年度が変わると、1つ上の学年へ進級するので、生活の場所が変更になります。4月1日から急に場所を変えてしまうと、慣れない場所での生活で戸惑ってしまうので、徐々に移行します。その時期の保育を「移行保育」と呼びます。年長児が午睡をなくしたり、1つ上のクラスへ遊びへ行ったりという「移行保育」は、1月ごろから徐々に目立つように進んできました。まず遊んでみる、食事をしてみる、そして寝てみるという3つを別々に経験していきます。そしてこの3月が最終的にこの3つを同時にやっていく最終段階になります。その後、4月に担任が変わり、新しい友達が入園してきて、移行は完成です。遊び、食事、睡眠、担任、新しい友達。この5つが時間差で新しくなっていくのです。
もう1つ、大切にしている考え方は、移行保育は一年中やっているというものです。どいうことかというと、それは「発達の連続性」というキーワードから導かれます。
園児は3月が最も年齢が高いのですが、4月になると最も低くなります。年長児が卒園していなくなり、0歳の赤ちゃんが入ってくるからです。こうして4月になると、どのクラスも1年若返ることになります。子どもたちは毎日毎日、少しずつ成長して、1年経つと1つ歳をとります。子どもの発達は、ゆっくりと進んでいきますが、一年でかなり大きく成長したことがわかります。この発達の過程に即した保育を「移行保育」と捉えることができるからです。
一年をかけて、その子の発達に合わせて、徐々に環境は変化し、子ども同士の関係も成長していきます。子どもの自立心も育っていきます。基本的な生活力も大きく伸びます。自分でできることもかなり増えます。たとえば、2歳児クラスは園児が6人に対して先生が1人の割合で配置されています。これを国の最低基準と言います。しかし3歳児クラスになると、一気に20対1という配置になります。それだけ、自分でできることが増えるからです。
したがって、注意しなければならないことがあります。それは、その都度の自立にふさわしいように援助を変えていくことです。いつまでも、幼いままの援助を続けてはいけないのです。大きくなっていくものにふさわしい大きな器を用意していく必要があります。その変化は、一年中実践しなければなりません。年度の切り替えの時だけ、急に変えるような保育では、子どもの実態にあった保育とは言えないものだからです。
移行保育は、3月の中旬から最終局面に入ってきました。