今日は午後の「すいすいタイム」で、年長児のすいすいさんがリモートによる職場体験「リアルタウンページ」を行いました。いわば幼児のための進路指導、キャリガイダンスです。子どもたちがこれまで接してきた「世界」は、とても身近な日常の世界ですから、散歩で出会う「ボタン屋さん」や「金魚屋さん」、「郵便屋さん」「パン屋さん」とったものから、おうちでのお買い物やレジャー、旅行まで、そして絵本やテレビで見た世界が中心でしょう。そこで、現在進行形の、リアルな仕事の現場に連れて行ってあげたい、体験させてあげたいという趣旨です。しかも、見ず知らずの誰かよりも、お父さんやお母さん、親戚の人や近所の人など、「身近な人」によるものの方が、ぐっと親近感が湧きます。さらに、現代社会は「〜屋さん」といった街角の仕事に限らず、ソサエティ5.0というくらいですから、「見てもわからないような仕事」は、ちょっと工夫しないと子どもたちが出会うこともできないのです。
ところで、卒園をお祝いする言葉の中で、私は「子どもは遊びの中で学んでいるのですが、学校では勉強と言って学ぶのです」ということを話しました。遊びが学びだというのは、私たちにとっては自明のことなのですが、小学校以降の生活になると、遊びと学習が分離します。チャイムが鳴って授業が始まると、そこからは勉強で、またチャイムが鳴って授業が終わると勉強はおしまい、「中休み」と称して遊んでいい時間がきます。遊びは遊びであって、勉強ではないのです。これって、誰も疑わない自然なことのように思われています。
さらに、学校の授業は「教科」と「総合的な学習の時間」と「道徳」と「特別活動」という4種類があったのですが、今では道徳も「教科」になりました。それぞれ1年間で学ぶ時間数が決まっているので、校長はその時数を教育課程として編成して教育委員会へ年度末に提出します。特別活動の中には、進路指導も含まれています。将来、大きくなったら何になりたいか、目標を具体的に考えることができるように、まずはどんな仕事があるのかを調べたり、体験したりすることになっています。これも学校教育全体を通じて行うものです。
学校では、そんな授業が待っていることもあり、幼児教育の中では、遊びを通して「仕事」への関心を持つようにしています。世の中にはどんな仕事があるのか、実生活の中で体験したり、テレビや絵本やお話の中で、身近なものに感じるようになっていきます。仕事として意識しているわけでもなく、なれたらいいな、ああなってみたいな、という憧れや夢となって現れてきたらしめたものです。この子たちが大きくなった頃、現在の職業があるとは限りません。時代の変化は早くて、昨年小学生に人気を博したユーチューバーは、すでに飽和状態でパイの奪い合いが起きているといいます。オズボーンが予言したように、AIなどに取って代わられてなくなる仕事も多いでしょう。
幼児の頃から社会や仕事に目を向けることは、ごっこ遊びなどを通して自分の内面世界との融合を図っていくきっかけになります。子どもが生きているこの日常も、大人がが作り上げた文明も、同じ宇宙の原理に貫かれているわけで、そう考えれば乳幼児なりの発達に合った方法で、世界を取り入れています。身近な人がその間に入って、子どもが出会う世界を広げてあげようと思います。