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園長の日記

100の言葉

2020/08/04

「園長先生、青と紫を混ぜたら何色になるか知ってる?」と、Kちゃんが聞いてきます。「そうだなあ、きっと濃い紫になるんじゃないかな?」と答えると「ううん、違うよ、青だよ、紫と青を混ぜると青になるんだよ」と教えてくれました。これがKちゃんの実験結果の報告です。とっても真剣です。どうしても、これを「色水遊び」などと、名前をつけて、彼らが取り組んでいることにレッテルを貼ってしまってはいけません。混ぜる量で色合いが変わることに彼はすでに気づいていて、その上での発見報告です。

 

またSくんは、昨日からハマっているある曲を振り付け付きで歌って教えてくれるのですが、何の歌なのか分からなかったのですが、今日お迎えのときにお母さんに伺って謎が解けました。Sくんの頭の中でなっている曲は、私にまではリアルにそのまま届きませんが、明らかに彼はその曲が聞こえていて、それを再現することがとても楽しそうです。

 

Kくんは、色と色が混ざると色が変化することはすでに知っていても、「今度はこの色とこの色を混ぜたらどうなるだろう」という予想や期待を持ってやっている遊びであり、それは科学実験と同じ「仮説―実験―結果」のプロセスが見られます。Sくんの表現は、テレビで見たコマーシャル映像を私に伝えたくて再現しており、模倣から自分なりのアレンジを経たアーティストの表現と同じ過程を踏んでいます。

 

この二人がやっている遊びは、ほとんどの子どもがやっている遊びと同じなのですが、やっていることの本質を描き直すと、小さな科学者や小さなアーティストだと言えるから面白いと思いませんか。このように、色を再現したり、曲&振り付けを再現したりする活動は、人間しか行わない「表象」の編集なのですが、なぜか、人はこうしたことを面白がることができる資質を持って生まれてきたようです。

こんな子どもたちの様子に接していると、ここに物事を理解する時の「測定の原基」があるように思えます。例えば・・・

日本はいま何色だろう。黄?赤?青?緑?それとも・・・絵本「カラーモンスター」は、感情マネジメントの導入教材としても最適ですが、この絵本には、もう1つの色が最後に登場し、あえて感情の名前は伏せてあります。子どもたちは「○○じゃない?」といろいろな言葉を見つけてくるのですが、それが楽しい。子どもたちには、やはり「100の言葉」があるのです。

私は成熟していく社会というものは、もっと多様な色が共存ずるイメージを持っていたのですが、どうも様子が違ってきているような空気を感じます。3階のテラスに並んでいるペットボトルの色水のように、人や国はもっと多様であっていい。覇権とどう戦うか。こっちもの話も、とても難しい時代です。

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