「園長ライオン」。Sさんは私と会うとホッとしたような顔で笑って、そう言うことがあります。最近はやってないのですが、ひと頃、朝の運動タイムで私がライオンになって子どもたちを捕まえて「食べる」という遊びで盛り上がった時期がありました。私に捕まると、抱き上げられ「むしゃむしゃむしゃ、Sちゃんを食べました」とライオンの家であるトランポリンの上に抱き下ろされます。トランポリンを3歳児のわいわいは10回、4歳児のらんらんは20回、5歳児のすいすいは30回ジャンプすると脱出できます。
ネットが森で、緑のマットを迷路のように立てて、ジャングルの樹々に見立てます。そこに隠れて逃げる動物を私が四つん這いで追いかけます。子どもたちも立って逃げてはいけません。四つん這いです。地面に手を着き、自然と受け身ができる身体になってほしいからです。「お、美味しそうな子どもの匂いがするぞ。アハハ。そんな所に隠れても無駄だあー」とかなんとか、ライオン語を駆使しながら、私は追いかけます。
子どもたちの中には「(僕は)サルだよ、こっちにおいでー」などと自分が動物になって、囃し立てる子がいます。ライオンは木に登れないという設定なので、私に捕まりそうになると、子どもたちはネットやクライミングに登ります。運動してほしいから、そうやって逃げながら運動するのは大歓迎。私は「もうちょっとで捕まえたのに」と悔しがり、「あー、眠くなったなあ。ちょっと一眠りするか」と寝たフリをすると、動物たちはライオンの立髪を触りに来ます。(私には自慢のフサフサの立髪があるんです。正直者には見えるよね、ということなっているので、大抵の大人には見えません)
そして「誰だぁ、わしの立髪を触るヤツは」と、がらがらどんのように目を覚まして、「またお腹が減ったなあ」と動物を追いかけます。朝のいい運動です。時計が「リリン」となると、ええー、もう終わり?!とブーイングが起きてました。こんなに盛り上がるの理由は、昨日説明した遊びの4要素が全部詰まっているからです。競争、運動、偶然、模倣です。ライオンや動物に「見立てる」力が人間になかったら、こんなに盛り上がって遊ぶことはないかもしれませんね。