さて、この写真、子どもたちは何をしていると思われますか。
「バイバイ、いいところで暮らしてね」
「お花の蜜、たっぷりある場所のお花で暮らしてね」
「カラスに食べられないようにね」
「また遊びにきてね」
「海に溺れないように」
子どもたちは口々に、こんな言葉をかけていました。そうなんです。今日は朝早く、アゲハがサナギから孵化(じゃなくて羽化でした)して蝶になったのです。
そして3階のベランダから、自然に返してあげているところです。
私のスマホに一人ひとりの発言がはっきりと録音されているのですが、面白ことに気づきました。
こんなに多くの子どもたちがいて、何かを自由にしゃべっていいという状況になると、大抵はそれぞれがしゃべり始めて、声が重なってしまうことが多いのですが、この時ばかりは、そうなりませんでした。それはまるで、劇のセリフを順番にいう時のように、それぞれの発言を他の子どもたちが、しっかりと聞いているかのようでした。
そうなったのは、一つには、ベランダのネットにじっととまっているアゲハが、いつ飛び立つんだろうと、じっと見つめていたからかもしれません。固唾を飲んで見守っていたからです。
みかんの木に卵を見つけたのが9月2日。それから20日で蝶になりました。
人間に例えるなら二十歳で成人したわけで、蝶の1日は、人の1年にあたります。この間、ずっと毎日のように観察を続けてきた子どもたちだからこそ、冒頭のような言葉が次々と浮かんできたのでしょう。
・・・気持ちの優しい、子どもたちです。