今日20日は、実習生の大学の先生と午前中、語り合うことができました。この方とは、随分長いお付き合いになります。実習生の個性や育て方、実習で学んでほしいこと、保育の魅力がどうしたら伝わるか。昔から言われてきていることですが、その本質は従来以上に大切にしないといけない時代になってきていると感じます。
実は、保育実習は養成課程の中で核になるもので、大学での勉強を実際の保育に活かし、また実際の保育の体験からの学びを大学での学びに活かす。そうした相互循環がとても大切です。私は厚生労働省の保育士養成課程検討委員をやっていた経験があるのですが、現場の実習と大学での授業を繋ぎたいと、ずっと思っていました。大学の研究者になりたいのなら別ですが、将来保育者になるのなら、就職が保育者デビューだとすると、実習はそのプレデビュー、あるいはその前のプレ・プレデビューのような位置付けになってきます。そうすると、実習などの現場での経験を積んでいくことが、実践力や保育の構想力を培うためには、とても必要なことだと想像してもらえることでしょう。
大学にはなくて、現場にしかないもの。それは子どもです。保護者です。そして先生です。この三者が大学にはないのに、専門性を授けようとしているのです。臨床経験のないお医者さんに、診てもらおうという患者さんはいないでしょう。それと同じです。実習は大学での学びに欠かせない臨床経験です。
保育所は保育士という資格がないと保育ができないわけですから、その資格を取得するために、保育園で実習することはとても大事なことです。大事というのは、保育園は「保育士養成課程の一翼を担っている」からです。実はその意識を保育園の先生に、よく理解してもらうことが、ずっと課題でした。一方で、養成校の方も、表面的な保育技術を教えることが専門性であるかのような講義や、音楽なら音楽、自然なら自然の専門家ではあるものの、保育の専門ではない人が講義を受け持つということが多いのも課題でした。
そういう構造的な問題がすべて解消したわけではないのですが、それでも保育士不足で保育園は学生を大切にしたり、やっと養成校の養成課程に関心を持ったりするようになってきました。また養成校の方も経営が苦しくなっていることもあり、質の高い授業を展開しようと、保育現場とのつながりを大切にするようになってきました。以前に比べて保育士養成課程の質を高めようとする空気は強くなっていると思います。
実習生は子どもと出会います。保育園の生活の中で出会う子どもです。遊びへの欲求がこんなに強く、遊びがこんなに大事なものなのかと実感できるのは実習の場です。保育者が子どもの繊細な心の動きを必死で捉えようとしていることに気づけるのも実習の場でしか体験できないでしょう。いくらビデオや動画で擬似保育を見ても、実習で実際の心を通わせあった実名の子どものリアル感は、授業では体験できないものなのです。
実習生の感想でもっとも嬉しいのは「子どもって、こんなに遊びが好きなんですね」「子どもって、こんなに○○なんですね」といった「子ども発見」です。その上で「保育の仕事って面白いですね」という感想を持ってくれたら最高です。ただ、その「面白さ」とは、ファンではなく、インタレスト、奥深さのことです。保育の醍醐味です。それが伝わるような実習であったらいいなと思っています。