今日は夕方から「保育園の食事の提供の実際と栄養士の業務」について、大妻女子大学短大で話をしてきました。話したのは私の他に「さくらしんまち保育園」の小嶋泰輔園長先生と、フランスレストランのシェフ江口颯良さんの3人。90分を3人で分担、構成しました。受講したのは、みんな栄養士を目指している同短大の1年生です。多くが保育園で働きたいと思っているそうです。そこで、保育園の中にちゃんと調理室があって、栄養士も保育士と話し合いながら、子どもの生活に即して献立を考えたり、食べる環境を工夫したり、子育て支援がよりきめ細かくできたりする「自園方式」のよさを説明してきました。
というのも、保育は、この15年ぐらいでしょうか、調理業務の外注化、委託化がかなり進んだように感じます。そろそろ、その総括をするべき時期だと思います。そして私はやはり、調理室がなくなったり、あるいは調理員の委託化が進むと「その園の子どもの生活に応じた」献立、調理、喫食、振り返りなどができにくい、と感じてきました。また安心・安全な食材に切り替えて提供するといったことも含めて、食事の質を高めることも難しいという課題がはっきりしてきたのではないかと思います。
「その園の子どもの生活に応じた」というのは、保育士や栄養士が直接、子どもの姿を観察できるので、対応しやすいという意味です。例えば離乳食の咀嚼の様子や食具の使い具合を観察して、その実際を理解してあげれば、その子に合った離乳食を作ることができます。単純に月齢で分けたりせず、発達の実際に合わせるのです。微妙な柔らかさの加減などは、保育士からの指示だけで調理担当者が作ることは難しいものです。それは保育士が箸の持ち方を教えてあげたいな、と思う子どもがいたときに、遊びの中で「箸遊び」の遊具を工夫することと似ています。
あるいは味覚に敏感な子どもの食事の進み具合を確かめながら、どんな食感に変えるとたべやすいのか、といった検討もしやすくなります。行事のリクエストメニューに応じたり、屋上で採れた野菜を、その日の料理にうまく入れ込んだりもできます。先日も近所付き合いでいただいた「かぼす」を活用できないか、相談したばかりです。
さらに食事を作ってくれている人が、すぐそばにいて、「先生、美味しかった。またハンバーグ作ってね」を伝えられる関係があることの意味は非常に大きいのです。このようなことが業務委託では、絶対にできない、とは思いません。でも作ってくれる人は、確かにそばにはいますが、子どもと一緒に遊んだり、園児と一緒に食事を取ったりしている間柄ではありません。子どもたちに愛情を注ぎながら食事を作る人がそばにいる、ということが、とても大事な意味をもつように思えて仕方ありません。
当園には子どもキッチンもあるので、遊びで描いた絵でクッキーの型抜きをしたり(誕生日会の午後のおやつ作り)、ぐりとぐらの絵本を楽しんだ後でホットケーキをつくって食べたり、その時季の旬のくだものでジャムを作ったり、桃太郎の劇遊びに連動して「きびだんご」を調理さんに作ってもらったり、ベランダで育てているミミズハウスの餌を調理さんからもらったり、「アリさん」や「ダンゴムシ」や「しゅんちゃん(セキセイインコ)」は、何を食べるのか栄養士さんも一緒に調べてみたり・・そうしたことは数限りなく生じています。子どもの生活や遊びと「台所」が結びついているのです。決して給食の提供に限らないのです。専門家が連携するチーム保育というのは、保育士や看護師、栄養士、事務員、子育て支援担当者らが、その園の子どもの姿を共有しながら、つながりあうということです。
どこかで管理栄養士が統一献立を作って、各園はそれに従って調理員が料理を作ればいい、ツリー状の態勢では、子どももや大人にとっての個別最適な学びのための環境を、より豊かに展開することは難しいような気がします。保育実践の中で実感する望ましい態勢というものは、大人も子どもも、これからの時代に育んでいきたい資質・能力(全て個人は還元できない)を想定していくと、その中の環境を柔軟に組み合わせていく、臨機応変な対応力が必要だろう、からです。保育学会もブリコラージュをテーマに取り上げたりしていました。