いまの絵本が、今のような内容になってきた理由の一つは、「母の友」「こどものとも」を創刊した福音館書店の松居直さんがいたからです。1956年の創刊当時は、小川未明や坪田譲治のような、いわゆる「童心主義」と言われた児童文学や、関英雄や岡本良雄らの「生活童話」が流行っていた時代です。
藤本朝巳さんの『松居直と絵本づくり』(教文館)によると、それを松居直さんは、童心主義も生活童話も「おもしろくない」と感じていました。当時の子ども向けに書かれたものは「何かを教え伝えようとする姿勢が強く、幼児向けになっていない」「もっと生き生きとした、子どもが本当に楽しく感じるような作品を出したい」と、考えていました。それが「こどものとも」の創刊になっていったのです。
彼が編集に携わったのは1号から149号までですが、その絵本の作家や画家の顔ぶれを見ると、実に有名だった(になった)人たちばかりです。明らかに彼は日本の絵本の世界を切り開いたのです。
子どもにとって、という視点からいい絵本とは、どんなものなのでしょう。それを知る上で格好の本があります。「松居直がすすめる絵本50冊」です。松居直さん自身が選んだ絵本のリストです。ここに載っている絵本50冊を「千代田せいが文庫」に揃えましたので、ぜひ手に取ってみてください。6つのジャンルに分かれていますので、1週間ごとに8〜10冊ほど、文庫に入れていきますので、借りて読んであげてください。