朝8時50分。3階では「どのゾーンを開けますか?」という話し合いが始まっています。聞いているのは先生ではなくて、子どもです。開けるゾーンを決める話し合いは、子どもたちが話し合って決めています。この話し合いに参加することは大きな意味があるような気がします。何かを決めることにコミットするからです。自分にも返ってくる意思決定への参画は、世界中で保育のキーワードになっています。生活への参画権です。与えられたものを従順に守れる資質ではなく、やりたいことを主張して勝ち取っていく民主的プロセスを、幼児の時から経験していくことは大事です。
この意思決定のプロセス参加は、物事を「我が事」として考える習慣に導き、自由と責任を学ぶことに通じるのです。誰かがどこかで決めたことを守れるということではなく、今この目の前で決まる場面に立ち合い、自分がどうしたいのか自己に向き合い、自分の考えをまとめます。そのためには、他人の話も聞かなければなりません。
9時半から10時までの間にある朝の会でも、その日何をするか話し合います。また夕方のお集まりでも、その後の遊び方を提案し合います。このように、1日の中に自分の考えを意見表明する機会が3〜4回あるのですが、その毎日の繰り返しはシチズンシップを身につけていくことになっています。