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園長の日記

保育園が「美味しさ」を追求しにくい別の理由?

2024/09/04

食べ物が「おいしい」というとき、美味しいと書くなら、味にも「美」を感じるということなのでしょう。その場合の「美」はとても広い意味であり「よい」という意味に近いのかもしれません。そう考えると保育の方向にも「よさ」があるので(というよりも人間はなぜかわからないけれども「よさ」を追求しているので)、美味しさを求めるということも大いにあっていいことでしょう。

というようなことを考えていた時に、先日9月2日に、大妻女子短大の栄養学の先生がいらして、次のようなことを話されます。その短大から実習生を受け入れているからです。(写真)

・美味しい給食づくりを目指しているのに、実際は栄養とメニューの工夫ということにどうしても力点がいきます。

・それはそれで大事なことなのですが、作るところまでで、実際にどう食べているか、どう食べてもらいたいか、そのためにはどうしたらいいか、というところまではなかなか届かない。

そしてこうおっしゃいます。「保育所に栄養士の必置義務がないから、養成校も保育所での食事の提供のあり方を教える内容が乏しくなってしまう」ということもあるそうです。なるほど、そうかもしれないと思いました。2年間養成課程の中で、高齢者や介護施設や病院や企業の給食も学ばなければなりません。

確かに一方で、こんな話もあります。「栄養士と調理師の両方を採用するといいよ」という方もいるのです。その趣旨は、調理師の方が美味しい料理を作れるという意味です。

しかし、実際に採用した経験があるのですが、確かに腕はよくて、早く調理できて、盛りつけも上手だったりします。ただ、たまたまそうだったに過ぎないのですが、長く飲食業界での修行経験者なので、味付けは濃く、上下関係が厳しく「昭和作法」で仕事を部下に求めます。若い人はついていけませんでした。

そのケースに限らないのですが、21世紀生まれの人への育て方を昔の経験者は教わっていないので、採用後のリスキリングでは間に合いません。

というような話をしたのですが、上の話は誇張気味だとしても、似たような話を聞きます。

ちょっと話はそれますが、保育所の調理業務というのは、栄養計算も必須で保健所に提出しなければなりませんし、その上で献立を作成し、そして食材を選んで発注し、実際に毎日、基本的にその日の朝早くから調理業務(離乳食から幼児食、食物アレルギーの代替食、延長保育の夕食や捕食まで)があり、食中毒予防などの衛生推進も怠ることもできません。

このような業務の上に「喫食指導」や「食育」があるという現実があります。期待したい業務を広げていくと、かなり保育所ならではの専門業務があって、もしかすると、食育を担う保育者としての「調理員」のあり方を、ちゃんと検討しているところがない、ということかもしれません。しかるべき「調理員」の姿が、それぞれの保育園に任せっきりでいいのでしょうか?そんな疑問が頭をもたげてくるのでした。

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