毎年8月に開いていたGTサミットは、コロナの影響で今日10月19日(火)に開かれました。今回のゲスト講演には、東京大学公共政策大学院と慶應義塾大学の教授で、四期にわたり文部科学省副大臣と、文部科学大臣補佐官も務めた鈴木寛さんにお越しいただき、「これからの教育と幼児教育」について2時間の講演をしていただきました。
鈴木さんはOECD教育スキル局アドバイザーで「教育2030プロジェクト」理事も務めています。私たちが今、注目している「ラーニングコンパス」を作った当事者でもあるので、その意味や背景を学ぶことができました。
OECD(経済協力開発機構)は加盟国の学習到達度調査(PISA)を実施していますが、鈴木さんによると「日本の15歳は2000年代低迷するも、2012年以降、世界トップクラス。この才能が開花すれば、日本はAI時代をリードできる」と言います。一般に思われているイメージよりも日本の学力は高く、特に「共同的問題解決能力」は世界トップだそうです。
この力は、友達同士で力を合わせて何かを成し遂げたり、仲良く生活できたりする力なのですが、これからの時代に重要になる力です。これが世界でダントツでいい結果になっているのは、乳幼児期の非認知的能力がうまくいっているだそうです。一方で、高校以上の教育は世界的に低迷しています。学習指導要領でも大きな改革が行われます。
小学校以降の学力で改善が必要なのは国語の書く力、英語、ITの3つです。先生がデジタルの分野を苦手としていることが原因なのですが、保育園ではアナログの世界で五感を使った体験をたくさんしておくことが極めて重要だということが強調されていました。
例えは小学校ではプログラミング教育が始まりましたが、保育園ではたとえば「積み木遊び」が、これに相当します。意図する形を実現するために、どのような積み木をどのように積み重ねるか、そこを考えることが設計の考え方、プログラミングと同じになります。
小学校以降では、その「働き」に対応した「記号」が入ってきて、その記号の組み合わせを考えることになります。そこで乳幼児の頃には、リアルな実体験が必要です。いろんなお魚があるなら、それを文字や記号で認識するだけではなく、できるだけ、触ったり、嗅いだりして「ぬるっとした感覚、重さ、力強さなど実際に感じること」が必要です。
保育園で今やっているような、土や水に十分に触れたり、草花の色水遊びや栽培、生き物の観察や飼育を楽しんだり、食育で野菜や果物の料理をしたり、リアル体験を深めておくことが重要であることを再確認できました。
これに先立つ藤森先生の講演では、こうした遊びに加えて、STEM保育を意識しようという話になりました。例えば、砂場遊びで山や川やトンネルとつくることがよくありますが、その時「川に水を流すにはどうしたらいいか」とか「山の土を崩れないように硬くするにはどうしたらいいか」などを考える要素を意識することです。
昨日私が行った蝶々のにじみ絵では、アートの要素が全面に目につくのですが、絵の具が紙の上でにじむ様子をよく観察したり、どの色とどの色が混ざるとどうなるだろうと考えることも、プログラミング的な思考やSTEMの要素が入っています。これからの時代に必要なスキルをどのように育てるか。そんなことを考えながら、遊びを工夫していきたいと思います。