今日は昨日に続き、昼までGTサミットがありました。今年の参加者は77人。昨日の話を受けて参加者からのリレー発表です。子どもは赤ちゃんの頃から、関わりの中で発達していきますが、0歳から6歳までの関わりの様子を順番に確認できる動画の発表がありました。成長していくプロセスを1年おきに見てみると、いかに「子ども同士」の関係が「対話する力」や「協力すること」、そして行動をコントロールする「実行機能」の育ちに不可欠かが、よくわかりました。私たちの研究グループでしか見られないような子どもたちの姿でした。
この発達の過程で大事だなどと思うのは、やはり1歳から2歳、3歳のかけての自我の芽生えに伴う、マイナスの感情を自分で自制してコントロールしている場面です。動画の中にも、お友達に鈴を取られた子が取り返そうとしたり、それが無理だと分かったら気を取り直して、自分で絵本の方へ行って「これでも見るか」といった感じで絵本を手にします。自分で気を紛らわせているのです。
こういう場面は、現代の感覚では、もしかすると、子どもが可愛そうと思ってしまう大人が多いかもしれません。なんでもやってあげてしまうことは、子どもから発達を遂げるために必要な体験を奪うことになります。OECDの「教育2030」でも、「対立やジレンマを克服する力」が入っているのですが、乳幼児のこんな小さい時期にもそれに相当する経験が必要だろうというのが、最新の脳の敏感性発達の研究成果です。エモーショナル・コントロールの敏感期のピークは意外にも1歳から2歳にあるからです。
参加者からは、次のようなテーマが提案、報告されました。大人がやってあげる保育の限界、子どもの好奇心と大人の保育への探究心の関係、職員が思う「やりたい保育」と時代が期待する保育とのギャップ、保育者のやりがいやウェルビーングのあり方、中国など海外から注目される見守る保育、など。OECDが2004年に公表した5の保育モデルは、スウェーデン、アメリカ(のある一部)、ベルギー、イタリア(レッジョ・エミリア市)、ニュージーランドでしたが、これにはアジアが含まれていません。
今回のGTサミットは、子どもの主体性を大らかに見守る保育の現代性を確認しました。これが日本の伝統的な子育て観であったことを踏まえれば、近代になって欧米化されていく中で見失ったものを今一度、再生させる必要があります。昔と大きく異なるのは、少子社会、人工知能(AI)の進展、グローバル化、多様性、VUCAです。この変化に対応できる保育と生活を創り出さなければなりません。