いつの時代にも、子どもの中にも人気者がいます。卒園していった子どもの中にも、みんなから慕われた人気者がいました。その子は、どの子にも分け隔てなく接し「優しくて誠実な子」でした。
教育はいつも、どこでも個人に色々な心理的な特性がある中で、それが個人の特性として、その人らしさである限り、その人としての「尊厳」は守らなければなりません。その一方で、教育は社会との関係の中で生きる人間存在の本質を考えたときに、その人の自由意志のもとで、よりよい結果に結びつく可能性の高い資質や能力は伸ばしていくことが求められます。
そこで、現在のところ、色々な「社会情動的スキル」の中で、何がよき結果に結びつきやすいのかというと、 OECDの研究報告では「目標を達成し、他者と協力して効果的に働き、自分の感情をコントロールする能力」だとされています。これが「子どもたちが人生において成果を収めることに役立つ」といいます。さらに「忍耐力、社交性、自尊感情なども重要な役割を果たす」とされています。社交性や協調性、情緒安定性を重要な要素に挙げています。
もう少し、研究成果を見てみましょう。よりよい結果につながりやすいとして、具体的に選び出された「非認知的能力」の中から15種類を紹介しているのが、小塩真司教授が編者の「非認知能力」という本です。
無藤隆さんが「心理学で実証された15種類の心理特性の研究から、①非認知能力は教育可能である②その教育は望ましい結果(学力や健康・幸福・社会的活動)につながる。本書から多くを学ぶことができた。広く教育・保育の関係者に勧めたい」と、その本の帯で推薦しています。
そして実は、その15の冒頭の最初の心理特性が、「誠実性」(勤勉性)であり、ズバリ人格特性そのものが取り上げられているのです。このパーソナリティ特性としての「誠実性」というのは、私たちが普段使っている言葉ですが、この人格特性は、「目標を達成し、他者と協力して効果的に働き、自分の感情をコントロールする能力」と強い相関があるというのです。誠実であるというのは、自分の気持ちに正直というだけではなく、「自分の衝動を社会の規範に沿って適切にコントロールし、課題指向的かつ目的指向的な行動をとる傾向」をさすそうです。具体的には「規律正しさや勤勉さ、慎重さ、責任感の強さ、計画性などをカバーする概念」だというのですから、そんな傾向を持っているなら、それは誰でも「いい結果につながるだろう」と思うはずですね。勤勉性という言葉を当てている場合もあり、人格特性の内容としては、同じになっています。