今年で4年目を迎えるコンテンポラリーダンス。今年もその遊びが始まりました。子どもたちに指導してくださるのは、子どもたちが大好きな青木尚哉(あおき・なおや)さん、芝田和(しばた・いづみ)さん、木原萌花(きはら・ももか)さん。ダンスと言っても何か決まった振り付けがあって、それを覚えて上手に踊る、というものではなく、自分の身体を気持ちよく動かす回路を開いていくようなものです。乳児から幼児まで、全てのクラスで楽しみました。
乳児の子どもたちとは、まずダンサーの方々と親しくなることから始めます。いつもの歌を歌ったり音楽に合わせて体を動かしたり。普段の遊びを一緒に楽しみました。この人たち、誰だろう?という感じから、すぐに慣れていってくれました。にこにこさん(2歳児)たちとは、膝の上にのってヒコーキになって跳んだり、ペンギンになって歩いたり。わいらんすい(345歳)になると、バリエーションが増えます。
じゃんけんのぐーやパーの形(格好)を顔や手や足や全身で表す「グーパー体操」。相手とてのひらを重ね合わせる「やさしくタッチ」。それを歩いたり走ったりゴロゴロ転がったりしてやります。タッチの代わりに「ぎゅー」になったり、「高いたかい」になったりと触れ合い方は様々に変化。これらは自分の身体が人と触れるという、関わり方のバリエーションの広さに改めて気づくことになっていきます。
青木さんのダンスの面白さは、それが「よくなること」が、自分の身体と周りとの接触の仕方や度合い、距離感というものに敏感になっていくこと、その感覚の解像後が高くなっていくことが「よさ」なのです。その運動の代表が「ポイントワーク」という青木さんが開発したメソッドです。例えば「マネキンとデザイナー」は、片方がマネキン(人形)役になって、もう片方がデザイナー役になります。そしてデザイナーがマネキン役の体をゆっくり優しく動かすのです。
子どもたちは身体の骨の模型を見せてもらっており、体には骨があって、関節のところで動くことを学びます。それ以外のところは動かないことを体感します。音楽に合わせて1、2、3・・・と数えながら、デザイナーはマネキンの手や指や腕や胴や脚や踵などを動かしていくのです。10まで数えたら、つまり10回手や足や頭の少しずつ動かして、最終的には「いい感じ」の格好を作り上げます、そして、その格好をデザイナーも真似ます。
ダンスのためのオリジナルわらべうた「鬼さん鬼さん何するの?」は、円陣を組んで鬼が「これするの」と応えると、みんなもそれと同じ動きを真似します。輪になって並んでいるので、順番に「これするの」をやる番が回ってきます。どんな動きをしようかなあと考えながら、思い切って動いてみると、どんなものであっても、それが表現として受け止められていきます。即興的に考える創造力、それをみんなが真似する面白さ。その中に、格好やポーズのかっこよさや美しさが垣間見あられるのです。慣れてくると、早く自分のところに来ないかなあというようになっていくのがわかります。
鬼ごっこやわらべうたでも、体を動かしますが、その関連を調べてみると面白いことがいろいろ見つかります。例えば「わらべうた」を「遊び方」と「隊形」で整理されているものと比べると、青木さんとやっている運動と重なり合ったり、独立している領域が見つかったりします。
やっていることは違うことだと思っていても、身体の関節が動いている運動であること、それと同時に起きている身体「感覚」の体験は、重なり合っているのです。
その運動の起点となっている前後の動機やイメージなどは、移り変わっていくのですが、その連続性の中に「美」がいたるところに見出されるのが、ただの運動ではなく、アーティストであるダンサーの作り出す運動の楽しさです。何度も楽しんできたものなのに、今回の「マネキンとデザイナー」の動きの中に、主任はいたく感動していました。「青木さんたちがデザイナーをやると、違う。10カウント目の最後の動かし方で、ドキッとするくらいよくなる」と。それはきっと子どもに伝わっています。あんなふうに自分も「やる、やる」と、デザイナーやりたいという顔にそれを感じます。
さらに「なるほど」と思う感想を主任からもらいました。「これって、感覚統合からみると、とてもいい運動になっていると思う。そして主体性ということでは、マネキンの方がやらしてあげていて、デザイナーと対等じゃないか」と解説してくれました。自分の身体が教材や環境になっていく協同的活動としての遊び、とでもいうのでしょうか。