保護者の皆さんが働いている職場は、働きやすいですか? 机に向かう時間が多い方は、どんな椅子にどんな姿勢で座るかが大きな問題になるはずです。ミーティングの多い方は資料の記録、再生、共有などの方法が大事になるでしょう。また外に出ることが多い方は、移動方法や連絡手段も仕事の効率に影響するでしょう。創造的にアイデアを練る仕事なら、そうなるような環境のデザインが工夫されるでしょう。
保育や教育の場合、子どもがどんな生活や活動をするかによって、室内のレイアウトが変わります。同じ内容を同じ時間に同じ場所で受動的に教えてもらうということなら、教師の声が一斉に届く距離に正面を向いて座る机の配置が効率的だったのでしょう。しかし今は一人ひとりが異なる内容を異なる方法で別々の時間に能動的に学ぶ時代になりました。目的や内容に応じた空間が配置される必要があり、子どもが行き来する動線も考慮したレイアウトにする必要が出てきます。
子どもの興味や関心に基づいた探究活動を展開させたいのなら、そうしたテーマやトピックスに応じた物や場所、空間や人などの環境をデザインする必要が出てきます。そのようなプロジェクト型の学びは、どんなテーマやトピックスであっても、共通する活動の形がありそうです。何が探究のテーマなのかを話し合うこどもかいぎの場。活動の見通しを立てる場所、実際にやってみる多様な活動フィールド、そしてまた振り返り共有する発表や展示のできる空間。
これからの保育室や学校には、このような探究活動を保障するような複合的な場所が必要になります。そこには遠く離れた援助者と話ができるコミュニケーションツールが用意され、活動や探究の軌跡がパッと把握できる共有メディアがあると便利でしょう。そんな時代の新しい学校のイメージは、場所や時間を越えたようなものなので、既存の学校のイメージで捉えると、これからの「学びのスタイル」にそぐわないものになるかもしれません。
活動や探究、遊びのリソース(資源)が分散されてゾーニング化され、それが連動して活用されるとき、学びの軌跡はとてもユニークなものになるでしょう。その学びの軌跡を視覚化して、学びの物語として「子どもの自分史」がどの子にも残せるなら、それが小学校、中学校、高校へと繋がっていく「成長の作品集」のようなものになることでしょう。そこに成績や通信簿などはありません。かけがえのない、宇宙に一つだけの学びのプロセスが、この世に生きた奇跡(キセキ)になるのです。