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園長の日記

後ろ向きばいばい

2021/02/23

先日のことですが、お母さんがお迎えにいらして、玄関の方へトコトコと歩いていく子どもの後ろ姿に向かって、私が事務室の方から「Mちゃん、バイバイ」と声をかけたら、お尻の横から右手だけをバイバイと後ろに振ってくれました。その仕草が可愛かったので、そのことをお母さんにも伝えたのですが、その「後ろ向きバイバイ」は器用にも、手のひらを後ろに向けていたのです。

一見、当たり前に思えるこのエピソードですが、このことから思い出すのは、保育の心理学の教科書に出てくる次の話です。ちょうど2歳のMちゃんは大人が行うバイバイを模倣して、バイバイができるようになったのですが、よく言われるのは「子どもは見たものを真似しているのではなくて、大人がやっていることを真似している」という話です。もし見たものを真似しているのなら、子どもは手のひらを自分の方に向けるのではないか、というのです。やっていることの全体を、全身でなり切って模倣しているから、相手の方に手のひらを向けることができる、というのです。

でも、先生が前に立ってモデルになって踊ったりするとき、右と左をあえて反対にして鏡に映るようなつもりで演じてあげることをします。子どもは見たものの左右を入れ替えることは難しいからです。バイバイの場合は、相手に手のひらの方を向けるというのは、その動きを丸ごと真似できるのでしょうね。しかし、自分の方に手のひらを向けるというのは、逆にちょっと考えにくいことではないかと私は思うので、そんなに不思議なことだと思いません。

このように丸ごと共感的に模倣してしまう力が子どもにはあるわけですが、これは仕草に限らず、相手の感情にも反応して同じ感情を感じたりします。泣いているとつられて泣いてしまうような共振と呼ばれるものや、相手が酸っぱいものを食べているのを見るだけで、こちらも酸っぱそうに口を窄めてしまうようなこともあります。真似しようと意図して真似するというよりは、思わず体が映しとってしまうような模倣であり、身体的な共鳴的な模倣です。

相手の気持ちを感じることを共感というなら、優しくしてもらったり、助けてもらったり、思いをわかってもらえたりすることも、共感を通じて真似をしていくようになるのでしょう。優しくしてもらうから、優しい子どもになり、思いを受けてもらうから思いやりのある子になります。身体的な共感の力が、そうした心情も育てているといえそうです。

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