤ちゃんのうちから、子どもたちは、そうして自分で様々な選択をしながら、過ごしています。
食事の場面にスポットを当ててみると・・・園では、基本的に離乳食後期の頃から“手づかみ食べ”をしています。今まで、あーんとスプーンで口に運んでもらっていた子も、食べ物を自分の手で食べるようになっていきます。その姿を見ていると、面白いことに、最初のころは、とりあえず、手に触ったものを口に運んでいた子も、徐々に、“これを食べたい”と、選んで手に取るようになり、お皿の上は、好きなものから、なくなっていきます。(離乳食では、かぼちゃや人参など、甘味のあるものが人気でした。)そして食べてみて、苦手なものは、ベーっ。徐々に好き嫌いがはっきり見えてきます。
園では、「お友だちと一緒に食べる」という空間も大切にしています。おいしいね、たのしいね、と誰かと一緒に食べる喜びを、小さい子どもたちなりに感じてくれたらなぁと思っています。隣のお友だちと顔を見合ってニコーっとしながら食べたり、お手伝いに来たわらす組のお姉さんに「あーん」と食べさせてもらったり。ただ“お腹を満たす”だけの時間ではなく、食事の時間は、楽しくて嬉しいものであってほしいですね。
どのような場面にも、子どもの「選択」があります。できるだけその選択をさせてあげながら、子どもたちが意欲的に過ごしていけることが、「心身の健康」そして「生活を作り出していく力」にもつながっていくのだと思います。
【人間関係】
入園したての春の頃、初めましてのお友達や大人たちに囲まれて、不思議そうなお顔のちっちさん。まだまだよそよそしくて、大人の膝から踏み出すのがこわい、、そんなお友達の姿もありました。ですが、同じちっちさんのお友達や、ちょっと先輩のぐんぐんさんと過ごしたり、毎朝「かわいいね〜」「あ!わらった〜!」とたくさん明るい声をかけてくれるわらす組のお兄さんお姉さん達と関わったりする中で、その子らしい表情や声が出てきて、自分の世界がどんどんと広がってきています。様々な表情を見せてくれるちっちさん達の姿に、今ではすっかり園が自分を出せる場所になっていることを感じ、嬉しく思います。
初めの頃は、大人やお姉さんお兄さん達との一対一の関わりや、1人遊びが多かったちっちさんでしたが、最近ではちっちさん同士での関わりがとても増えてきています。お友達のエプロンをつけてあげようと奮闘したり、付けてくれるのをじっと待ってあげたり。お友達が使っているおもちゃを羨ましく思って取ってみたり、またそれが悔しくて追いかけてみたり。悲しくて泣いているお友達に気がつくと、後ろから『いい子いい子』と慰めてくれたり。時には『これどーぞ』とかわりのおもちゃや絵本を持ってきてくれる、まるでぐんぐんさんのような姿もあります。また、キャッキャと楽しそうな笑い声が聞こえると思って見てみると、ちっちさん達で集まって一緒にジャンプして笑っていたり、『いないいないばあ』をして笑わせ合っていたり。楽しい気持ちを共有できる”仲間”であることを心で感じて、通じ合っているのだと感じる日々です。
春から一年間、大人と楽しさを共有する時間はもちろん、このような子ども同士での時間もとても大切にしてながら過ごしてきました。初めての集団生活、初めての「社会」である保育園での生活は、人と人同士の世界だからこそ、思い通りにいかないことやもっと楽しくなることなど、様々な気持ちの体験に溢れています。どのような気持ちも子ども達の心の発達において、欠かせない気持ちの芽生えです。子どもの発達・成長を見守る大人として、一人ひとりに寄り添いながら、たくさんの気持ちと向き合う経験を少しずつ積み重ねていけるよう過ごしていけたらと思います。
【環境】
初めての場所、初めて触れるモノ、初めて出会う人。保育園という“社会”に飛び出したちっちさんにとっては、いろんな「はじめて」を体験した1年でした。
春のころ、仰向けで寝転がっていた子たちは、となりで同じようにお友だちが寝転んでいるのを見つけると、“これは、誰なのかしら…”というふうに、首をぐぅっとひねってお友だちの顔を見ようとしていました。そして、近づいてみたい、触れてみたい、とだんだん身体をよじって…気が付いたら、寝返りがうてるようになっていました。
うつ伏せができるようになると、また見える世界が広がります。今度は、触ってみたい玩具が近くにあるけれど、ギリギリ届かない…。そんなときには、またぐぅっと手を伸ばして、“あともうちょっとなのに、とどかない~!!”と困り顔。そして、気が付くと、ずりばいができるようになり、自分の力で、触ってみたいものまで移動できるようになっていました。
・・・そんな風にして、どの子もひとりひとりが、自分の興味や好奇心、やってみたい!の気持ちを原動力にしながら「発達」を繰り返しています。今では、そのやってみたい!も、すっかり幅が広がって、ティッシュペーパーが大量に床に落ちていたり、水道の蛇口で袖がびちょびちょになっていたり、パーテーションの隙間からすばしっこく抜け出して探索に出かけていたり、テーブルの上によじ登ってみたり…。大人からするとイタズラに感じられるような姿も増えてきました。でも、その姿は、子どもたちがどんなことをやってみたいのか、というヒントでもあります。そこから、「探索活動をたっぷりできる時間を増やしてみよう」とか「よじ登って遊べる坂道を運動ゾーンに作ってみよう」などと、子どもたちの遊びの要素を見つけて、できる限り、『環境』として取り入れてきました。子どもたちのやりたがっていることは、つぎの発達のために必要なものであると考えています。最近よく遊びに行くようになった園の屋上も、その一つです。
また、今年は、わらす組から『お手伝い』でお兄さんお姉さんが来てくれる機会もたくさんありました。お姉さんたちからの愛を一心に受けて、ちっちさんも親しみを持って近づいていくような姿が。身近なお友だちや身近な大人との関わりも、子どもたちにとっては大切な環境となっているように思います。
【言葉】
この一年間を過ごす中で、体の成長はもちろんですが、言葉の発達も著しかったちっちさん達。新しい言葉や反応が見られる度に、お部屋では大人から驚きと喜びの歓声が上がっていました。今では多くの声が響く、とても賑やかなクラスです。初めの頃は「だーだ!」「あぁ〜」など自分なりの喃語を使って大人やお友達とコミュニケーションをとっていたちっちさん。言葉だけでなく朝の会で行っていた『タッチ』や『パチパチ(拍手)』なども使いながら、一生懸命自分の気持ちを教えてくれました。そこから少しずつ、「ば!(バナナ)」「か!(すいか)」「まんま〜(ママ)」「ぱぱ!(パパ)」「ちゅちゅーしゃ!(救急車)」など自分の好きな食べ物や人の名前を真似して伝えてくれる姿が見られました。物を指差しながら”これ好きなのよ”、”おいしいね”、”これ欲しかった”など、お友達とのやりとりが増えた中で芽生えた色々な気持ちを共有しようとします。
最近では「あーけーて!」「あっちがいー」「やだ。」「いーよー」と自分のやりたいことをしっかり相手に伝えるちっちさん。他にも「これは?」「○○ちゃーん(くん)」とお友達を呼んだりお名前クイズを自分達でやって遊んだり、「どーぞ!」とお友達に譲ってあげたり。日々のやりとりのなかで様々な言葉が飛び交っています。園では、子どもたちがそれぞれその子らしいやりとりをする中で、自分の気持ちが相手に伝わる”うれしさ”、心を通わせる”楽しさ”、時には上手く伝わらない”もどかしさ”を感じながら奮闘する時間も大切にして過ごしています。成長を願う大人として、それらを見守り、時に代弁を重ねながら、子どもの心の彩によって生まれる“伝えたい気持ち”を育んでいきたいと思っています。
【表現】
音楽が好きなちっちさん。耳馴染みのある歌が聞こえてくると、思わず身体をゆらしたりパチパチ手をたたいたり。言葉が出ている子は、歌詞までなんとなく口ずさむようになっています。春の頃は、ぽかんとした表情で、朝の会に出ていたちっちさんたちも、今ではすっかり『朝の歌』が聞こえると身体をゆらし、歌詞に合わせて踊ったり、名前を呼ばれると『タッチ』とか、『ハイッ』と手を挙げたり。やっぱり毎日歌っている『朝の歌』はいちばん馴染みがあるようで、お部屋で歌っていても、トコトコ寄ってきて、身体を揺らして「朝の会ごっこ」を楽しんでいます。
身近な人との関わりの広がりとともに、気持ちの表現も豊かになっています。お友だちと顔を突き合わせて「へへっ」と笑ったり、玩具を取られて「フェ~ン」と泣いたり、『イヤッ!』と怒ったり。そんな友だちの姿に気が付いて、いいこいいこと頭をなでてくれたり、玩具を渡してあげたりするような姿も出てきています。言葉はないけれど、心を通わせながら、“ぼくは、わたしは、こうしたい!”とか、“相手に伝えたい”という気持ちが、それぞれの表現となって表れています。言葉がなくても、表情や声、仕草だけでも、これだけいろんなコミュニケーションができるんだなぁと、ちっちさんたちを見ていると驚かされます。