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園長の日記

コロナ禍の後でやらないといけないこと

2022/05/15

 

コロナ禍で子どもたちがどんな影響を受けているのか、このテーマをめぐる研究と発表が多くなされたのが、今年の日本保育学会の特徴でした。私たちの研究グループも、このテーマで「自主シンポジウム」を開きました。仲間の保育園から話題を提供し、藤森平司統括園長が指定討論者として考えを報告しました。シンポジウムのタイトルは「コロナ禍の乳幼児期における認知・非認知能力への影響について〜コロナ前と現在を比べ、今後の保育について考える〜」というものです。

学会では研究調査の報告がいろいろなされたのですが、藤森先生の現状認識と問題提起は、他にはない視点が含まれていました。それは人類の特性から予見される懸念です。その骨子は以下のようなものでした。

(1)認知的能力の代表は、IQと学力です。これは測定できるものです。しかし非認知能力は測定できません。「認知ではないもの」という内容ですから、量的評価が難しいものだからです。そこで縦断研究がなされているのがそれを示しています。

(2)人類の進化の歴史から言えることは、人類の脳が大きくなったことと集団の大きさが関係することがわかっています。集団の規模と脳の大きさが比例しています。集団の何が脳を大きくしたのかというと、人と人の関わりです。人と人の関係性によって進化してきたことになります。

(3)ここで注意してほしいのは、言語を使うようになったのはせいぜい20万年から10万年前ぐらいからで、もっと長い間に集団での関わりを営んできたのです。人類が誕生して以来、その多くの時間は言語がなかったのです。表情や身体表現や人との接触で関わりを持ってきたのです。

(4)今回のコロナでは、それを避けるようにと言われてしまいました。つまり人類の進化の大元を止められてしまっていることになるのです。子どもにこのように影響しているのです。

(5)マスクをしていても言語で伝わるけれども、表情や身体表現や身体接触で伝わっていたもの、経験していたものが奪われてしまってはいないか。そこが心配なのです。

さあ、どうでしょうか。このように考えてみると、子どもが非認知的な何かの経験が奪われているかもしれないと考えると、この連載で考えてきたものに、何かが抜けているかもしれないと思いました。

そして、なぜあんなに「園長ライオン」遊びが人気なのか、わかる気がするのです。じゃれあそびの身体接触があり、鬼ごっこの要素、つまりライオンから食べられないように逃げるごっこ遊びで、再現されている心情の中には、脳の原始的な感情を呼び起こしていることになります。また青木さんのダンスも、マネキンとデザイナーも、身体表現や感情の解放を促すもので、コロナ禍で避けられてきたような遊戯です。子どもたちは無意識にこれらを望むのは、当然の自発的な発達欲求だからでしょう。

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