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園長の日記

ウイルスの進化特性から社会的検査が必要

2021/01/09

新年が始まって1週間。緊急事態でおめでたい正月気分は吹っ飛びましたが、こんな日常への戻り方は残念ですね。しかしウイルスの住む自然の世界に暮れも正月もありませんから仕方がありません。感染の拡大は、その特性をもったウイルスにとって生存しやすい環境になっていることを意味します。ですからウイルスにとって好都合な環境をなくさないといけません。

ところが、もたもたしていると、その国や地域に適応した変異株が増えてしまいます。突然変異の中で環境に適した特性は、感染力が強くて症状がないか軽いものになっていきます。ホストに自然抗体ができて感染しにくい環境になってしまうまで、COVID-19は居続けます。都の感染者数が500人程度に減ったら、政府はあとはどうするつもりなのでしょうか。ワクチンまかせでしょうか? 社会的検査の拡充はしないのでしょうか?

この点を、再度復習しておきましょう。ウイルスにとって最もいいのは、気づかれにくい特性に変異することです。感染しても症状を呈さないことです。ウイルスはホスト(寄生先)がないと生きられないので、こっそりと目立たずに生物(人間)の中に忍び込んでいるのが最もいいわけです。ウイルスはRNAの自己複製を繰り返している間に、突然変異で多様な特性をもったものがたくさんできるわけですが、その中でもっとも環境に適応したものが数的に増えていきます。意図してその特性を増やしているのではなく、結果的に淘汰されないで環境に適応できた特性が、偶然、結果的に幅を利かせていくだけです。それが進化の仕組みです。とてもシンプルなものです。

その自然の仕組みから考えても、日本が今採用している感染予防策には欠陥があるのです。私は大学は生物化学の専攻だったのでよくわかるのですが、同じ遺伝子構造をもったCOVI D-19でも、ホスト側の特性によって症状が出たり出なかったりする時は、症状がなくても検査して見つけ出す仕組みを採用しないと感染は防げません。

菅総理は7日夕、緊急事態宣言を発令した後の記者会見で、記者から検査体制の更なる拡充をする考えがないかと聞かれ、これまでと全く同じ言い回しで「必要があると判断した場合は検査している」と回答しました。

この「必要がある」と判断するのは主に医師ですから、この考え方では元気に生活している無症状感染者を突き止めることはできないでしょう。これが昨年秋の失敗です。感染者を隔離できませんでした。スポーツ界で陽性がでてニュースになっているのは、社会的検査をしているからです。本人に体調の変化などの自覚はないのです。でも感染している。検査のチャンスがなくて、感染している若い人たちがいっぱいいるのが、今の状況なのでしょう。

ですから世界各国は、このウイルス進化の必然からくる特性を踏まえて、社会的検査の拡充に力を入れてきたのです。毎日発表されている感染者数は主に症状があった人がほとんどです。実際の感染者はもっといます。私はすでに毎日1万件を超えているだろうと思います。感染経路不明が6割ということは、濃厚接触者のリンクはもはや追えません。つまり無症状感染者を遡って捕捉できていません。その状態は昨年の夏から始まっていました。「新宿・埼玉株」という日本型の変異株が流行した頃です。

リンクを追うというクラスター対策は数百までが限度ですから、2月末から3月上旬に、感染者数をその数ぐらいまで押さえ込んだら、エピセンターの発見隔離のための本当のモニタリングの導入、抗体検査キットへの普及を図ってもらいたいものです。検査キットは今マツキヨで、4000円弱しますが、政府が奨励すればもっと安くなるでしょう。そうすれば誰でも毎週でもやって仕事なりに行けばいい。そうした方が陽性者を早期に発見できるはず。厚労省所管の中だけで対策(感染研ー保健所ライン)を講じることをやめて、省庁を横断した統合本部機能を作って欲しいものです。そこを突破できる政権を期待するのは無理でしょうか。

そうしないとウイルスの進化特性から、ますます感染しやすく(暑くても感染する特性をもったり、感染力が強かったり)なったり、変異の中には乳幼児にも感染する特性をもったものが出てきてしまうチャンスをウイルスに与えてしまうことになります。すでにその兆候が出ているので、ウイルスを燻らせ続けるのは危険です。ウィズコロナではなく、ポストコロナを目指し、さらに水際対策をもっともっと厳しく運用するべきです。そうしないと変異したウイルスが増えていってしまいます。

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