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2023年 12月

思いつきの楽しさから生まれる目標志向の遊び

2023/12/01

(園便り12月号「巻頭言」より)

みなさんは何か面白かったことや楽しかったこと、成功してうまくいったことがあったりしたら、どうなりますか?(あるいは何をしますか?) まずは、またそれをやりたい、また経験したいと思うでしょう。家族や友人と話したり、日記やブログを書いたりSNSに発信したり、LINEで共有したりするかもしれません。仕事だったら振り返ってミーティングでしょうか。保育もそうします。あるいは詩や和歌にしたり、小説にしたり、絵画や作曲のアイデアになったりしている方もいることでしょう。このように私たちは自分の経験を、ある面では言葉や記号や記録に残したり、詩歌や絵や音楽や映画やダンスなどの広い意味での「表象」にして共有していると言えます。もちろん、そんなことをしなくても身体的な生命活動として「生きる」ことは基底的なことして、歴然とあって、それと一体的な形で表象文化も形作られているように思えます。

では子どもたちはどうしているのでしょうか? 子どもの場合は、そうした手段が限られているので、再現遊び、何かのごっこやつもり、見立てになることが多い気がします。赤ちゃんが救急車の音が聞こえてくるだけで、あ!と指差して「ピーポー」と教えてくれたり(言葉になるもの)、積み木を動かしながら「ブッブー」と見立て遊びになる子もいれば、幼児になるとアゲハを絵に描いたり、絵本や図鑑を作る子もいます。最近の保育日誌にも、そんな様子がたくさん書かれています。1歳児クラスの子たちが、目の前に何も物がないのに思い付きでケーキやニンジンなどを「ハイ」と手渡して遊んでいる様子に想像力を感じたと書いてありましたよね。

そうすると、子どもは心動かされたことをもう一度味わいたくて、目の前に「現前化」させたいのかもしれません。それがリプレゼンテーションだとするなら、それは日本語では表象と訳されてきたので、まるで頭の中というか、心のことのように思ってしまいます。でも語源に遡って、再現という意味にとどめるなら、これらの活動を見ていると、好きなことを見つけて繰り返しうまくやっていくための技能を学んでいるようにも見えてきます。

そんな時、無藤隆先生から次のような見方を教わりました。遊びは「思いつきをする楽しさと,そこから少し先の目標を立てて実現しようとする課題解決の充実感からなる。それは物事の可能性を知ること。私の言い方では環境からの呼びかけに応えて、世界性へと開かれること。そして、そこでの目標を立てての課題解決の練習となる」という考えです。

とても新鮮で、遊びと生活を一体として捉えることができ、大人も含めて子どももやっている再現させている活動が、実は世界に深く入り込んでいくための生きる姿そのものと思えてきます。私たちは表象に慣れていますが、知覚から表象を経由して行為しているのではなくて、知覚したことと行為することを一体的につなぐ生態学的な捉え方があり、その考え方から遊びを豊かにすることが発想できるかもしれません。

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