ある職員が診断書を持ってきました。ある症状があってその原因が長い間、マスクを着用していたことが疑われるという内容でした。症状名は控えますが、マスクがそんなことまで影響があるかと、私も驚きました。長期にわたるコロナ禍は、様々な弊害をもたらし続けています。いろいろな裁判も引き起こされています。因果関係を解明することは難しくても、相関関係があることを前提にしながら、公の意思決定の権限に関わる立場の人は、当事者しか分かり得ない事実は公表し、対応を改善していくことはできます。私たち一市民も「もしかしたらそうかも」ということはできるだけ避けたり、少しでもリスクの低い方を選択したりすることはできます。ただ、そのための正確な情報は欲しい。その情報を得ることが難しい時代になってしまいました。
そして、もう一つ。意外な結果や予想外の影響を被る人々が広く、身近に存在するかもしれないという想像力が、私たち一人ひとりに求めれている気がします。いわば、その人にとっての「痛み」への想像力です。エビデンスがないから、「ない」ことになってしまいがちなことへの危機感。でも本人とって、それは守られるべき人権でもあります。お互いにそれを想像しながら「ある」ことを認め、守り、発揮できるように工夫し合う。これが最も大切な時代に入っている気がします。経験から想像できる力です。未来への可能性。未来の歴史への眼差しです。