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園長の日記

15日は保育の質を高めるための研修日でした

2022/01/15

保育という仕事の面白さと難しさは、目に見えないものに関わっているからですが、それは見えないからと言って、存在しないわけではなくて、しっかりとあります。例えば、人の心を思い浮かべてもらえばいいでしょうか。心は見えませんが、存在します。それと同じように、保育は物ではないので、見えませんが、人の営みとして、文化の中に存在します。したがって、そこには望ましい考えや方法というものがあります。

私たちは、その文化的実践としての保育をよりよくしていくために、いろんな工夫をしています。その工夫の一つは、保育実践に質の違いがあると想定して、その質がどんな要素で成り立つのかを分析します。その要素の成り立ち方を明らかにして、また全体と部分の関係を明らかにして、質を高める方法を編み出すようにします。

実は、いまだに保育の質には、その定義がありません。見えない営みである保育の質が、いまだに定義されていないのです。しかし、保育を成立させている要素はあります。子どもと親や保育者の大人がいて、必ずわたしたちを取り巻く環境があります。したがって、保育はその3つの要素、子ども・保育者・環境の相互作用からなる文化的実践である、ということができます。

さて、では保育の質はなんでしょうか。子どもの質でしょうか。保育者の質でしょうか。環境の質でしょうか。

保育は3つの要素の「相互作用」ですから、3つ別々の質を高めるのではなく、子どもと環境の関係、子どもと保育者の関係、保育者と環境の関係を考えることが、どうしても必要になります。教育には、次の図のような3角形があります。子どもは教材や体験を通して学習をします。その学習がうまくいくように、先生は児童・生徒のために学習指導をするのですが、その決め手は教材開発や教材研究、授業方法の研鑽になります。

同じように、私たち保育者も、三つの関係からなる三角形があります。これは、誰も言わないので、私はこれを「保育の三角形」と名づけています。子どもと環境の関係は、生活と遊びになります。保育者と子どもの関係は援助だったり遊び相手だったり見守ったりする関係になります。そして保育者と環境との関係は、環境研究になります。子どもが環境とどう関わっているのか、その関係を分析したり、デザインしたり、読み取ったりして、どんな環境を用意したらいいのかを考えます。この最後の営み「環境研究」で大切なことは、先生同士の打ち合わせや研究や研鑽、そして計画づくりと振り返りです。

15日(土)は、職員全員が集まって保育の質を高めるために研修会を開きました。まず午前中に藤森統括園長にきてもらい「保育の基本」についておさらいをしてました。保育の質は定義されていなくても、保育の目的は明確にあります。それは子どもの発達をきちんと保障することです。保育は、もちろん子どものためにあるのであって、保育者のためでも環境のためでもありません。したがって、保育の質は、子どもが環境に関わって経験している質を高めることある、と言えます。そのために、私たち保育者は、どんな環境を用意すれば、子どもがそれに関わって経験する質が変わるのかを、見極めていく力量が問われることになります。

その力量を身につけるためには、環境のあり方について、望ましい指針が必要です。私たちの法人が創り上げたものが「見守る保育10か条」です。その一つひとつを確認し、さらにその理解に基づく実践事例を確認しました。子どもは時間の経過とともに変化します。しかし経験する内容によって、よく育ったりしなかったりします。例えば優れた遊びや生活がある環境と、例えば何もない空っぽの空間で何もしないで過ごすことでは、子どもの発達に大きな差が生じます。私たちは、子どもの姿を見るとき、どんな経験でどのように変化したのかを見極める力が求められます。

ちょうど、今日のわらすのブログで、Bブロック遊びの様子を見て、過去の遊びの姿との変化への気づきが書かれています。ブロック遊びの中に、過去の体験で記憶に残っている表象が再現されていることがわかります。体験があるからこそ、その効果が遊びの姿の中に現れ、体を使ってトンネルになったり(健康)、子ども同士の関係にも(人間関係)、ものとの関わりにも(環境)、言葉でのやり取りも(言葉)、表現される姿も(表現)、変わっていることを見てとることができるのです。

また子どもの体験は、先生たちによって生じるように計画されていくわけですが、午後からは来年度の保育方針を話し合いました。例えばバス遠足を計画しなければ、木場公園での遊びが生まれないわけですが、私たち職員だけでは生じさせることができない子どもの体験があります。鬼ごっこの遊びをもっと楽しくなるように工夫したり、バリエーションを増やすために、その専門家からアドバイスをもらいます。そこで鬼ごっこ協会の羽崎さんにも、参加してもらいました。またもっとダンスを楽しむために青木さんとは、ダンスと学びの関係を語り合いました。また睡眠の質を高めるために永持さんにも参加してもらい、SDG’Sの食育を作り出すために、レストランを経営している鳥海さんとも今後のプランで合意しました。

職員が保育についての学びを深めるということは、子どもの経験の質を高めること、経験の幅を広げることに結びつくようにします。子どもの体験が発展したり深まったり豊かになったりするとは、一体、どんなことを言うのか。そのことを常に考えながら、保育の三角形を考えていくことになります。この三角形は保育の質が生まれる場所です。ここで目に見えないものが生まれ、動き、成長しているのです。見えないものを捉えるという保育は、面白くもあり、難しくもあるのですが、それを積み重ねがら、見ているものは、子どもたちの笑顔です。保護者の皆さんと、子どもの育ちを一緒に喜び合いたいと思います。

15日は充実した研修日になりました。ご協力いただき、ありがとうございました。

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