本日で、今年の保育は終わりです。明日から年末年始の休園に入ります。1月4日(火)にお目にかかります。よいお年をお迎えください。
(以下、本日配布の「園だより」1月号 巻頭言より)
子どもたちが同時にいろいろなことをしているのが保育園です。一人ひとりが自分らしく生活しています。やりたいことがあって、それを実現させたくて取り組んでいます。その姿を見れば、多くの人は「遊んでいる」というでしょう。子どもが他愛もなくよく遊んでいる、と。その通りです。でも、その表現、言い方だけでは見落としてしまうことがたくさんあるのが、その「遊び」というものなのです。
赤ちゃんは自分が遊んでいると思っていません。大人の目から見ても、どこからどこまでが遊びだとはっきりしません。大きくなると子どもは自分が今遊んでいるのか、そうでないのかを区別できるようになります。いずれにしても遊びは生きるために必要な経験になっています。子どもから遊びを取り上げたらきっと死んでしまいますから。子どもの遊びを大切にできない社会はきっと滅びます。なぜなら、社会を形成するために必要な力の根っこを、この乳幼児期に育てているからです。根の生えない木が育つことはないように、社会を形成する力の根がなければ、社会は機能しなくなるでしょう。
では、社会を形成する力の根っことはなんでしょうか。それは遊びの中に見出せるのですが、一つ目は「対話する力」や「コミュニケーション力」です。遊んでいると頻繁にこれを使っています。二つ目は「他人と協力する力」や「集団の中で考える力」です。お楽しみ会の動画や劇遊びの中に、いっぱい見られましたね。三つ目が「実行機能」や「自己調整能力」です。自分の考えや目的のために自分をコントロールする力です。集団生活である社会は、他人との関係の中で自分を発揮し、また他者も生きるようなスキルを身につけていく必要があるからです。
これらの力を育んでいるのが保育園生活なのですが、個別の塾や教室では、これらのうち特定の力しか育てることができません。なぜなら、そこには本当の遊びがないからです。本当の、というのは「本心を自由にさらけ出せる場」の中で「地の自分」が育つ以外に、心の成長はないからです。本物の強い根っこは、自分の力で地面の土を握りしめます。ずんぐ、と地面を掴み取って張り巡らした心の根っこが、社会を形成する力になるのです。
しっかり遊んだ乳幼児期は、いくつもの非認知的スキルを育むことになります。その種類だけお伝えすると、誠実さ、情熱と粘り強さ、自制心、好奇心、考える力、楽観性、見通し力、感情のコントロール、共感する力、自信、今に熱中する力、気持ちの復元力、ストレスへの耐性・・こんないろんな力が遊びの中で育っています。さらに、社会への希望をもてる子どもになってもらいたいとも思います。ただ、そのためには大人の責任も大きいでしょう。本当に不思議なことですが、遊びこそ、大きな根っこが育つ土であり、地面なのです。改めて、これを守ってあげましょう。子どもから遊びを奪わないこと。このことを心に留めながら、新しい1年を迎えたいと思います。